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恋愛中毒 [日本の現代文学]

 「恋愛中毒」 山本文緒 (角川文庫)


 二度と恋しないと誓った「訳あり」女の、異常なまでに激しい恋を描いた物語です。
 1998年刊行。吉川英治文学新人賞受賞。薬師丸ひろ子主演でドラマ化されました。


恋愛中毒 (角川文庫)

恋愛中毒 (角川文庫)

  • 作者: 山本 文緒
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2002/06/25
  • メディア: 文庫



 主人公で32歳の冴えない独身女の水無月(みなづき)は、弁当屋で働いています。
 日常に埋没した平穏な生活は、作家の創路(いつじ)の来店から狂い始めました。

 創路のファンであった水無月は、職場からほど近い創路の屋敷に立ち寄りました。
 たまたまそれに気づいた創路は、水無月を寿司に誘い、ホテルに連れ込みました。

 創路の事務所で働き始めた水無月は、少しずつ創路の女関係を知ることとなります。
 創路は一度離婚し、娘はチュニジアにいて、現在は新しい妻と共に暮らしています。

 「先生は何でもアリよ。自分さえよければ人のことはどうでもいいの。(中略)先生
 と付き合っていきたいなら、早く他に男をつくることね。」(P127)

 創路に振り回されながらも、しだいに彼にとって欠かせない存在となっていきます。
 とうとう創路とふたりだけでバリに行き、楽しい時間を過ごすことができました。

 ところで、水無月はかつて、藤谷という男と結婚し、そして離婚していたのです。
 水無月は思い出します。もう二度と人を好きにならないと誓った日のことを・・・

 「どうか、どうか、私。
  これから先の人生、他人を愛しすぎないように。
  愛しすぎて、相手も自分もがんじがらめにしないように。
  私は好きな人の手を強く握りすぎる。相手が痛がっていることすら気が付かない。
 だからもう二度と誰の手も握らないように。
  諦めると決めたことを、ちゃんときれいに諦めるように。二度と会わないと決め
 た人とは、本当に二度と会わないでいるように。」(P37)

 水無月はなぜ、藤谷と離婚したのか? なぜ、このような誓いをしたのか?
 誓いを破り、覚悟を決めてのめり込んだ創路との恋愛は、うまくいくのか?

 さて、私は最初この小説を、他人を愛しすぎてしまう女子の物語だと思いました。
 不器用ゆえに、相手に尽くしすぎて、損ばかりしてしまう女子の物語だと・・・

 ところが、なんと、ス〇ー〇ーの話だったとは!
 水無月に同情しながら読んでいたので、終盤の展開にはぶったまげました。

 「水無月さん、頭がおかしいんじゃないの?」
 「やっと分かったのね」(P387)

 この結末を、面白いと思うか、ヘンだと思うかは、非常に微妙なところです。
 私自身は、少し後味の悪さを感じました。やっぱり、ちょっとヘンですよ。

 しかし、林真理子が褒めているので、これは傑作なのでしょう。(なんじゃそれ?)
 文章から、作者のセンスの良さを感じます。随所に名文がちりばめられています。

 「その時はそれが恋だと思った。今は違うと分かる。他に出口がないので、私の中に
 溜まっていた膿のようなものが、彼めがけて噴き出してしまっただけのことだと思う。
 」(P290)

 山本文緒の作品では、「恋愛中毒」の人気が、3年ほど前までは不動の第一位でした。
 ところが、2020年に出た「自転しながら公転する」の人気は、それを上回るほどです。

 「自転しながら公転する」は、文庫本にもなっているので、ぜひ読んでみたいです。
 「ブルーもしくはブルー」や、「眠れるランプツェル」も面白そうです。 

 さいごに。(会員制高級リゾートホテル)

 今日から1泊旅行に行きます。泊まるのは、なんと、会員制の高級リゾートホテル!
 実は、友人の会社で会員になっているので、便乗させてもらうのです。楽しみです。

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