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アメリカの悲劇2 [20世紀アメリカ文学]

 「アメリカの悲劇 上巻」 シオドア・ドライザー作 大久保康雄訳 (新潮文庫)


 シャツ会社で働くクライドが、上流階級の社交界に憧れて、破滅へ向かう物語です。
 1925年に出た、ドライサーの代表作です。名作映画「陽のあたる場所」の原作です。


アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

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  • メディア: 文庫



 カンサス・シティでの事件から3年が過ぎて、クライドは20歳になっていました。
 事件のほとぼりが冷めて、母親とも連絡を取り、人生をやり直す決意を固めました。

 旧友のタラッターとの再会を機に、シカゴの名門ホテルに勤めることができました。
 そして偶然そのホテルへ、富豪の伯父サミュエル・グリフィスがやってきたのです。

 伯父はリカーガスでシャツ会社を営んでいて、グリフィス家はその地の名家でした。
 クライドは伯父を頼ってリカーガスに渡り、その後ろ盾によって会社に入りました。

 伯父の息子で会社の秘書であるギルバートは、そのことを快く思いませんでした。
 彼はクライドを役員にしたとき、決して女工と関係を持たぬようにと忠告しました。

 その後ロバータという美貌の女工が入り、お互いに好意を持つようになりました。
 しかし、階級の違いゆえに、2人は思いを打ち明けないまま過ごしていました。

 ある日、クライドが湖でボートを漕いでいるとき、偶然ロバータに出会いました。
 クライドはロバータをボートに誘います。ロバータは喜びながらもためらいます。

 ロバータは悪い予感がしていました。「ボートなんて、あぶないんですもの」・・・
 そしてこれをきっかけに2人は特別な仲となり、どんどん深みにはまっていって・・・

 この「第二部」もまた、とても面白いです。
 ロバータと関係を持つまでのクライドは、とてもけなげで好感が持てました。

 ところが、ロバータと関係を持ってしまうと、クライドは変わっていくのです。
 特に、上流階級への入り口が見えてからはひどい。どんどんクズ野郎になっていく!

 上巻の前半は、クライドがんばれ、クライドがんばれと応援しながら読んでいました。
 後半に入ると、クライドのクズ野郎、クライドのクズ野郎と思いながら読みました。

 自分の地位を確立すればするほど、クライドは人間的に堕落していきます。
 不倫してるんじゃねえ。二股かけてんじゃねえ。ロバータをだいじにしろ!

 ようやくロバータがクライドから離れる決心をしたとき、彼女の体に異変が・・・
 どうすることもできなくて、現実から目を背けるクライド。このクズ野郎!・・・

 さて、クライドは上流階級の仲間入りができるのか? 憧れのソンドラとの関係は?
 ロバータはどうなるのか? そしてこの先、どのような悲劇が待っているのか?

 「アメリカの悲劇」というのは要するに、物質文明の悲劇ということでしょうか。
 あるいは、堕胎を許さない宗教的不寛容の悲劇ということなのでしょうか。

 ようやく上巻を読み終わりました。「第二部」は下巻にも続きます。
 上下巻合わせて1300ページ以上の大長編ですが、しかし、まったく飽きません。

 ドライザーの作品にはほかに、岩波文庫の「シスター・キャリー」があります。
 キャリーという少女が、物質文明や上流階級に憧れて、堕落していく物語です。
 「シスター・キャリー」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-06-05

 さいごに。(ごきぶり出現)

 大きなゴキブリが出現しました。真っ黒で堂々たるゴキブリです。
 うちの妻と娘は虫が嫌いなため、こういうときばかり私を頼ります。

 私が来た時にはすでに物陰に入ってしまったので、取り逃がしてしまいました。
 すると女衆は「こんな部屋では寝られない」と大騒ぎ。おおげさなんだよ!(笑)

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