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タバコ・ロード [20世紀アメリカ文学]

 「タバコ・ロード」 E・コールドウェル作 杉本喬訳 (岩波文庫)


 タバコ・ロードの荒れ果てた土地に執着して自滅する、貧農の姿を描いた物語です。
 刊行の翌年にはブロードウェイで上演されて、7年半のロングランを記録しました。


タバコ・ロード (岩波文庫)

タバコ・ロード (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: 文庫



 煙草樽を転がすためのタバコ・ロード沿いは、75年前にはとても有望な土地でした。
 煙草が育たなくなり、次に栽培した綿花もダメになり、今では荒れ果てていました。

 かつて周囲の土地一帯は、ジーター・レスター老人の祖父のものだったのです。
 しかし今では金持ちに土地を奪われ、一家は落ちぶれて食べるものに困るほどです。

 石炭工場で働くラヴはかぶらを持っていましたが、それを一つも渡そうとしません。
 ジーターはラヴのかぶらを袋ごと奪って食べた後、その行為をとても後悔しました。

 彼は、女牧師ベッシーに祈りをあげてもらいました。彼女は未亡人でもう40・・・
 ベッシーは、ジーターの息子デュードを誘惑します。デュードはまだ16で・・・

 金持ちに搾取され、悲惨な境遇にある貧農の姿を、ユーモアを交えて描いています。
 このドタバタ劇の中心にいるのがインチキ女牧師ベッシー。いい味を出しています。

 ベッシーとデュードの年の差は25。彼女は結婚の根拠に何を持ち出したのか?
 そして幼いデュードを何で釣ったのか? しかしこの結婚が不幸の始まりで・・・

 彼らの会話、彼らの行動、どれもばかばかしい。あまりに愚かしくて笑えてきます。
 しかし笑えば笑うほど余計悲しみが深くなり、やり場のない怒りがこみ上がります。

 「作物なんかいくら作ったって何にもなりゃしねえ。そんなことをしたって一文にも
 ならねえ、食って行くことだってできやしねえ。綿を作っても、誰かしらやって来て、
 欺して持ってっちまうんだ。神様も昔と違って、作物を作らせようともしないし、貧
 乏人の助けにもなって下さらないようだな。」(P263)

 金持ちだけでなく、神さえも恨まずにはいられない絶望感!
 そして、この絶望を乗り越えるのは、人間の意志しかありません。

 結末部のデュードの言葉が、最後の最後に希望を残しています。
 「今年ぁ一つ綿作りやってみるかな。」・・・デュードにはがんばってほしいです。

 ところで、「タバコ・ロード」は、現在絶版です。
 しかし、アマゾンで古本が比較的安く手に入ったので、読むことができました。

 さいごに。(ダジャレ仲間転勤)

 私のダジャレ仲間が転勤となり、もう職場でおやじギャグは言えなくなりました。
 妻にそのことを伝えたら、「良いことじゃん」と言われました。確かにそうかも。

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