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ペンギン・ハイウェイ [日本の現代文学]

 「ペンギン・ハイウェイ」 森見登美彦 (角川文庫)


 街に突然ペンギンが表れたのはなぜか、その謎を解く小学四年生たちの物語です。
 2010年刊行。日本SF大賞受賞し、2018年にはアニメ映画化された人気作です。


ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫



 「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。
  だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。
  ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知って
 いる。毎日きちんとノートを取るし、たくさんの本を読むからだ。」(P5)

 アオヤマ君はまだ小学四年生(10歳か)ですが、かなりませていて知識も豊富です。
 色々な研究をし、ノートに記録をとり、チェスが得意で、結婚相手を決めています。

 五月のある朝の登校中、歯科医院の近くの空き地に、多くのペンギンが現れました。
 トラックで運搬中、みな消失しました。ペンギンはどこから来てどこへ行ったのか?

 その謎を解くためアオヤマ君が始めた研究の名が、「ペンギン・ハイウェイ」です。
 同じクラスで友人のウチダ君と一緒に、その謎を解くべく調査に乗り出しました。

 一方アオヤマ君は、歯科助手のお姉さんと仲が良く、カフェでチェスなどをします。
 そのお姉さんが、あるとき缶コーラを投げて、ペンギンに変えてみせたのでした。

 「私というのも謎でしょう」
 お姉さんは言った。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか」

 アオヤマ君はお姉さんの研究を開始し、彼女が他の生物も出せることを知りました。
 また、お姉さんがペンギンを、出せたり出せなかったりすることも知りました。

 ある日、同じクラスの女子のハマモトさんが、「海」を研究していると言いました。
 「海」とは、森の奥の草地にある、海の色をして宙に浮いている謎の球体でした。

 ペンギンと海とお姉さん。これらには何か関係があると、アオヤマ君は気づき・・・
 乱暴者のスズキ君は、「海」から出た水のボールをかぶって不思議な体験をし・・・

 「海」は何だったのか? なぜそこに現れたのか? 「海」とペンギンとの関係は?
 ペンギンは何だったのか? そして、お姉さんはいったい何者だったのか?

 「世界には解決しないほうがいい問題もある」と、お父さんは言いました。
 それでもアオヤマ君が謎を解いていったとき、彼にとってはせつない結末が・・・

 謎がしかし謎のまま残されます。その点は、賛否両論あります。
 本当に、お姉さんは何だったのでしょうね。本人も分かっていなかったようですが。

 「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん
 平和になるんだ」(P51)

 アオヤマ君、サイコーです。まさに、こういう言葉がこの小説の魅力です。
 しかし映画版では、おっぱいばかり考えるアオヤマ君が、キモイと言われました。

 さて、最も印象に残ったのは、アオヤマ君がスズキ君に水着を取られる場面です。
 自分が困れば彼らは喜ぶ、だから困らないようにしようと考え、とった行動は・・・

 アオヤマ君の相棒ウチダ君も、いい味を出しています。ウチダ君は哲学者です。
 「もしかすると、ぼくらはだれも死なないんじゃないかな」と考察しているのです。

 「ほかの人が死ぬということと、ぼくが死ぬということは、ぜんぜんちがう。それは
 もうぜったいにちがうんだ。ほかの人が死ぬとき、ぼくはまだ生きていて、死ぬとい
 うことを外から見ている。でもぼくが死ぬときはそうじゃない。ぼくが死んだあとの
 世界はもう世界じゃない。世界はそこで終わる」(P288)

 この言葉の中に、お姉さんの消失に対する解釈のヒントが、あるような気がします。
 もしかしたら、ペンギンもお姉さんも、死んだわけではなくて・・・

 ところで、森見登美彦といったら、なんといっても「夜は短し歩けよ乙女」ですね。
 「夜は短し」があまりにも素晴らしくて、これを超える作品はなかなか出ません。
 「夜は短し」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-03-02

 さいごに。(恐竜はどこへ行ったのか?)

 以前「世にも奇妙な物語」でやった「恐竜はどこへ行ったのか?」が面白かった。
 もう一度見たいと思っていたら、ユーチューブに出ていました。これ、傑作です。



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