ヒューマン・コメディ [20世紀アメリカ文学]
「ヒューマン・コメディ」 サローヤン作 小川敏子訳 (古典新訳文庫)
ホーマーとユリシーズの兄弟を中心に描いた、イサカ町における人間ドラマです。
大戦中の1943年に発表されて人気を博し、映画やミュージカルになりました。
14歳のホーマーは、日中は学校で学び、夕方から夜までは電報局で働いています。
亡くなった父や、軍に入っている兄の代わりに、母や姉や幼い弟を養っています。
学校のヒックス先生、電報局の局長スパングラー、電信技師グローガン・・・
周囲の人々は温かい目で見守り、ホーマーはさまざまな体験を通して成長します。
ある夫人に、息子の死を知らせる電報を届けたときには、たまらない気持ちに・・・
学校で居残りを命じられたときに、ヒックス先生が教えてくれたことは・・・
「ヒューマン・コメディ」の旧訳は「人間喜劇」。しかし、喜劇ではありません。
人間同士のふれあいが、とてもあたたかく優しく、しみじみと描かれています。
最も面白かったのは、第13章「ビッグ・クリス」です。
スポーツ用品店で、獲物を宙づりにする罠に、ユリシーズがかかってしまって・・・
ホーマーが駆けつけて、罠に閉じ込められたユリシーズを励ましました。
この2人のやりとりは、笑えるようで泣けてきます。面白くて、そして悲しい。
「欲しいものを持ってきてやるぞ」「パパ」 (パパはすでに亡くなっている)
「パパ以外になにかないか?」「マーカス」 (兄のマーカスは入隊中)
最も感動したのは、第22章「強盗」です。ここだけでもぜひみんなに読んでほしい。
拳銃で金を脅し取りに来た若者に、局長のスパングラーはどのような行動に出たか?
そして若者は、どのようなことを語り出したか?
その若者が強盗に入った本当の理由は何だったのか?
「めぐまれない境遇に生まれついたばありにさんざん苦労して、浮かばれないまま死ん
でしまったり刑務所に入る羽目になったりする若者は、このアメリカにおおぜいいる。
彼らは好んで犯罪に手を染めたわけではない。もともとは善良だったんだ。」(P178)
スパングラーのこの言葉に、サローヤンの一番言いたいことがあるような気がします。
それにしてもサローヤンは、純粋でまごころのこもった言葉を書くのがうまいですね。
実際の彼が、賭博狂いで妻に暴力をふるうクズ野郎だったなんて、到底信じられない。
ちなみに妻キャロルは、「ティファニーで朝食を」のホリーのモデルだったとか・・・
本書の最後、マーカスと戦友トビーの会話もすばらしい。まごころがこもっています。
そして、最終第39章「家」を読んだ後の余韻の深さ! 本が閉じられませんでした。
さて、サローヤンの代表作は本作と「僕の名はアラム」です。
「僕の名はアラム」は、すでに紹介しました。
「僕の名はアラム」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-09-19
さいごに。(また運営に携わることに)
2021年度が始まって、私は再び、社の運営に携わることとなりました。
慣れないことばかりで、4月いっぱいは大忙しです。土日も仕事だし。やれやれ。
ホーマーとユリシーズの兄弟を中心に描いた、イサカ町における人間ドラマです。
大戦中の1943年に発表されて人気を博し、映画やミュージカルになりました。
14歳のホーマーは、日中は学校で学び、夕方から夜までは電報局で働いています。
亡くなった父や、軍に入っている兄の代わりに、母や姉や幼い弟を養っています。
学校のヒックス先生、電報局の局長スパングラー、電信技師グローガン・・・
周囲の人々は温かい目で見守り、ホーマーはさまざまな体験を通して成長します。
ある夫人に、息子の死を知らせる電報を届けたときには、たまらない気持ちに・・・
学校で居残りを命じられたときに、ヒックス先生が教えてくれたことは・・・
「ヒューマン・コメディ」の旧訳は「人間喜劇」。しかし、喜劇ではありません。
人間同士のふれあいが、とてもあたたかく優しく、しみじみと描かれています。
最も面白かったのは、第13章「ビッグ・クリス」です。
スポーツ用品店で、獲物を宙づりにする罠に、ユリシーズがかかってしまって・・・
ホーマーが駆けつけて、罠に閉じ込められたユリシーズを励ましました。
この2人のやりとりは、笑えるようで泣けてきます。面白くて、そして悲しい。
「欲しいものを持ってきてやるぞ」「パパ」 (パパはすでに亡くなっている)
「パパ以外になにかないか?」「マーカス」 (兄のマーカスは入隊中)
最も感動したのは、第22章「強盗」です。ここだけでもぜひみんなに読んでほしい。
拳銃で金を脅し取りに来た若者に、局長のスパングラーはどのような行動に出たか?
そして若者は、どのようなことを語り出したか?
その若者が強盗に入った本当の理由は何だったのか?
「めぐまれない境遇に生まれついたばありにさんざん苦労して、浮かばれないまま死ん
でしまったり刑務所に入る羽目になったりする若者は、このアメリカにおおぜいいる。
彼らは好んで犯罪に手を染めたわけではない。もともとは善良だったんだ。」(P178)
スパングラーのこの言葉に、サローヤンの一番言いたいことがあるような気がします。
それにしてもサローヤンは、純粋でまごころのこもった言葉を書くのがうまいですね。
実際の彼が、賭博狂いで妻に暴力をふるうクズ野郎だったなんて、到底信じられない。
ちなみに妻キャロルは、「ティファニーで朝食を」のホリーのモデルだったとか・・・
本書の最後、マーカスと戦友トビーの会話もすばらしい。まごころがこもっています。
そして、最終第39章「家」を読んだ後の余韻の深さ! 本が閉じられませんでした。
さて、サローヤンの代表作は本作と「僕の名はアラム」です。
「僕の名はアラム」は、すでに紹介しました。
「僕の名はアラム」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-09-19
さいごに。(また運営に携わることに)
2021年度が始まって、私は再び、社の運営に携わることとなりました。
慣れないことばかりで、4月いっぱいは大忙しです。土日も仕事だし。やれやれ。
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