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幕間(まくあい) [20世紀イギリス文学]

 「幕間」 ヴァージニア・ウルフ作 片山亜紀訳 (平凡社ライブラリー文庫)


 野外劇が上演される日の、オリヴァー家の様子を、スケッチ風に描いた物語です。
 ヴァージニア・ウルフの遺作で、ウルフはこの作品の出版を待たずに自殺しました。


幕間 (平凡社ライブラリー)

幕間 (平凡社ライブラリー)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2020/02/13
  • メディア: 文庫



 1939年のある日、オリヴァー家では野外劇の上演の準備をしていました。
 オリヴァー家の人々や客人や使用人たちの様子が、スケッチ風に描かれています。

 やがて、劇作家ミス・ラトロープによる野外劇が始まりました。
 それは、エリザベス朝時代からのイギリスの歴史を、順にたどっていくもので・・・

 とにかく最初は場面がコロコロ変わるため、流れに付いていくのがたいへんでした。
 私は、登場人物の名前がなかなか覚えられなくて、内容が頭に入ってきませんでした。

 「バート」というのは「バーソロミュー」の愛称で、オリヴァー家の長老のこと。
 「アイサ」というのは「イザベラ」の愛称で、バートの息子「ジャイルズ」の妻。
 「ルーシー」というのは「ミセス・スウィズン」のことで、バートの妹の老婦人・・・

 あるときは「バート」、あるときは「バーソロミュー」、あるときはただの「老人」。
 呼び名がいちいち変わるので、主語が分からなくて、理解するのがたいへんでした。

 しかも、途中で劇中劇が始まって、実在の人物と劇中の人物がごっちゃになりました。
 さらに、劇の途中から、なんだかわけが分からなくなるし。

 さて、「ある夏の夜、庭に面した窓をすべて開け放った大きな部屋で、彼らは屎尿溜
 めについて話していた。」(P9)、という印象的な一文で、この物語は始まります。

 屎尿溜め(しにょうだめ)、つまり肥だめの話から始まるのです。
 一瞬「ユーモア小説か」と思ってしまいますが、読んでみると実に暗い内容でした。

 その暗さはどこから来るかというと、なんとなく聞こえる戦争の足音からです。
 物語の1939年というのは、第二次世界大戦が始まる年なのです。

 「ヨーロッパ全土が—すぐ向こう側が—満身創痍で、(中略)『ハリネズミ』というパ
 ッとしない言葉が、ヨーロッパについての彼のイメージ、つまり無数の銃を突き立て
 られ、無数の飛行機が舞い飛んでいるというイメージを如実に表していた。」(P67)

 そして、我々はそのような状況に対して、何もできません。
 「ぼくたちはじっと座っているしかない」「ぼくたちは観客」(P74)・・・

 ウルフは、のどかな一日を描くことで、かえって我々の無力感を表したいようです。
 近づく戦争に対して何もできない無力感を。しかし、私が分かったのはそれだけ。

 ウルフがこの作品に託した思いは?
 タイトル「幕間」に込められた意味は?

 そういうことが私には、まったく分かりませんでした。
 ところが、ユーチューブのスケザネさんの解説で、ようやくそれが分かりました。

 スケザネさんの解説は目からうろこです。本当にすばらしいので、おススメです。
 このブログで伝えられなかった作品の核心を、ぜひこの動画で理解してください。


 
 さいごに。(結婚20周年)

 先日20回目の結婚記念日を迎え、結婚式のアルバムを見ながらケーキを食べました。
 お互いに「よく我慢してきたよね」と、いたわり合いながら食べました。(笑)

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