SSブログ

パタゴニア [20世紀イギリス文学]

 「パタゴニア」 ブルース・チャトウィン作 芹沢真理子訳 (河出文庫)


 最果ての地パタゴニアを旅したチャトウィンが、97章で綴った文学的紀行文です。
 著者の第一作です。池澤夏樹編集の世界文学全集(河出書房)に収録されました。


パタゴニア (河出文庫)

パタゴニア (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/09/05
  • メディア: 文庫



 チャトウィンの祖母の家には、ブロントサウルスの皮の切れ端がありました。
 彼は子供のころ、この恐竜が生息していたというパタゴニアに憧れを抱きました。

 1974年12月、30代半ばで新聞記者を辞めて、いよいよパタゴニアに出発します。
 最果ての地、険しい山々、美しい湖水、切り立つ氷壁、息をのむほどの絶景・・・

ae39d284fe5ebf7e8d016cb6eef2da28 (2).jpg


 ところが、風景についての描写よりも、人物についての記述の方が圧倒的に多い。
 インディオ、皇太子、ピアニスト、詩人、牧夫、空想的冒険家、ギャング・・・

 前半でもっとも印象に残ったのは、なんといってもオレリー=アントワーヌです。
 弁護士を辞め、家族の共同預金を引き出し、パタゴニア王となるべく出発した男!

 彼は通訳と2人の大臣を連れて、インディオのアラウカノ族のもとを訪れました。
 すると、族長が死ぬ前に「白い異人がやってくる」と予言していたおかげで・・・

 妄想を実現させてしまう飛びぬけた実行力! ひとつ間違えばただの狂人ですよ。
 事実は小説より奇なり、と言いますが、まさにその通りです。

 また、時々ちょこっと出てくるだけの人物も、なかなか魅力的です。
 私のお気に入りは、トレベリンの中心人物で、61歳のミルトン・エバンズです。

 娘がビールを持ってくると、エバンズは自慢の英語でこう言って飲み干します。
 「はっはー! 馬のしょんべんだ!」

 さて、例の皮の切れ端は恐竜のではなく、ミロドンという巨大なナマケモノでした。
 しかし、パタゴニアの魅力は少しも薄れません。そこに住む素敵な人々のおかげで。

 ところでチャトウィンは、今年7月に岩波ホールが閉館したとき、注目されました。
 最終作品が、「歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡」であったためです。



 チャトウィンと一緒に旅をしているような、そんな気分になる映画だそうです。
 ややマニアックな作品だと思いますが、予告を見たら映画も見たくなりました。

 さいごに。(土砂崩れ)

 昨日の台風が直撃し、うちに続く道のひとつが、土砂崩れで不通になりました。
 16年住んでいて初めてです。珍しいので、娘と一緒に見に行きました。

 現地では、ほかにも多くの人に会いました。土砂崩れの見学会みたいでした。
 復旧には時間がかかりそうです。幸い二本の道があるので、出勤はできます。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。