きつねのはなし [日本の現代文学]
「きつねのはなし」 森見登美彦 (新潮文庫)
表題作は、古道具屋でアルバイトをする大学生が、奇妙な事件に巻き込まれる話です。
2006年刊行。表題作ほか「果実の中の龍」「魔」「水神」の全4話を収録しています。
大学生の青年「私」は、芳蓮堂という古道具屋で、アルバイトをしています。
店の経営者は、ナツメさんという30歳ぐらいの、不思議な雰囲気を持つ女性です。
「私」が天城(あまぎ)という客の家へ行くとき、彼女は奇妙なことを言いました。
「どんな些細なものでも渡す約束をしないで下さい。あの人は変わった人なので。」
後日ナツメさんが物置の掃除をしていると、和紙で作られた狐の面が出てきました。
狐の面は「私」が譲り受けましたが、その日のうちに天城に渡すことになりました。
実はその面は、ナツメが小学生のとき、吉田神社の節分で男が被っていたものです。
ナツメの横にいたその男(ナツメの父?)は、狐の面を被ったまま変死したのです。
その後、ナツメに狐の面を返してほしいと言われ、「私」は天城のもとへ行きます。
天城が狐の面と引き換えに「私」に要求したのは、なぜか恋人奈緒子の写真でした。
その後、なぜか奈緒子はいなくなり、天城のからくり幻燈の中で映し出されて・・・
天城から奈緒子を取り戻すため、「私」の代わりにナツメが天城のもとへ行き・・・
「日が暮れたら、吉田神社の節分祭へ行くのです。必ず東側から吉田山へ入ってくだ
さい。(中略)そうして奈緒子さんの姿を探してください。」(P79)
天城はいったい何者なのか? ナツメさんはいったい何者なのか?
天城とナツメは、裏でつながっているような感じがするが・・・
というように、「きつねのはなし」は怪しげな雰囲気で、とても魅力的な短編です。
他の3編は同じテイストの独立した作品ですが、しかしゆるやかに連携しています。
たとえば、「きつねのはなし」の結末で、天城の最期の場面は謎のままでした。
ところが最終話の「水神」を読むと、その謎がなんとなく理解できるのです。
また、天城が飼っていた「けもの」は、他の作品でも頻繁に登場します。
特に第三話の「魔」において、「けもの」は大きな役割を果たします。
全4話それぞれ魅力的ですが、マイ・ベストは第二話の「果実の中の龍」です。
なんといっても「先輩」がいい! 「先輩」と「私」の交流がとても楽しいです。
「僕はよく書き物をしていたろう? あれは、嘘の下書きだ。徹頭徹尾、嘘の自伝
だ。僕はうまく喋るために、前もって念入りに準備してたんだよ」(P151)
「僕はつまらない、空っぽの男だ。語られた話意外、いったい、僕そのものに何の
価値があるんだろう」(P152)
先輩が語る不思議な話よりも、先輩という存在の方が、ずっと深い謎でした。
ところで、先輩が語る次の言葉は、この短編集を象徴しているように思いました。
「この街には大勢の人が住んでいて、そのほとんどすべての人は赤の他人だけれど
も、彼らの間に、僕には想像もつかないような神秘的な糸がたくさん張り巡らされ
ているにちがいない。何かの拍子に僕がその糸に触れると、不思議な音を立てる。
もしその糸を辿っていくことができるなら、この街の中枢にある、とても暗くて神
秘的な場所へ通じているような気がするんだ」(P109)
さいごに。(フルーツサンド)
フルーツサンドが流行っているそうなので、買ってみました。4つで2500円なり。
クリームがいっぱいで、おいしかったのですが、翌朝便がなかなか出なくて・・・
表題作は、古道具屋でアルバイトをする大学生が、奇妙な事件に巻き込まれる話です。
2006年刊行。表題作ほか「果実の中の龍」「魔」「水神」の全4話を収録しています。
大学生の青年「私」は、芳蓮堂という古道具屋で、アルバイトをしています。
店の経営者は、ナツメさんという30歳ぐらいの、不思議な雰囲気を持つ女性です。
「私」が天城(あまぎ)という客の家へ行くとき、彼女は奇妙なことを言いました。
「どんな些細なものでも渡す約束をしないで下さい。あの人は変わった人なので。」
後日ナツメさんが物置の掃除をしていると、和紙で作られた狐の面が出てきました。
狐の面は「私」が譲り受けましたが、その日のうちに天城に渡すことになりました。
実はその面は、ナツメが小学生のとき、吉田神社の節分で男が被っていたものです。
ナツメの横にいたその男(ナツメの父?)は、狐の面を被ったまま変死したのです。
その後、ナツメに狐の面を返してほしいと言われ、「私」は天城のもとへ行きます。
天城が狐の面と引き換えに「私」に要求したのは、なぜか恋人奈緒子の写真でした。
その後、なぜか奈緒子はいなくなり、天城のからくり幻燈の中で映し出されて・・・
天城から奈緒子を取り戻すため、「私」の代わりにナツメが天城のもとへ行き・・・
「日が暮れたら、吉田神社の節分祭へ行くのです。必ず東側から吉田山へ入ってくだ
さい。(中略)そうして奈緒子さんの姿を探してください。」(P79)
天城はいったい何者なのか? ナツメさんはいったい何者なのか?
天城とナツメは、裏でつながっているような感じがするが・・・
というように、「きつねのはなし」は怪しげな雰囲気で、とても魅力的な短編です。
他の3編は同じテイストの独立した作品ですが、しかしゆるやかに連携しています。
たとえば、「きつねのはなし」の結末で、天城の最期の場面は謎のままでした。
ところが最終話の「水神」を読むと、その謎がなんとなく理解できるのです。
また、天城が飼っていた「けもの」は、他の作品でも頻繁に登場します。
特に第三話の「魔」において、「けもの」は大きな役割を果たします。
全4話それぞれ魅力的ですが、マイ・ベストは第二話の「果実の中の龍」です。
なんといっても「先輩」がいい! 「先輩」と「私」の交流がとても楽しいです。
「僕はよく書き物をしていたろう? あれは、嘘の下書きだ。徹頭徹尾、嘘の自伝
だ。僕はうまく喋るために、前もって念入りに準備してたんだよ」(P151)
「僕はつまらない、空っぽの男だ。語られた話意外、いったい、僕そのものに何の
価値があるんだろう」(P152)
先輩が語る不思議な話よりも、先輩という存在の方が、ずっと深い謎でした。
ところで、先輩が語る次の言葉は、この短編集を象徴しているように思いました。
「この街には大勢の人が住んでいて、そのほとんどすべての人は赤の他人だけれど
も、彼らの間に、僕には想像もつかないような神秘的な糸がたくさん張り巡らされ
ているにちがいない。何かの拍子に僕がその糸に触れると、不思議な音を立てる。
もしその糸を辿っていくことができるなら、この街の中枢にある、とても暗くて神
秘的な場所へ通じているような気がするんだ」(P109)
さいごに。(フルーツサンド)
フルーツサンドが流行っているそうなので、買ってみました。4つで2500円なり。
クリームがいっぱいで、おいしかったのですが、翌朝便がなかなか出なくて・・・
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