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アメリカの悲劇1 [20世紀アメリカ文学]

 「アメリカの悲劇 上巻」 シオドア・ドライザー作 大久保康雄訳 (新潮文庫)


 伝道師の息子クライドが、きらびやかな社会の誘惑に負けて破滅へ向かう物語です。
 1925年に出た、ドライサーの代表作です。名作映画「陽のあたる場所」の原作です。


アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

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  • メディア: 文庫



 クライド・グリフィスは、両親に連れられ布教することを、恥ずかしく感じていました。
 また、伝道師である両親が貧しい生活を強いられていることに、疑問を感じていました。

 「彼らはいつも、それこそ神のありがたい恵みでも受けなければ生きて行けないような状
 態にあるのに、神さまは一向にこれという道を示してはくれなかった。」(P11)

 本当は、世の中には、もっと大切なありがたいものがあるのではないか?
 伝道にかまけている両親を尻目に、クライドは早く自立するため、仕事を求めました。

 やがて彼は、カンサスで一流のグリーン・ダヴィドソン・ホテルのボーイになりました。
 金回りが良くなったクライドは、ホテルで目にするきらびやかな世界に憧れます。

 クライドは、ボーイ仲間と遊ぶうちに、ホーテンスという美しい娘に恋をして・・・
 一方で、姉のエスタが突然、俳優の男と駆け落ちしてしまい・・・

 「アメリカの悲劇」は三部構成です。第一部のクライドは、まだ16~17歳の青年です。
 なんとかみじめな境遇から抜け出そうと、一生懸命にがんばる姿には好感が持てます。

 ところが、人間は環境によって変わってしまうものですね。
 華やかで贅沢な生活に対して免疫が無かったクライドは、進むべき道を間違えます。 

 第一部での読みどころは、悪女(?)ホーテンスと不毛な交際でしょう。
 ホーテンスのずるさや軽薄さが生き生きと描かれていて、とても引き込まれました。

 一方ホーテンスに振り回されるお人よしのクライドも、味わい深く描かれています。
 彼女にいいように利用され、金だけむしり取られる情けない姿は、ちょっとかわいい。

 思うに、クライドの悲劇もエスタの悲劇も、辻説教にかまけていた両親が原因ですよ。
 他人に神の愛を説く前に、自分の子供にしっかり愛情を注げよ、と私は言いたいです。

 さて、「アメリカの悲劇」は、かつて新潮文庫から出ていましたが、現在は絶版です。
 私は、昭和53年版をアマゾンで買いました。送料を入れると上下で2000円ほどでした。

 当時は上巻が677ページありながら、わずか480円でした。消費税もありません。
 コスパ良すぎです。少し安すぎる気もしますが。それにしても、良い時代でした。

 古い本なので活字が小さく、やや読みにくいのですが、訳はとても分かりやすいです。
 大久保訳は言葉が易しくてリズムが良いため、意味がすんなりと頭に入ってきます。

 さて、まだ第一部(上巻のP260まで)を読み終えたばかりです。
 事故はどうなったのか? やり直すことができるのか? 第二部も気になります。

 さいごに。(「リング」を見るってか)

 最近娘は怖いもの見たさで、よくホラー映画をレンタルして見ています。
 娘に、夏休みになったら、一緒に「リング」を見よう、と誘われました。

 あれは私が生涯見た中で、ベスト5に入る怖さです。
 夜、娘は眠れなくなるのではないかと、ちょっと心配です。


リング (Blu-ray)

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  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2012/04/27
  • メディア: Blu-ray



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