SSブログ

きつねのはなし [日本の現代文学]

 「きつねのはなし」 森見登美彦 (新潮文庫)


 表題作は、古道具屋でアルバイトをする大学生が、奇妙な事件に巻き込まれる話です。
 2006年刊行。表題作ほか「果実の中の龍」「魔」「水神」の全4話を収録しています。


きつねのはなし (新潮文庫)

きつねのはなし (新潮文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



 大学生の青年「私」は、芳蓮堂という古道具屋で、アルバイトをしています。 
 店の経営者は、ナツメさんという30歳ぐらいの、不思議な雰囲気を持つ女性です。

 「私」が天城(あまぎ)という客の家へ行くとき、彼女は奇妙なことを言いました。
 「どんな些細なものでも渡す約束をしないで下さい。あの人は変わった人なので。」

 後日ナツメさんが物置の掃除をしていると、和紙で作られた狐の面が出てきました。
 狐の面は「私」が譲り受けましたが、その日のうちに天城に渡すことになりました。

 実はその面は、ナツメが小学生のとき、吉田神社の節分で男が被っていたものです。
 ナツメの横にいたその男(ナツメの父?)は、狐の面を被ったまま変死したのです。

 その後、ナツメに狐の面を返してほしいと言われ、「私」は天城のもとへ行きます。
 天城が狐の面と引き換えに「私」に要求したのは、なぜか恋人奈緒子の写真でした。

 その後、なぜか奈緒子はいなくなり、天城のからくり幻燈の中で映し出されて・・・
 天城から奈緒子を取り戻すため、「私」の代わりにナツメが天城のもとへ行き・・・

 「日が暮れたら、吉田神社の節分祭へ行くのです。必ず東側から吉田山へ入ってくだ
 さい。(中略)そうして奈緒子さんの姿を探してください。」(P79)

 天城はいったい何者なのか? ナツメさんはいったい何者なのか?
 天城とナツメは、裏でつながっているような感じがするが・・・

 というように、「きつねのはなし」は怪しげな雰囲気で、とても魅力的な短編です。
 他の3編は同じテイストの独立した作品ですが、しかしゆるやかに連携しています。

 たとえば、「きつねのはなし」の結末で、天城の最期の場面は謎のままでした。
 ところが最終話の「水神」を読むと、その謎がなんとなく理解できるのです。 

 また、天城が飼っていた「けもの」は、他の作品でも頻繁に登場します。
 特に第三話の「魔」において、「けもの」は大きな役割を果たします。

 全4話それぞれ魅力的ですが、マイ・ベストは第二話の「果実の中の龍」です。
 なんといっても「先輩」がいい! 「先輩」と「私」の交流がとても楽しいです。

 「僕はよく書き物をしていたろう? あれは、嘘の下書きだ。徹頭徹尾、嘘の自伝
 だ。僕はうまく喋るために、前もって念入りに準備してたんだよ」(P151)

 「僕はつまらない、空っぽの男だ。語られた話意外、いったい、僕そのものに何の
 価値があるんだろう」(P152)

 先輩が語る不思議な話よりも、先輩という存在の方が、ずっと深い謎でした。
 ところで、先輩が語る次の言葉は、この短編集を象徴しているように思いました。

 「この街には大勢の人が住んでいて、そのほとんどすべての人は赤の他人だけれど
 も、彼らの間に、僕には想像もつかないような神秘的な糸がたくさん張り巡らされ
 ているにちがいない。何かの拍子に僕がその糸に触れると、不思議な音を立てる。
 もしその糸を辿っていくことができるなら、この街の中枢にある、とても暗くて神
 秘的な場所へ通じているような気がするんだ」(P109)

 さいごに。(フルーツサンド)

 フルーツサンドが流行っているそうなので、買ってみました。4つで2500円なり。
 クリームがいっぱいで、おいしかったのですが、翌朝便がなかなか出なくて・・・

IMG_E0315-2.png

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。