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庭の砂場 [日本の現代文学]

 「庭の砂場」 山口瞳 (文春文庫)


 庭を見ながら死に行く人々を思い、人生に対する哀感を綴ったエッセイの名作です。
 1987年刊行。表題作ほか「窮すれば」「-に-を掛けると」の全3作を収録。


庭の砂場 (文春文庫)

庭の砂場 (文春文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/09/09
  • メディア: 文庫



 「私は樹木が間近に見える居間の長椅子に坐って庭に降る雨を見ていた。そうしてい
 ると気分が沈んでくる。(中略)そのときに、ある種の匂いが匂ってくる。それは砂
 の匂いだった。雨で湿った砂の匂いがする。」(P9)

 作者の分身である「私」は、庭に降る雨を見ながら、死んだ身内を思い出しています。
 一昨年の八月に妹が死んだ。去年の八月に弟が死んだ。二人とも五十四歳だった・・・

 しみじみと寂寥感がにじみ出る、哀切きわまりない私小説集です。胸に沁みます。
 弟の描写が良いです。時に兄を自慢し、時に兄に嫉妬し、時に兄に喧嘩を売って・・・

 本書に興味を持ったのは、渡辺武信が「住まい方の演出」で言及していたからです。
 「住まい方の演出」を読み返さなかったら、本書の存在すら知らなかったでしょう。

 「-に-を掛けると」(マイナスにマイナスをかけると)も、興味深い作品でした。
 この作品には、作者山口瞳の人生が、恥の部分を中心にそのまま描かれています。

 東京で忌避するものは女郎ですが、母方の先祖が女郎屋だったらしいと知りました。
 実際、母の小学校の通信簿の親の職業欄に、「貸座敷」と書かれてあったのでした。

 しかし、それ以上に忌避するべきは、人を騙したり弱みに付け込んだりする人です。
 実は、「私」の父は詐欺師であり、法的な制裁を受けて刑務所に入っていたのです。

 「父母のことは人に言えない。そうして、間違いなく、母の血も父の血も私の中に流
 れているのである。いったい、私に人なみの青春などというものがありえたのだろう
 か。」(P82)

 「-に-を掛けると」も興味深い。マイナスにマイナスを掛けるとプラスになります。
 山口は自分のマイナス面を重ねることで、希望を見出そうとしているのではないか?

 後半は、主に野球の思い出話ですが、大山正雄先生と黒尾重明選手は印象的でした。
 ふたりとも早逝しましたが、そんなふたりを弔うため書いているように感じました。

 ところで、山口瞳には「血族」というベストセラー小説があります。
 母の出生の秘密を探る物語ですが、本書がネタバレになっている気が・・・


血族 (文春文庫 や 3-4)

血族 (文春文庫 や 3-4)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1982/0 2/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(これで支持率は?)

 内閣改造がありましたが、これではたいして支持率の上昇は見込めないでしょう。
 良かった点は、外務大臣を上川さんにしたことぐらいか。彼女には期待しています。

 一方、財務大臣を留任させて、「増税しますよ」と大々的にアピールしてしまった。
 それに、経済再生担当大臣は、悪名高きJGBT法案の立役者ではないか。御褒美か?

 (「公明党と縁を切る」ぐらいのことをやってくれれば、少しは許せたのですが。)

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