砂の女 [日本の現代文学]
「砂の女」 安部公房 (新潮文庫)
捕らえられて砂穴で暮らす男の、脱出を試みる姿と心情の変化を描いた物語です。
1962年に刊行されて評判となり、現在では世界二十カ国以上で翻訳されています。
ある年の8月に、教員をしている男が昆虫採集に出かけて、行方不明となりました。
捜索願もむなしく、失踪の理由が分からないまま、7年後に死亡認定を受けました。
男は3日間の休暇を取って、ある村の砂丘に、新種の昆虫を探しに来ていたのです。
夕方、砂穴の底にあり30前後の女がいる家に、一夜だけのつもりで宿を借りました。
男が「風呂にしたい」と言うと、女は「明後日にして下さい」と言います。
男が「明後日にはぼくはいないよ」と言うと、女は「そうですか?」と言います。
夜、女は砂掻きを始め、男が手伝うと「最初の日からじゃわるいから」と言います。
男が「ぼくがいるのは今夜だけだよ」と言うと、女は「そうですか?」と言います。
女が言うには、砂掻きをしないと家が埋まり、砂がすべてを腐らせるのだそうです。
実はこうして何軒もの人々が奴隷のように働くことで、部落が守られていたのです。
男は憤慨し、バカバカしくなって、砂掻きを途中でやめてしまいました。
翌朝、女は裸で寝ていて・・・そして、外に出ると縄梯子が消えていて・・・
言わずと知れた名作です。私は若いころに一度読みました。今回は再読です。
下手なホラー小説より、よほど怖い小説だと感じました。
男は昆虫を捕らえて採集箱に入れます。しかし今、男自身が捕らえられたのです。
しかも男を閉じ込めているのが砂です。男が、その流動性に憧れていた砂なのです。
「いいですか、砂ってやつは、こんなふうに、年中動きまわっているんだ・・・そ
の、流動するってところが、砂の生命なんだな・・・絶対に、一カ所にとどまって
なんかいやしない・・・」(P32)
その流動性ゆえに砂は部落を襲い、人々を不自由にしています。
砂が男を閉じ込めてその自由を奪っている、という点に皮肉で深い意味があります。
「砂の女」については、以前、NHK100分de名著で放送されました。
講師のヤマザキマリが、男の愚かしさを痛快に指摘していて、面白かったです。
ただ、私は砂に落ちた男と、仕事に縛られる自分を重ね合わせ、悲哀を感じました。
自由を求めるがゆえに社会に囚われる、という大きな矛盾を考えさせられました。
あるときは仮病を使い、あるときは女を人質にし、あるときは女をだまして・・・
男は砂の穴から脱出できるか? しかし、男にとって何が幸福なのだろうか?・・・
ラストの場面がすばらしい。これを、希望というのか、絶望というのか・・・
私は、なによりも怖いのは、その生活に慣れてしまう自分自身だと思いますが・・・
ところで、安部公房の作品で、もうひとつオススメなのが「箱男」です。
若いころ安部公房のマイブームがあって、そのころ読みました。再読したいです。
さいごに。(つい見てしまう)
野球中継なんて、WBCの前までは、まったく見ていませんでした。
ところが、妻と一緒に見ているうちにハマってきました。見てみると面白いですね。
捕らえられて砂穴で暮らす男の、脱出を試みる姿と心情の変化を描いた物語です。
1962年に刊行されて評判となり、現在では世界二十カ国以上で翻訳されています。
ある年の8月に、教員をしている男が昆虫採集に出かけて、行方不明となりました。
捜索願もむなしく、失踪の理由が分からないまま、7年後に死亡認定を受けました。
男は3日間の休暇を取って、ある村の砂丘に、新種の昆虫を探しに来ていたのです。
夕方、砂穴の底にあり30前後の女がいる家に、一夜だけのつもりで宿を借りました。
男が「風呂にしたい」と言うと、女は「明後日にして下さい」と言います。
男が「明後日にはぼくはいないよ」と言うと、女は「そうですか?」と言います。
夜、女は砂掻きを始め、男が手伝うと「最初の日からじゃわるいから」と言います。
男が「ぼくがいるのは今夜だけだよ」と言うと、女は「そうですか?」と言います。
女が言うには、砂掻きをしないと家が埋まり、砂がすべてを腐らせるのだそうです。
実はこうして何軒もの人々が奴隷のように働くことで、部落が守られていたのです。
男は憤慨し、バカバカしくなって、砂掻きを途中でやめてしまいました。
翌朝、女は裸で寝ていて・・・そして、外に出ると縄梯子が消えていて・・・
言わずと知れた名作です。私は若いころに一度読みました。今回は再読です。
下手なホラー小説より、よほど怖い小説だと感じました。
男は昆虫を捕らえて採集箱に入れます。しかし今、男自身が捕らえられたのです。
しかも男を閉じ込めているのが砂です。男が、その流動性に憧れていた砂なのです。
「いいですか、砂ってやつは、こんなふうに、年中動きまわっているんだ・・・そ
の、流動するってところが、砂の生命なんだな・・・絶対に、一カ所にとどまって
なんかいやしない・・・」(P32)
その流動性ゆえに砂は部落を襲い、人々を不自由にしています。
砂が男を閉じ込めてその自由を奪っている、という点に皮肉で深い意味があります。
「砂の女」については、以前、NHK100分de名著で放送されました。
講師のヤマザキマリが、男の愚かしさを痛快に指摘していて、面白かったです。
ただ、私は砂に落ちた男と、仕事に縛られる自分を重ね合わせ、悲哀を感じました。
自由を求めるがゆえに社会に囚われる、という大きな矛盾を考えさせられました。
あるときは仮病を使い、あるときは女を人質にし、あるときは女をだまして・・・
男は砂の穴から脱出できるか? しかし、男にとって何が幸福なのだろうか?・・・
ラストの場面がすばらしい。これを、希望というのか、絶望というのか・・・
私は、なによりも怖いのは、その生活に慣れてしまう自分自身だと思いますが・・・
ところで、安部公房の作品で、もうひとつオススメなのが「箱男」です。
若いころ安部公房のマイブームがあって、そのころ読みました。再読したいです。
さいごに。(つい見てしまう)
野球中継なんて、WBCの前までは、まったく見ていませんでした。
ところが、妻と一緒に見ているうちにハマってきました。見てみると面白いですね。
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