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大地(二) [20世紀アメリカ文学]

 「大地(二)」 パール・バック作 小野寺健訳 (岩波文庫)


 軍の巨頭を目指す三男を中心に、王龍の三人の息子たちの生き方を描いた物語です。
 小説は第二部「息子たち」に入りました。第一部「大地」とは全く別の物語です。


大地 (2) (岩波文庫)

大地 (2) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/02/17
  • メディア: 文庫



 王龍(ワン・ルン)が死んで、行方不明の三男は10年ぶりに帰郷しました。
 王龍の土地は三人の息子たちに分配されて、王家は息子たちの時代になりました。

 長男は地主となって怠惰な生活を続け、次男は商人となって蓄財に励んでいました。
 そして三男は軍に身を投じていました。三者三様の生き方をしていました。

 「巨大な老木のたくましい幹から分かれた枝は、根は一つでも、幹からもほかの枝か
 らも離れようと、必死でそれぞれの方向にのびていく。王龍の三人の息子のばあいも、
 まさにそれに似ていた。」(P74)

 特に三男は老将軍のもとで出世し、王虎(ワン・フー)と呼ばれて恐れられました。 
 彼は分配された財産を元手に、100人ほどの部下を従え、老将軍のもとを去りました。

 ある豊かな谷に入って匪賊を追い出すと、老知事を傀儡にしてその実験を握りました。
 実力主義の時代の中、王虎は自分の目標に向かって、さらに行動を続けますが・・・

 三人の息子たちの中で、受け継いだ土地で農作業に従事する者はいません。
 彼らにとって大地はただの金づるです。長男にとっては不幸の源にさえなっています。

 「土地というものが、まるで悪質な魔力をそなえているような気がした。しじゅう播種
 期だといっては行ってみなければならず、肥料をやる時期だというので見にいかなくて
 はならない。あるいは収穫期だというので、カンカン照りの下に立って穀物の量を計ら
 なければならず、そのつぎは地代を集める時期がくることになる。」(P291)

 なんという罰当たりな!
 父の王龍と母の阿蘭がいたら、何と言うでしょうか?

 さて、「大地(二)」からは10年間も行方不明だった王虎を中心に描かれていきます。
 彼が自分の才覚でのし上がっていく様子は、読んでいて面白いです。ワクワクします。

 荒っぽい兵士たち、略奪、税の徴収、戦闘、計略、裏切り、包囲戦、謀反、処刑・・・
 しかし最も印象的だったのは、王虎が賊の頭目の妻に惚れてしまうところです。

 狐顔の女は不吉だと部下が制するのもきかずに、女を自分のものにしてしまい・・・
 女は表向きは王虎に従順であったが、実は裏で計略をめぐらしていて・・・

 この女の登場している時間はそれほど長くはありませんが、鮮烈な印象を残します。
 第一部では阿蘭が、そして第二部ではこの女盗賊が、陰のヒロインだったと思います。

 「大地」は大長編ですが、読んでいてまったく疲れません。
 その理由は、パール・バックの文章の分かりやすさにあります。

 言葉は易しく、文体は自然で、一文一文が体に染みこんでくるように理解できます。
 こういう文章こそ、名文と言うべきです。小野寺健の訳も、名訳でしょう。

 「大地(三)」も楽しみです。
 前半が第二部「息子たち」の続きで、後半から第三部「崩壊した家」に入ります。

 さいごに。(娘に勧める本)

 中学3年生の娘に、朝読書用に、林真理子の「葡萄が目にしみる」を勧めました。
 林真理子の「葡萄が目にしみる」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-11-24

 ほかにも、山田詠美の「放課後の音符」、吉本ばななの「つぐみ」なども勧めたい。
 「放課後の音符」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-05-20
 「つぐみ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-08-14

 いづれは、「風と共に去りぬ」などの大作へ進んでくれたら、と思っています。
 「風と共に去りぬ」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-10-10

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