SSブログ

日本人とすまい ほか [読書・ライフスタイル]

 「日本人とすまい」 上田篤 (岩波新書)


 屋根・柱・壁などすまいの基本的な要素について、その意味や伝統を語っています。
 1974年刊行。著者の上田は、都市計画専門の建築家であり、古典にも通じています。


日本人とすまい (岩波新書 青版) (岩波新書 青版 884)

日本人とすまい (岩波新書 青版) (岩波新書 青版 884)

  • 作者: 上田 篤
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/03/20
  • メディア: 新書



 屋根・柱・壁・戸・窓・障子・床・畳・床の間・土間・天井・階段・二階・屋上・
 物干場・地下・物置・軒下・縁・庭・東屋・垣・門・錠・・・

 以上、すまいに関わる24の要素を取り上げ、多方面からその意味を考察します。
 それぞれわずか10ページ足らずですが、含蓄ある文章で非常に内容が濃いです。

 (以下「柱」の章)西洋建築は、窓との格闘の歴史でした。
 壁を積み上げたあと、窓を空けるのがたいへんだからです。

 日本建築は、柱との格闘の歴史でした。
 柱を立ててから隙間を埋めるのですが、柱を垂直に立てるのがたいへんだからです。

 柱は日本建築の象徴であり、竪穴式住居にあっても、家屋の中心は2本の柱でした。
 この原始住居の家づくりを、工匠たちは「天地根源の宮づくり」と言い伝えました。

 また、日本建築における柱には、神の憑代という樹木信仰の名残りがあります。
 それゆえ、商家の大黒柱などでは、子どもがもたれかかることすら許さないのです。

 ところが現在では柱が壁の中にしまいこまれてしまい、同時に信仰も消滅しました。
 というように、「柱」の役割から民俗学的意味まで解説していて、とても興味深い。

 (以下「垣」の章)貴族の邸宅や寺院などでは、塀が用いられていました。
 塀は、土でできた目隠しであり、盗賊の侵入を阻むものでした。

 一方、庶民の家では、庭の周りに垣が巡らされていました。
 垣は、主に植物などで作られ、そのため見通しがきき、人の侵入も許します。

 塀が「障壁」であるのに対し、垣は「結界」の意味を持ちます。
 垣が防ぐのは盗賊ではなく死者の霊魂であり、その原型が「しめ縄」に見られます。

 この本もまた、38歳から39歳の頃、わが家を建てるときに読みました。
 すまいを形作るさまざまな要素の歴史的意味を知る上で、とても参考になりました。

 類書では、藤森照信の「天下無双の建築学入門」(ちくま新書)も面白かったです。
 神の憑代としての柱については、出雲大社を引き合いに出して述べていました。

 出雲大社の9本の柱のうち中央の柱は、床を貫いて背丈ぐらいで止まっています。
 これは神の憑代であり、「岩根御柱(いわねのみはしら)」と呼ばれていると言う。

 ほかにも、「庭は末期(まつご)の目で見るべし」など、興味深い指摘があります。
 庭はあの世のものであり、時間を無化する装置である、と言うのです。実に面白い!

 このように知的好奇心をくすぐる本ですが、正直言って私には読みにくかったです。
 藤森の文章のクセ(体言止めが多くて話し言葉的)が、私には合わなかったです。

 さいごに。(脳ドック、大丈夫?)

 最近もの忘れがひどくて、水筒をどこかに置き忘れて、思い出せなくなりました。
 結局、副社長が見つけてくれました。なんと、職員トイレに置き忘れていたのです。

 そんな具合なので、脳ドックでは何かしらひっかかると、思い込んでいました。
 ところが「問題なし」でした。嬉しい一方で、納得できない気持があり、複雑です。

nice!(3)  コメント(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。