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大地(一) [20世紀アメリカ文学]

 「大地1」 パール・バック作 小野寺健訳 (岩波文庫)


 大地に根ざして真面目に生き、大地主にのし上がっていく夫婦を描いた物語です。
 1931年の作品です。第4巻まで続編が出ました。作者はノーベル文学賞作家です。


大地 (1) (岩波文庫)

大地 (1) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/02/17
  • メディア: 文庫



 主人公の王龍(ワン・ルン)は、貧農の息子で、父親と二人で暮らしていました。
 嫁に来てくれる女がいないため、富豪から女奴隷をもらい受けることにしました。

 新妻の名前は阿蘭(オラン)です。美しくはないが正直な顔で、無口な女でした。
 阿蘭は体が丈夫で、台所でも畑でもよく働きました。やがて息子が生まれました。

 労働と倹約で蓄えた銀貨で、かつて妻が仕えていた富豪から、土地を買いました。
 土地も銀貨も子供も増えていき、王龍の家は興隆に向かっていきました。

 ところが飢饉が来ると食うものが無く、土を水でといて食うようになり・・・
 一家は南の町へ渡って一から出直し、妻子は乞食をして小銭を稼ぎ・・・

 王龍一家は、いかにして再び土地に帰ってくるのか?
 彼はいかにして地主にのし上がり、いかにして堕落しいくのか?

 まじめで働き者だが気弱なところのある王龍。大人しいが芯のしっかりした阿蘭。
 頑固で単純な老父。怠け者で悪党の叔父。苦労を知らない子供たち・・・

 それぞれの人物がはっきり描かれています。善人も悪人もとても魅力があります。
 中でもこの小説を輝かせているのは、妻の阿蘭でしょう。彼女こそ陰の主役です。

 10歳で奴隷として売られ、人一倍苦労をしてきた阿蘭は、どんな仕事もこなします。
 王龍に運が向いてきたのは、阿蘭のおかげです。しかも彼女はここ一番に強い。

 暴漢たちを追い出したのは阿蘭でした。土地を売らない決断をしたのも阿蘭でした。
 南へ行く決断を促したのも阿蘭でした。土地の代金に充てたのは阿蘭の宝石でした。

 王龍は阿蘭を優れた妻と思いながらも、その価値に気付いていなかったようです。
 妻のありがたみを本当に理解したのは、阿蘭が死んでしまったときでした。

 「あの土地には幸せだったおれの前半生が、いやそれ以上のものが葬られたのだ。
 おれの半分はあそこに葬られたようなものだ。これからはおれの家でも、いままで
 とはちがう生活がはじまる」(P349)

 思い返すと、王龍が阿蘭を大事にしていたときは、不運が襲っても立ち直れました。
 王龍が阿蘭をないがしろにしたとき、彼の堕落は始まり、悪い方向に進みました。

 阿蘭を「あげまん」と呼ぶには軽々しい。私には、「地母神」のように思えます。
 女流作家パール・バックは、阿蘭を「大地」の象徴として描いたのではないか?

 さて、この作品が好評だったため、のちに続編が出ました。
 第二巻「息子たち」では、その息子たちの代を扱っています。気になります!


大地 (2) (岩波文庫)

大地 (2) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/02/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(日本選手権10000メートル)

 日本選手権の10000メートルを見に行きました。ライブはやはり迫力があります。
 400mトラックを25周! それが、あっという間でした。

 女子は広中と安藤の一騎打ちで、1位の広中も2位の安藤も五輪標準突破!
 男子は伊藤が優勝して代表内定。すばらしいレースで、感動しました。




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