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ヒューマン・コメディ [20世紀アメリカ文学]

 「ヒューマン・コメディ」 サローヤン作 小川敏子訳 (古典新訳文庫)


 ホーマーとユリシーズの兄弟を中心に描いた、イサカ町における人間ドラマです。
 大戦中の1943年に発表されて人気を博し、映画やミュージカルになりました。


ヒューマン・コメディ (古典新訳文庫)

ヒューマン・コメディ (古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/08/08
  • メディア: 文庫



 14歳のホーマーは、日中は学校で学び、夕方から夜までは電報局で働いています。
 亡くなった父や、軍に入っている兄の代わりに、母や姉や幼い弟を養っています。

 学校のヒックス先生、電報局の局長スパングラー、電信技師グローガン・・・
 周囲の人々は温かい目で見守り、ホーマーはさまざまな体験を通して成長します。

 ある夫人に、息子の死を知らせる電報を届けたときには、たまらない気持ちに・・・
 学校で居残りを命じられたときに、ヒックス先生が教えてくれたことは・・・

 「ヒューマン・コメディ」の旧訳は「人間喜劇」。しかし、喜劇ではありません。
 人間同士のふれあいが、とてもあたたかく優しく、しみじみと描かれています。

 最も面白かったのは、第13章「ビッグ・クリス」です。
 スポーツ用品店で、獲物を宙づりにする罠に、ユリシーズがかかってしまって・・・

 ホーマーが駆けつけて、罠に閉じ込められたユリシーズを励ましました。
 この2人のやりとりは、笑えるようで泣けてきます。面白くて、そして悲しい。

 「欲しいものを持ってきてやるぞ」「パパ」 (パパはすでに亡くなっている)
 「パパ以外になにかないか?」「マーカス」 (兄のマーカスは入隊中)

 最も感動したのは、第22章「強盗」です。ここだけでもぜひみんなに読んでほしい。
 拳銃で金を脅し取りに来た若者に、局長のスパングラーはどのような行動に出たか?

 そして若者は、どのようなことを語り出したか?
 その若者が強盗に入った本当の理由は何だったのか?

 「めぐまれない境遇に生まれついたばありにさんざん苦労して、浮かばれないまま死ん
 でしまったり刑務所に入る羽目になったりする若者は、このアメリカにおおぜいいる。
 彼らは好んで犯罪に手を染めたわけではない。もともとは善良だったんだ。」(P178)

 スパングラーのこの言葉に、サローヤンの一番言いたいことがあるような気がします。
 それにしてもサローヤンは、純粋でまごころのこもった言葉を書くのがうまいですね。

 実際の彼が、賭博狂いで妻に暴力をふるうクズ野郎だったなんて、到底信じられない。
 ちなみに妻キャロルは、「ティファニーで朝食を」のホリーのモデルだったとか・・・

 本書の最後、マーカスと戦友トビーの会話もすばらしい。まごころがこもっています。
 そして、最終第39章「家」を読んだ後の余韻の深さ! 本が閉じられませんでした。

 さて、サローヤンの代表作は本作と「僕の名はアラム」です。
 「僕の名はアラム」は、すでに紹介しました。
 「僕の名はアラム」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-09-19

  さいごに。(また運営に携わることに)

 2021年度が始まって、私は再び、社の運営に携わることとなりました。
 慣れないことばかりで、4月いっぱいは大忙しです。土日も仕事だし。やれやれ。

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