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人生を〈半分〉降りる [哲学・歴史・芸術]

 「人生を〈半分〉降りる」 中島義道 (新潮OH!文庫)


 人生を半分降りて、自分にとって大切な問題について考えることを勧めた本です。
 副題は「哲学的生き方のすすめ」です。中島義道はカントや時間論の専門家です。

 2000年に新潮OH!文庫から出ました。現在は新潮OH!文庫自体がありません。
 しかし現在は、ちくま文庫からちゃんと出ています。さすが名著です。


人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ (ちくま文庫)

人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ (ちくま文庫)

  • 作者: 中島 義道
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/01/09
  • メディア: 文庫



 「100億年以上におよぶ宇宙の歴史において、この二〇世紀後半に至ってたった一
 度だけ与えられた生命なのに、そしてあとは宇宙の終焉までいや永遠に何ごとかを
 感じたり考えたりするチャンスは与えられないであろうに、このままアクセク働い
 て死んでしまうのだとしたら、なんともったいないことであろうか。」(P12)

 このような思いから、筆者は人生を〈半分〉降りることを提案します。
 公職からも世間からも一定の距離を置き、もっと自分自身の問題に向き合おうと。

 「自分の残された時間を人生そのものの謎(真理とは何か、存在とは何か、善とは
 何か、時間とは空間とは、そしてとりわけコノ私とは何か等々)に向けるべきでし
 ょう。」(P26)

 そして自分との向き合い方を、一章「繊細な精神」、二章「批判精神」、三章「懐疑
 精神」、四章「自己中心主義」、五章「世間と妥協しないこと」等で示しています。

 中でも傑作なのは四章と五章です。ここに筆者の言いたいことが詰まっています。
 たとえば、次のような生き方を提唱しています。賛否両論あるかと思いますが。

 「月給だけもらってナルベク好き勝手なことをする、そのためには細かな計算をし
 て、『必要がない』と思ったことからはサッサと手を引く。そして、できるだけ人
 づき合いを制限し孤立して、『自分が今生きておりもうじき死ぬこと』を考える。
 たえずこのことを考える。」(P194)・・・

 この本が2000年に「新潮OH!文庫」から出たときは、ちょっと衝撃的でした。
 「なるほど、そういう生き方もあるんだ!」と、勇気をもらった気がしました。

 当時30代初めだった私は、飲み会に誘われたら、行きたくなくても参加しました。
 この本と出会って、行きたくない飲み会を断ることができるようになりました。

 これを進歩と言っていいかどうかは微妙ですが、確実に生きやすくはなりました。
 大げさなようですが、そういう意味で、本書は私の生き方を変えてくれた本です。

 さて、中島義道との出会いは、講談社現代新書の「『時間』を哲学する」でした。
 面白くて夢中で読みました。それ以降、中島義道は私のメンター的な存在です。

 特に、子どもの頃から死の問題を考え続けてきた点に、私は共感しています。
 私も子どもの頃、死ぬのが怖かった。そして私も、大学で哲学を専攻しました。

 しかし、中島の言う「哲学的生き方」を実践する気にはとうていなれません。
 というのも、まっとうに生きる人間にとっては、かなりの覚悟がいるので。

 「『哲学的生き方』をまかりまちがって選ぶと、あなたはかならず(世間的には)
 『不幸』になります。そして、それでいいのです。まさにこうした不幸を選び取
 ること、不幸を覚悟し、不幸に徹して生きつづけること、これこそ〈半隠遁〉の
 醍醐味なのですから。」(P273)

 中島義道は少し屈折しています。そして、その屈折したところが魅力なのです。
 彼の本は時に毒となります。その毒のあるところがまた魅力なのです。

 中島義道の本に、「孤独について」(文春文庫)というのがあります。
 この本は、中島が屈折し毒を持ってしまったいきさつが分かって興味深いです。


生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春文庫)

生きるのが困難な人々へ 孤独について (文春文庫)

  • 作者: 中島 義道
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/11/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(カーリング女子、今日決勝!)

 女子カーリングの「ロコソラーレ」を応援しています。
 いつも笑顔でがんばる姿に癒され、元気をもらっています。

 準決勝の対スイス戦は、みごとな勝利でした。夜更かししてよかった。
 今日の午前にいよいよ決勝戦です。相手はイギリス。がんばってほしい。

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