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世界文学の流れをざっくりとつかむ36 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第七章≫ 近代小説の誕生

7 イギリス写実主義とその後

 ジェイン・オースティンは、田舎の中流社会の人間模様を簡潔な文体で描写したことで、写実小説の先駆者と見られています。1813年に出した「高慢と偏見」は、エリザベスとダーシーの恋愛物語です。この作品は彼女の代表作であるばかりではなく、近代イギリス小説の頂点とも言われています。また、1815年に出した「エマ」は、完成度の高い心理小説です。そのほか、「分別と多感」「マンスフィールドパーク」「ノーサンガー・アビー」「説得」など、いずれも高く評価されています。

 1837年にヴィクトリア女王が即位した頃、商工業が発展して中産階級が興隆しました。女王が君臨した19世紀の末までがイギリス帝国の最盛期でした。その一方で、功利主義的な活動が格差を生み、社会矛盾も生じました。そのような状況をありのままに写したディケンズは、この時代の写実主義文学の代表的作家です。

 チャールズ・ディケンズは、現在でも広く読まれている国民的作家です。幼い頃から労働して新聞記者となり、ジャーナリストとしての活動を始めました。1836年から「ピクウィック・ペイパーズ」でヴィクトリア朝の繁栄の陰にある社会矛盾を暴いて注目され、小説家として認められました。その後「オリヴァー・トゥイスト」を、1840年代には「クリスマス・キャロル」や自伝的な傑作「デイヴィッド・コパフィールド」を、1950年代には「荒涼館」や「二都物語」を、1860年には「大いなる遺産」を出しました。人々の日常生活や時代風俗がたいへん生き生きと描かれ、守銭奴のスクルージなどは時代を超えて強烈なインパクトを与え続けています。

 ディケンズに対抗しうる作家としてサッカレーがいます。彼は莫大な遺産を浪費した後に、筆一本で立った作家です。1847年に出した「虚栄の市」で認められました。美貌と才気だけで上流社会に入り込むベッキーなど、成り上がり者の俗物根性を暴いて人気となりました。

 ディケンズらと同時期の作家にはブロンテ姉妹がいます。長姉シャーロット・ブロンテは1847年に「ジェイン・エア」を出しました。不美人で社会通念に反抗するヒロインは、社会に新しい女性像を提供しました。「ジェイン・エア」がベストセラーとなった一方で、次女エミリー・ブロンテが1847年に出した「嵐が丘」は酷評されました。しかし、荒涼たる自然の中で描かれたヒースクリフの復讐劇というこのゴシック風物語は、のちに認められ現在では古典的名作とされています。女性作家の地位の低かった当時、姉妹の小説は男性名義で出版されましたが、今では彼女たちの名前はその作品とともに私たちの記憶に刻まれています。

 イギリスでは1873年に大不況がおこり経済活動がしばらく停滞します。この時期には帝国主義による植民地支配が活発化したため、安価な輸入品により生活が向上する側面もありました。同時に労働階級の地位が向上し、教育水準が上がりました。その一方で3割の貧困層があり、格差は増大していきました。この矛盾が、やがて世紀末のデカダンスへ向かっていくのです。

 トーマス・ハーディは、変貌する社会と自我に目覚めた人間を描いた作家です。宇宙の意志と人間の意志の対立、という壮大なテーマを持っていました。1891年に出した「ダーバヴィル家のテス」と1895年に出した「日陰者ジェード」が代表作です。海洋ロマン小説で知られるジョゼフ・コンラッドは、自身も船員の経験を持っていました。1897年の「ナーシサス号の黒人」や1900年の「ロード・ジム」、1902年の「闇の奥」など、極限状況における人間性をテーマに数々の小説を書きました。劇作家のオスカー・ワイルドは、機知と洒落で知られた社交界の寵児でした。 1890年の「ドリアン・グレイの肖像」や1894年の一幕劇「サロメ」など、耽美的で退廃的な作品を残しました。社会主義者のバーナード・ショーは近代演劇の確立者と言われています。1912年の「ピグマリオン」は映画「マイ・フェア・レディ」の原作として有名です。

 次回は、ドイツ写実主義文学について述べたいと思います。

 さいごに。(一番楽しかったのはホテル)

 娘に「修学旅行で一番楽しかったのはどこ」と聞くと、「ホテル」とのことでした。
 様々な見学地より、友達とホテルの部屋で過ごした時間が、楽しかったそうです。

 なるほど。修学旅行って、そういうものですよね。
 部屋では、女の子同士、今までにないいろいろな話ができたと言っていました。

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