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アブサロム、アブサロム!(下) [20世紀アメリカ文学]

 「アブサロム、アブサロム!」 フォークナー作 藤平育子訳 (岩波文庫)


 南部の田舎町ジェファソンを騒がせたサトペン一族の、謎とその没落の物語です。
 2011年に岩波文庫から出ました。


アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: ペーパーバック



アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/01/18
  • メディア: ペーパーバック



 文体はフォークナー節。クセがあって、読みにくかったです。
 しかし、読み終わる頃には、この文体が心地よくなっていました。

 サトペンはフォークナー的な人物。悪魔のような男です。
 しかし、読み終わる頃には、サトペンに悪魔的な魅力を感じていました。

 この文体と主人公サトペンは、切っても切れない関係にあります。
 この文体だからこそ、サトペンを表現することができるのだと思います。

 下巻P219に「すべての人間的汚れを超越した神の権化」とあります。
 なるほど! サトペンは、悪魔と言うより、一種の神なのかもしれません。

 ということは、この物語は、悪神サトペンについて語った神話なのではないか。
 そして、この難解な文体は、神話を語るための、特別な文体なのではないか。

 神について語るためには、特別な言葉使いが必要になります。
 そこで、フォークナーが編み出したのが、この文体だったのではないか。

 そう考えると、タイトルが旧約聖書から取られている意味も分かる気がします。
 (タイトルは、ダヴィデ王の子アブサロムと、腹違いの兄のエピソードから)

 さて、物語は下巻に入ると、青年二人がサトペン物語を再構成してくれます。
 ああよかった、これで今までのモヤモヤが晴れていく。と思いきや・・・

 この二人の話もまた、あっちへ飛んだり、こっちへ戻ったりするのです。
 話を追うことに疲れます。モヤモヤはかえってつのっていきました。

 しかし、神話とは、謎を残しながら伝えられるものなのかもしれません。
 最後まで謎だからこそ、神話と言えるのかもしれません。

 実は、最後まで読んでもなお、私には分からない部分が多くありました。
 恥ずかしながら、巻末の年表を読んで、初めて理解できたことがらも多いです。

 これで、フォークナーの代表作4作を読み終わりました。
 全てに共通するのは、その読みにくさです。

 何もかもごちゃ混ぜに絡ませながら、全てを巻き込んでいくような文章でした。
 その魅力が、ようやくほんのちょっとだけ、分かったような気がします。

 さいごに(サンタからラムネ)

 娘は今年、サンタさんにラムネを頼んでいます。
 8月の夏祭りで初めて飲んだ時、ビー玉をはずすのが楽しかったようです。

 その後「ラムネを買って」と何度もねだられましたが、買ってあげず、
 「そんなに飲みたきゃサンタに頼め」と言ったら、それを覚えていたのです。
 8月に言ったことをちゃんと覚えているなんて。そんなに飲みたかったのか。

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