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肉体の悪魔 [20世紀フランス文学]

 「肉体の悪魔」 ラディゲ作 新庄嘉章訳 (新潮文庫)


 第一次大戦中の、少年と若き人妻との恋の悲劇です。

 サガンも早熟でしたが、ラディゲはそれ以上です。
 これは、二十歳で夭逝したラディゲの、16歳から18歳の時の作品です。

 現在、新潮文庫と、光文社古典新訳文庫で読むことができます。

肉体の悪魔 (新潮文庫) 私は新潮文庫版で何度も読み返してきました。
 新庄訳は古くて、少し読みにくいところがあります。

 しかし、そのごつごつした文章に、若いラディゲの、
 せいいっぱい背伸びをしている姿が感じ取れます。

 他の2編は余分でした。
 中途半端なおまけは、本の完成度を落とします。


肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫)
 古典新訳文庫の中条訳の方が、
 ずっと読みやすく分かりやすいです。

 最初に読むのなら、こちらがオススメです。
 ただし、この表紙絵が気にならないのなら。



 大学生だった私は、新潮文庫版の冒頭を一読して、しびれてしまいました。

 「僕は多くの非難をわが身に受けることだろう。
  だが、それをどうすることができよう?
  宣戦布告の数カ月前に十二歳になったとしても、それが僕のせいだろうか?
  (中略)
  すでに僕を責めにかかっている人たちは、あの多くの年若い少年たちにとって
  戦争がなんであったかを思い出してみるといい。
  それは四年間の長い休暇だったのだ。」(P9)

 なんと、「戦争」を「休暇」だったと、断言しているのです!
 これほどさめた文を、自分より若い人間が書いたことに、私は驚愕しました。

 16歳の僕と、19歳の人妻マルトは、戦争という休暇を存分に楽しみます。
 彼女の夫は戦争に出ているのです。なんと罪深い!

 やがて二人の不倫は、町中の噂になります。
 そして、マルトは妊娠し出産し、赤ん坊には僕と同じ名前を与えます。
 もちろん、その子を夫の子であるように、とりつくろいます。

 しかし、休戦と同時に、僕たちの休暇は終わってしまうのです。

 結末は悲劇です。
 しかし死以外に、マルトにはどんな解決の方法が、あったのでしょうか。

 ところで、旧版の表紙絵は、あの池田満寿夫氏のデザインです。
 けだるく退廃的で、不健康な雰囲気を感じさせ、とても愛着があります。
 活字が小さく、読み返しはしませんが、新版と一緒に並べてあります。

画像1 001.jpg
 左が旧版、右が新版です。
 新版も悪くありませんが、旧版のデザインの方がずっと良いですね。

 タイトルの「肉体の悪魔」というのは、少しおおげさです。
 「肉体におぼれて」ぐらいが、適当なのではないでしょうか。

 さいごに。

 娘は、大人口ぐせを、すぐに真似して面白いです。
 以前、アンパンマンの人形に向かって、「もう、何してんの!」と言ってました。
 その言い方が、妻そっくりだったので、笑えました。

 また、私は何か聞かれたときに、「うん、そう。」と答えるくせがあります。
 娘は「さしすせそ」が言えないので、「うん、ちょう。」と言います。
 その言い方が癒されるので、意味も無く何度も「うんちょう」と言わせています。
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コメント 2

ai

ike-pyonさんこんにちは^^

娘さんかわいいですね~!!!!
読んでいて私も癒されます☆
皆さん風邪が治って良かったですね。
by ai (2010-06-24 11:59) 

ike-pyon

いつも見に来てくれてありがとうございます。

娘は幼稚園に入ってから、口が達者になりました。
生意気なことも、しょっちゅう言います。
by ike-pyon (2010-06-26 05:48) 

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