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幽霊船 [19世紀アメリカ文学]

 「幽霊船 他一篇」 メルヴィル作 坂下昇訳 (岩波文庫)


 「幽霊船」と「バートルビー」の傑作中編二篇を収録した作品集です。
 「幽霊船」は、難破して漂流するスペイン船にまつわる物語です。

 岩波文庫から出ていましたが品切れ。楽天オークションで手に入れました。
 初版は1979年。訳は古いため、少し 読みにくかったです。


幽霊船 他1篇 (岩波文庫 赤 308-5)

幽霊船 他1篇 (岩波文庫 赤 308-5)

  • 作者: ハーマン・メルヴィル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/12/17
  • メディア: 文庫



 1799年のこと。アメリカの商船のデラーノ船長は、ある難破船に遭遇しました。
 それはスペインの奴隷船で、船長のドン・ペニートは、ひどく陰鬱な男でした。

 スペイン船の中は、異様な雰囲気に包まれていました。
 デラーノは、スペイン人船長から、漂流のいきさつを聴きますが・・・ 

 どうしてこれだけ長い間、漂流していたのか?
 どうして壊血病や熱病で、黒人らはそれほど死ななかったのか?

 刃物を研ぐようなあの音は何か? この異様な雰囲気は何か?
 スペイン人船長に始終付き添っている、バボーなる黒人はいったい何者か?

 スペイン人船長のとった衝動的な行動。黒人たちによる意外な行動・・・
 最後まで、予想外の展開が続きます。

 私はこの作品を、タイトルに惑わされて、ホラー小説として読んでいました。
 だから、いつ幽霊が出現するのかと、そればかりに気を取られていました。

 しかし、それは間違っていました。ホラー小説よりも、推理小説に近いです。
 解説には、「メルヴィルが書いた唯一の推理小説だと評していい」とあります。

 そう思って読み返してみると、なかなか良くできた推理小説です。
 ただし、訳のせいなのか、とても読みにくい。新訳化を強く望みます。

 ところで、この本には「バートルビー」という作品も収録されています。
 これがまた、実に興味深いのです。「バートルビー」については次回に。

 さいごに。(ラムネ)

 町内の夏祭りで、娘は初めてラムネを飲んで、とても気に入ったみたいです。
 サンタクロースには、ラムネ10本をお願いする、と今から言っています。


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モヒカン族の最後 [19世紀アメリカ文学]

 「モヒカン族の最後」 クーパー作 犬飼和雄訳 (ハヤカワ文庫)


 白人の猟師とモヒカン族の戦士を中心に、インディアンの争いを描いた名作です。
 フレンチ・インディアン戦争時のアメリカを背景にした歴史小説です。

 映画「ラスト・オブ・モヒカン」公開の、1993年にハヤカワ文庫から出ました。
 しかし、現在は品切れです。私はアマゾンで古本を手に入れました。


モヒカン族の最後〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

モヒカン族の最後〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジェイムズ・フェニモア クーパー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1993/02
  • メディア: 文庫



 18世紀後半の北アメリカでは、イギリス軍とフランス軍が領土を争っていました。
 部族間で戦っていたインディアンは、その争いに巻き込まれ、利用されていました。

 主人公は白人のホークアイ。鷹の目を持つ男。銃で狙った獲物は必ずしとめます。
 その親友は、モヒカン族のアンカスと、その父チンガチグック。有名な戦士です。

 彼ら三人は、道に迷って困っている一行に、たまたま出会いました。
 イギリス軍の少佐ヘイワードと、司令官の2人の娘コーラとアリスです。

 この一行を案内していたのは、ヒューロン族のマグワ。
 彼らとの偶然の出会いが、長い冒険の始まりでした。

 奇襲、銃撃戦、脱出、救出、追跡、変装、対決、そして大虐殺・・・
 憎しみ、恨み、祈り、そして、愛情と友情・・・

 最後までワクワクしながら読みました。
 歴史小説というより、冒険小説です。ハヤカワ文庫から出ていますし。

 歴史的事実を踏まえているため、臨場感があります。
 物語の中心になる「ウィリアム・ヘンリー砦の大虐殺」は、実際にあった事件です。

 さて、戦いの構図は複雑です。イギリス対フランス。モヒカン族対ヒューロン族。
 しかし根本的には、白人対インディアン。

 マ グワは狡猾な悪党ですが、見方を変えれば、白人の侵入による犠牲者です。
 白人に与えられた酒によって、堕落させられたのですから。

 「白人は、うまいことをいってインディアンを騙した。インディアンの戦士を
 金で雇って戦わせている。また、うまくごまかして地上の富をかき集めている。」

 悪党ながら、マグワの言葉には真実味があります。
 作者クーパーの主張も、案外この言葉の中にあるのではないでしょうか。

 ところで、クーパーは「アメリカ小説の父」とも言われています。
 しかし、日本ではあまり読まれません。代表作の「モヒカン」も品切れです。

 ちなみに「モヒカン」は、全5巻の「レザーストッキング物語」の第2部です。
 第1部は「開拓者」。岩波文庫では上巻 が品切れ。下巻だけ売ってどうするの?

 確かにクーパーの文体は、回りくどくて分かりづらい部分があります。 
 だからこそ、分かりやすい新訳を出してほしい。内容は面白いのだから。

 ちなみに、映画「ラスト・オブ・モヒカン」は、ブルーレイで出ています。
 見てみたいです。


ラスト・オブ・モヒカン ディレクターズカット [Blu-ray]

ラスト・オブ・モヒカン ディレクターズカット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: Blu-ray



 さいごに。(朝の楽しみ)

 娘が夏休みになったので、ラジオ体操の前に、町内1周のマラソンをしています。
 マラソンといっても10分ほどですが、娘と一緒に走るのはとても楽しいです。

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ハックルベリ・フィンの冒険 [19世紀アメリカ文学]

 「ハックルベリ・フィンの冒険」 マーク・トウェイン作 大久保博訳 (角川文庫)


 浮浪児のハックルベリが、逃亡奴隷のジムと一緒に、イカダで旅をする物語です。
 「トム・ソーヤーの冒険」の続編で、トムの親友ハックが主人公となっています。

 名作なので、多くの文庫から出ています。私が選んだのは、角川文庫版です。
 1999年の訳を改定したものです。挿し絵も所々に入っています。


ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2004/08/01
  • メディア: 文庫



 「トム・ソーヤーの冒険」のあと、ハックはダグラスおばさんに引き取られました。
 しかし、飲んだくれの父親がやってきて、ハックを連れて行ってしまいました。

 森の小屋に閉じ込められたハックは、脱出して、対岸の無人島に逃げ込みました。
 すると、そこへ逃亡奴隷のジムがやってきて、二人の冒険が始まります・・・

 流れてきた家と男の死体、沈没しかけた蒸気船と悪党たち、宿恨で殺しあう二家、
 ニセ王とニセ公爵による様々なペテン、トムとの再会と奴隷解放の冒険・・・

 さて、私が最も意外だったことは、ハックが実に賢いということです。
 自分の名前さえ書けなかったのが、いつのまにか手紙すら書けるようになっていた!

 しかし、それ以上に、ハックの考え方の中に、賢さを感じました。
 例えば、奴隷の逃亡を助けることは正義か、という問題について。

 当時は、奴隷の逃亡を助けることは禁じられていました。犯罪だったのです。
 ところがハックは、よく考えた上で、ジムの逃亡を助ける道を選びます。

 人種問題については、この作品の主要なテーマのひとつなのだそうです。
 黒人が人間扱いされていないことへの批判が、所々かいま見えます。

 「まあ大変! で、だれか怪我をしたかい?」
 「いいえ。黒ん坊が一人、死んだだけです」
 「そう、それは運がよかったわね。だって、ときには人間が怪我をすること
 だって実際にあるんだものね。」(P481)

 こういう会話が普通に交わされた時代に、ハックとジムは親友になりました。
 そしてハックは、親友の「黒ん坊」を、命がけで守ろうとするのです。

 社会批判に満ちた作品で、いろいろと考えさせられました。
 トウェインはインテリの読む本だ、という意味がよく分かった気がします。

 さいごに。(いいぞ、オラフ)

 「アナ雪」に出てくる雪だるまの「オラフ」は、かわいくて面白いと思います。
 アナに真実の愛を教えたりして、物語の中で重要な役割も果たしています。

 実は「オラフ」の声を担当しているのが、私の高校の同期生です。
 昔からひときわ目立っていましたが、これほどビッグになるとは! すごいです。

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ハックルベリ・フィンの冒険(なぜ古典新訳文庫を買わなかったか) [19世紀アメリカ文学]

 「ハックルベリ・フィンの冒険」 マーク・トウェイン作 大久保博訳 (角川文庫)


 浮浪児のハックルベリが、逃亡奴隷のジムと一緒に、イカダで旅をする物語です。
 「トム・ソーヤーの冒険」の続編です。アメリカ文学の原点とも言われています。

 様々な文庫で出ています。中でも古典新訳文庫版は、2014年の夏に出たばかり。
 土屋訳は、先行の「トム・ソーヤー」同様、とても分かりやすいです。 


ハックルベリー・フィンの冒険(上) (光文社古典新訳文庫)

ハックルベリー・フィンの冒険(上) (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/06/12
  • メディア: 文庫



ハックルベリー・フィンの冒険(下) (光文社古典新訳文庫)

ハックルベリー・フィンの冒険(下) (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/06/12
  • メディア: 文庫



 古典新訳文庫のカバーは、あいかわらずちょっとオマヌケなイラストです。
 しかし、中の挿し絵はとても良いです。数も多くて、配置も工夫されています。

 「トム・ソーヤー」同様、本当に本が好きな人が作っているのでしょうね。
 もちろん、ストーリーは文句なくすばらしい。訳も原文の良さを生かしています。

 ところが、しかし、私は古典新訳文庫版を、選ばなかったのです。なぜか?
 それは、コストパフォーマンスです。(要するに値段。セコイ話ですまない)

 古典新訳文庫版は1冊1200円。上下合わせて2400円。税を入れると約2600円!
 確かにすばらしい本ですが、約400ページで1200円が適正価格でしょうか。

 ちなみに、先に発売された「トム・ソーヤー」は、540ページで933円。
 安くはありませんが、まあ、充分に納得のできる価格です。

 それなら「ハック」は、約800ページで1500円くらいか、と想像していました。
 ところが、上下合わせて2400円。許容範囲を大きく超えてしまいました。

 私は、文庫本の大きな魅力のひとつに、安さという美徳があると思っています。
 古典新訳文庫の「ハック」の価格は、文庫本本来の美徳を損なってしまいました。

 こういう理由で、古典新訳文庫の「ハック」を、私は選びません。
 中身のすばらしさを認めた上で、泣きながら(アホか)却下いたしました。

 さて、「ハックルベリ・フィンの冒険」は、角川、新潮、岩波からも出ています。
 さすが、名作です。児童向けのものを入れると、もっと多くなります。

 新潮文庫は全1冊で約700円。訳者はNHKドラマで話題の村岡花子。
 岩波文庫は二分冊で、合わせて1400円ほど。新潮も岩波も、訳が古すぎます。

 結局、私が選んだのは、角川文庫の大久保訳です。全1冊。650ページで743円。
 1999年の訳を改定したものです。挿し絵もあります。まあ、無難な作りです。


ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

  • 作者: マーク トウェイン
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2004/08/01
  • メディア: 文庫



 ところで、勝手な予想ですが、新潮文庫から新訳が出るのではないでしょうか。
 少し前に、「トム・ソーヤー」が新訳で出ました。だから、もしかして・・・

 今回は、「ハック」の内容に触れられませんでした。
 それはまた次回に。

 さいごに。(くるかなテスト)

 娘の小学校には、「くるかなテスト」というのがあります。
 正式名称は、「夏休み来るかな?テスト」。

 国語と数学のテストを、100点取るまで何度もやり直すというものです。
 今日が夏休み前の最終日ですが、クラス全員が合格しているようで、良かったです。

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ある婦人の肖像2 [19世紀アメリカ文学]

 「ある婦人の肖像」 ヘンリー・ジェイムズ作 行方昭夫訳 (岩波文庫)


 (注意。前回の記事の続きです。今回の記事も、ネタバレが多めです。)

 若くて美しくて知的なアメリカ人女性が、ヨーロッパで人生を探求する物語です。
 作者の代表作です。「ある貴婦人の肖像」というタイトルで、映画化されました。

 岩波文庫から、行方訳が出ていますが、現在品切れです。重版を強く願う!
 1985年に国書刊行会から出たものの改訳で、とても味わいのある訳です。


ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



 ようやく下巻を読み終わりました。
 期待通りに、最後まで面白かったです。いや、期待以上に面白かったです。

 この本を品切れにしておくなんて、本当にもったいない。
 もっともっと読まれていい作品です。

 さて、私はいつのまにかこの作品を、ラルフに感情移入して読んでいました。
 気づくと、「ラルフのプラトニックラブの物語」として、読んでいたのです。

 誠実で繊細なラルフは、どんなことがあっても、イザベルを見捨てません。
 イザベルのことを本当に理解していて、一番愛していたのは、ラルフでしょう。

 ラルフの死の場面は、強烈な印象が残ります。
 彼は、死によって、イザベルへの愛を完成させたのだと思います。

 ところで、よく問題になるのが、ラストシーンの解釈です。
 イザベルは、ローマに戻って、どうなるのか?

 ローマに戻ってオズモンドとの生活を続ける、という解釈には賛成できません。
 それでは、ラルフの愛と死の意味が、無くなってしまいます。

 ローマに戻ってオズモンドと対決し、二人の関係に決着をつける。(離婚する)
 ラルフの死後も、その愛を身近に感じたイザベルは、きっとそうしますよ。

 イザベルとオズモンドとの対決は、ローマを出たときに既に始まっています。
 その対決に決着をつける勇気を与えたのは、ラルフの死だったのではないか。
 (直接のきっかけは、グッドウッドの3度目の求婚であるが)

 ほかにも魅力的な登場人物はいます。たとえば、ウォーバトンとグッドウッド。
 この二人の求婚者は、タイプが全く異なっていて面白いです。

 また、オズモンドとマダム・マールは、実に生き生きと描かれています。
 「危険な関係」を思い出しました。こういう悪役(?)が、物語を面白くします。

 しかし、何といっても興味深いのが、イザベルの友人で新聞記者のヘンリエッタ。
 彼女は何でもズケズケ言い、あつかましくて、時には滑稽でさえあります。

 しかし彼女の言い分は、よくよく考えると、それほど的外れではありません。
 それどころか、ラルフが言えないことを、はっきり伝える役目を果たしています。

 ヘンリエッタは、イザベルの分身のような存在ではないかと思います。
 イザベルの無意識を顕在化したような存在。だから、二人は仲良しなのでしょう。

 余談ですが、私はこの本に、注釈がないことが、潔くて好ましく感じました。
 ただし、フローレンスがフィレンツェだということに、最後まで気付かなかった。

 本の中巻のカバーが、なぜフィレンツェなのかと、不思議に思っていたのです。
 フローレンスは、辞書にも載っていません。これだけは、注がほしかった。

 さいごに。(さよならエラー)

 職場対抗のソフトボール大会に参加しました。私はライトの6番。
 6対5のリードで迎えた最終回のウラ。相手の攻撃で2アウト満塁。

 打球が私に向かって飛んできました。追いついてキャッチ。
 と思ったら、グラブからボールがポロリ。敵軍の2者がかえって、サヨナラ負け。

 でも、私は全く責められませんでした。というのも、勝っていたらもう一戦。
 しかし、我が軍にはもう余力がなくて、みんな家に帰りたがっていたので。

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ある婦人の肖像 [19世紀アメリカ文学]

 「ある婦人の肖像」 ヘンリー・ジェイムズ作 行方昭夫訳 (岩波文庫)


 (注意。今回の記事は、ネタバレが多めです。)

 若くて美しくて知的なアメリカ人女性が、ヨーロッパで人生を探求する物語です。
 ジェイムズの代表作です。ニコール・キッドマン主演で、映画化されました。

 岩波文庫で全3冊。現在は品切れ。私はヤフー・オークションで手に入れました。
 初版は1996年。行方(なめかた)訳は、分かりやすく、味わいもあります。

 帯に入っている写真は、ヒロインのイザベルを演じるニコール・キッドマン。
 1996年の映画「ある貴婦人の肖像」に合わせて、この本も出ました。

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



 両親を亡くし財産の無いイザベルのもとへ、ある日、金持ちの伯母が訪れます。
 イザベルは伯母と一緒に、アメリカからロンドンへ渡り、運が開け始めます。

 イザベルは、タチェット家の人々から暖かく迎えられ、皆から愛されます。
 個性的な伯母、銀行家として成功した伯父、その息子で肺病のラルフたちに。

 そして、財産を持たないイザベルのもとに、次々と求婚者が現れます。
 イギリス貴族のウォーバトン卿。アメリカの大経営者グッドウッド氏など。

 しかし、イザベルには、自由に世界を飛び周りたいという気持ちがありました。
 そして巨額の遺産が手に入り、イザベルは世界に羽ばたく翼を得たのです。

 イザベルは、世界に飛び立ったとたんに・・・
 彼女が人生の伴侶に選んだ相手は・・・

 イザベルのような頭の良い人が、どうしてあんな男を?
 それはたぶん、彼女の相反する二つの思いのせいだと思います。

 自由に振る舞いたいという思いと、
 誰かに全て委ねたいという思いと。

 彼女にはもともと、アメリカ娘特有の、自由を求める気質がありました。
 だから、財産を持たない頃は、一生懸命に強がって、人の手に落ちなかった。

 しかし、思いがけず巨額の遺産が手に入ると、自分の全てを委ねたくなった。
 だから、あっさりと、つまらない男の手に落ちてしまった。

 周りの人々は、もちろん警告を発します。
 しかし、知的で自信家のイザベルには、彼らの言葉が耳に入りません。

 結局、故タチェット氏の心配が、現実になりました。
 恋を知らない若く美しい女性が、金持ちになるのは、かえって危険ですね。

 結婚後、ようやく自分の失敗に気づきますが、もうその時は遅い。
 でも、プライドのある彼女は、決して自分の失敗を打ち明けたりしません。

 さて、実は現在、私は下巻を読み始めたばかりです
 今のイザベルは、ちょっと痛々しいです。

 でも、このまま終わるはずはありません。(たぶん)
 いったいこのあと、彼女はどういう行動に出るのか。最後まで楽しみです。

 さいごに。(みんなが食べるから)

 「みんなが食べるから、私も食べてみた」と、娘が言うので、「何を?」と
 聞くと、「ハナクソ!」という答え。

 小学校では、特に男の子たちが食べているようです。
 そういえば、私も小学校のとき、食べていたような・・・


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若草物語 [19世紀アメリカ文学]

 「若草物語」 オルコット作 吉田勝江訳 (角川文庫)


 メグ、ジョー、ベス、エイミーの、4姉妹の日常生活を描いた自伝的小説です。
 1987年に世界名作劇場で、「愛の若草物語」というタイトルで放映されました。

 角川文庫、新潮文庫、ヴィレッジブックスなどで、読むことができます。
 私は角川文庫で読みました。1968年の古い訳ですが、違和感はありません。


若草物語 (角川文庫)

若草物語 (角川文庫)

  • 作者: L・M・オルコット
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/11/22
  • メディア: 文庫



 時は19世紀の南北戦争中。父は従軍して不在です。
 女だけの家で、優しい母親のもと、四人姉妹が仲良く暮らしています。

 一番上は、美しいメグ。16歳。家計を助けるために家庭教師をしています。
 二番目は、男の子っぽいジョー。15歳。小説を書くのが趣味で 、作者の分身。

 三番目は、はにかみやのベス。13歳。ピアノを弾くのが得意です。
 四番目は、ちょっとわがままなエイミー。12歳。絵を描く才能を持っています。

 両親を敬愛し、姉妹は助け合い、慎ましいながらも、楽しく暮らしています。
 一家の愛読書は「天路歴程」。模範的なピューリタンです。

 父親はほとんど登場しませんが、大きな存在感を持っています。
 一家は、遠くにいる父親のことを常に気にかけ、その手紙を待ち望んでいます。

 そして、悲しい知らせを受けたとき、ジョーの取った行動は胸を打ちます。
 (自分も、このような父親に、なりたいものです) 

 ところで、うちの妻は4人姉妹の末っ子でした。
 そのため、「愛の若草物語」放映中、「エイミー」と呼ば れていました。

 妻の姉妹も、とても仲良しです。
 年に2~3回は、家族全員が集まって、バーベキューなどをします。

 さて「天路歴程」は、17世紀のイギリス人バニヤンの宗教的な寓意物語です。
 岩波文庫から出ていましたが、現在は品切れ。私は第一部の途中で挫折。


天路歴程 第1部 (岩波文庫 赤 207-1)

天路歴程 第1部 (岩波文庫 赤 207-1)

  • 作者: ジョン・バニヤン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/03
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘とカラオケにいく)

 娘が「アナ雪」の歌を歌いたいというので、2人でカラオケに行きました。
 娘は初めてのカラオケ。1時間だけでしたが、とても喜んでくれました。

 私は数年ぶり。機械が昔とずいぶん変わっていて、戸惑いました。
 娘がほとんど歌いました。注文したパフェも、娘がほとんど食べてしまった。

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シズター・キャリー2 [19世紀アメリカ文学]

 「シスター・キャリー」 ドライサー作 村山淳彦(きよひこ)訳 (岩波文庫)


 物質文明に魅了された田舎娘キャリーの、波乱の人生を描いた都会小説です。
 現在、岩波文庫から出ています。初版は1997年。訳は分かりやすかったです。


シスター・キャリー〈上〉 (岩波文庫)

シスター・キャリー〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: シオドア・ドライサー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/06/16
  • メディア: 文庫



 前回の続きです。この小説で、ちょっと気になるのが、エイムズ青年。
 所々でちらっと登場するだけですが、キャリーへの影響力は大きい。

 高級レストランで、豪華な食事を取るヴァンス家の人々とキャリー。
 それは夢に描いていたきらびやかな世界。キャリーは幸せを感じます。

 しかし、エイムズは言います。「ぼくは金持ちになりたいとは思いませんね」と。
 「人間が幸せになるには、こんなものはな くてもいいんですよ」(P133~)と。

 エイムズは、さっと現れ、さっと消えていきました。
 しかし彼は、キャリーの心に、忘れられないほどの強烈な印象を残しました。

 もしキャリーが、ドルーエやハーストウッドより前に、エイムズに会っていたら・・・
 彼女の生き方は、全く違っていたはず。(小説としてはつまらなくなりそうですが)  

 エイムズは、この物語の中で、唯一のまっとうな考えを持っている男です。
 彼の言葉の中に、作者ドライサーの主張が代弁されているように思います。

 解説によると、作者ドライサーは、10人兄弟の下から2番目として生まれました。
 貧しい家庭に育ったため、その多くが不良にな ったのだそうです。

 特に次姉エマは、キャリーと似たような形で、ニューヨークへ駆け落ちしました。
 「シスター・キャリー」の「シスター」には、姉への思い入れがあるのだとか。

 なるほど。キャリーが悲惨な運命に陥らない理由が分かりました。
 それに比べて、ハーストウッドの運命は・・・

 ハーストウッドは、私が最も感情移入してしまった人物です。
 私は、この男がかわいそうでかわいそうで・・・

 物質文明の魅力。物質文明の魔力。都会生活に人は魅了され、振り回されてしまう。
 それでも一度は、ニューヨークに行ってみたいと、思ってしまいました。

 さて、次には、ぜひドライサーの代表作「アメリカの悲劇」が読みたいです。
 以前は新潮文庫で出ていましたが、現在は品切れ。新訳を出してほしい。

 さいごに。(水イボにはこれ)

 プールのシーズンを前に、水いぼに悩まされているお子さんは多いと思います。
 うちの娘は、いろいろ試した結果、「ヨクイニン」で治しました。
 高いものではありません。1500円ほどで手に入ります。

 娘の場合、飲んで数日で水イボは消えたので、プールに入れました。
 ただし、飲み続けなければ、また出てきます。
 水いぼは完治するまでに、どうしても1年以上はかかるようです。(娘は今年完治)


【第3類医薬品】クラシエヨクイニンタブレット 540錠

【第3類医薬品】クラシエヨクイニンタブレット 540錠

  • 出版社/メーカー: クラシエ薬品
  • メディア: ヘルスケア&ケア用品



 新しいブログを追加しました。本以外の商品の紹介ブログです。
 「ike-pyonの本気でオススメ」 → http://ike-pyon-2.blog.so-net.ne.jp/

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シスター・キャリー1 [19世紀アメリカ文学]

 「シスター・キャリー」 ドライサー作 村山淳彦(きよひこ)訳 (岩波文庫)


 物質文明に魅了された田舎娘キャリーの、波乱の人生を描いた都会小説です。
 ドライサーのデビュー作で、「アメリカの悲劇」と並ぶ代表作です。

 現在、岩波文庫から出ています。初版は1997年。
 ドライサーは文体にクセがありますが、訳はとても分かりやすいです。


シスター・キャリー〈上〉 (岩波文庫)

シスター・キャリー〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: シオドア・ドライサー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1997/06/16
  • メディア: 文庫



 アメリカの中西部の田舎から、姉を頼ってシカゴに出てきた18歳のキャリー。
 列車の中で、羽振りのいい会社員ドルーエと知り合い、希望が膨らみます。

 しかし、仕事はきつく、姉夫婦は退屈。早くも都会生活に失望を感じます。
 ところが、ドルーエと再会して、状況は一転。彼の援助を得ることに。(援交)

 キャリーは、ドルーエによって、たちまち物質文明のきらめきに魅了されました。
 しかし皮肉にも、そのきらめきによって、ドルーエが色あせて見えてくるのです。

 そこに登場したのが、高級なバーの支配人ハーストウッド・・・
 彼は成功者だが所帯持ち。しかし、状況は二転三転して・・・

 とても面白い小説です。展開が速くて、まったく飽きませんでした。
 また、ストーリーは、良い意味で私の予想を裏切ってくれました。

 キャリーは都会生活で堕落します。普通なら、その先にあるのは破滅です。
 ぼろぼろになって捨てられるキャリーを想像していましたが、ところが・・・

 確かにキャリーは、男どもによって堕落させられます。
 しかしキャリーは、その堕落の過程で磨かれ、鍛えられていきます。

 男どもはズルい。しかし、女たちもなかなかズルい。
 出版当時、キャリーの生き方は、道徳的な批判を浴びたといいます。

 余談ですが、もっともズルいのは、ハーストウッド夫人。
 この女ときたら・・・

 一方、エイムズというまっとうな青年も、ちらっと登場します。
 彼は、意外に大きな役割を果たしているのですが・・・それはまた次回に。

 さいごに。(父の日にはロールケーキ)

 父の日には、懲りずにまた、家族でロールケーキを食べる予定です。
 おいしいロールケーキ屋を見つけたので。ただし、今度は普通サイズ。

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ホーソーン短篇小説集 [19世紀アメリカ文学]

 「ホーソーン短篇小説集」 坂下昇編訳 (岩波文庫)


 「緋文字」で有名なホーソーンの、初期の短編小説集です。
 ボルヘスが激賞した「ウェイクフィールド」等を収録しています。

 先月5月に、岩波文庫から復刊されました。13編を収録しています。
 初版は1993年ですが、訳はいつのものか? 少し読みにくかったです。


ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)

ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)

  • 作者: ホーソーン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1993/07/16
  • メディア: 文庫



 不思議な話、怖い話、不気味な話など、色とりどりです。
 個人的には、ポーやホフマンの短編小説を連想しました。

 「ヤング・グッドマン・ブラウン」は、魔女の集いを扱う怪奇小説です。
 ホーソーンの特徴をよく表した作品だと、言われています。

 若いブラ ウンが、妻を残して、連れと一緒に、夜の夜の森に入ります。
 どんな目的があるのか? どこへ向かっているのか?

 森で出合った意外な人々・・・ 集いの場で見た驚くべき光景・・・
 あれは夢だったのでしょうか。今でも私はよく分かりません。

 「牧師の黒ベール」もまた、ホーソーンらしい心理小説の傑作です。
 「緋文字」の原型となる要素が見られて、興味深い作品です。

 ある日を境に、突然黒いベールを付けるようになった牧師。
 彼に何があったのか? なぜベールを付けるのか?

 人々の様々な憶測・・・ 牧師の謎めいた言葉・・・
 牧師に何があったのか。今でも私はよく分かりません。

 そして、私のイチオシ の作品が、「ウェークフィールド」です。
 人間心理の不可解さを感じる物語で、ボルヘスも絶賛しました。

 「金曜日の夕方の食事には待っていていい」
 ある日、妻にそう告げて、ウェークフィールド氏はふらっと出かけました。

 そして、そのまま20年間戻らず・・・ その間彼が住んでいたのは・・・
 私にとっては、他の怪奇小説よりも不気味でした。

 その他、ある彫刻師を描いた「ドゥラウンの木像」も、印象的な作品です。
 「石の心の男」「大いなる岩の顔」なども、捨てがたい作品です。

 ところで、この本の訳は、言葉遣いが古すぎる部分がありました。
 「弥終(いやはて)」とか「漆黒(ぬばたま)」とか。(P66~P67)

 古典新訳文 庫の小川訳「緋文字」は、とても分かりやすかったです。
 ホーソーンの短編集も、小川訳を出してもらえたらありがたいです。

 さて、ホーソーンを、誰よりも賛美したのが、ヘンリー・ジェイムズです。
 ジェイムズは、ホーソーンの評伝も書いていますが、文庫では読めません。

 さいごに。(驚愕のパケット代。ああ、おそろしや)

 どんな怪奇小説よりも怖かった。
 なんと、ケータイのパケット代が7500円。

 私はケータイを二日に一度ぐらいしか使いません。それも、eメールだけ。
 利用料は月に2000円ほどですが、それでも高いと思っています。

 「たまにはケータイで写真を撮ってみよう」そう思ったのが間違いでした。
 撮った写真10枚を、2度に分けて、自分のパソコンに送ったのですが・・・

 「パケット代が高額になる可能性があります」みたいな警告が出ました。
 「ひょっとしたら、500円くらいになるかな」と、私は思いました。
 普段、パケット代がほぼ0円の私にとって、500円は高額なので。

 それが、7500円とは! もちろん、悪いのは自分です。
 でも、どこかで、こう思ってしまう。「罠にかかってしまった」と。
 自分のケータイが、得体の知れぬ不可解なモノに、見えてきました。


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