18世紀文学のベスト10を選びました2 [18世紀文学]
前回、18世紀文学のベスト10を、独断で次のように選びました。
前回のリストを、国別・年代順に並べ替えました。
(前回 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-2)
① 「ロビンソン・クルーソー」デフォー【英】
② 「ガリヴァ旅行記」スウィフト【英】
③ 「トム・ジョウンズ」フィールディング【英】(品切れ)
④ 「愛と偶然の戯れ」マリヴォー【仏】(品切れ)
⑤ 「マノン・レスコー」アヴェ・プレヴォー【仏】
⑥ 「フィガロの結婚」ボーマルシェ【仏】(品切れ)
⑦ 「若きウェルテルの悩み」ゲーテ【独】
⑧ 「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」ゲーテ【独】(品切れ)
⑨ 「ヴァレンシュタイン」シラー【独】(品切れ)
⑩ 「紅楼夢」曹雪芹【中】(単行本)
18世紀は、近代小説がイギリスで誕生し、大陸へ広まった時代です。
今回は、18世紀文学のイメージを、私なりにまとめてみました。
イギリスは前世紀、1642年に清教徒革命、1688年に名誉革命と、二つの
市民革命を経験した結果、市民階級が大きな勢力を持つようになりました。
やがて議会政治が確立し、市民が政治を論じるようになり、出版が自由化され、
新聞や雑誌など、ジャーナリズムがまたたくまに発展していきました。
18世紀初めには「タトラー」「スペクテイター」等の新聞が発行されました。
ジャーナリストの中には、新聞に自作の文学作品を載せる者も出てきました。
その内容の多くは、市民階級に好まれる現実的な(近代的な)物語でした。
近代小説は、このようにジャーナリズムの発展にともなって誕生しました。
さて、イギリス近代小説の最初期は、似た者同士のこの2人から始まります。
それは、デフォーとスウィフト。二人はもともと政治パンフレット作者でした。
1719年、デフォーは「ロビンソン・クルーソー」(①)を出版しました。
1726年、スウィフトは「ガリヴァ旅行記」(②)を出版しました。
どちらも空想的な冒険を語りながら、その中に社会批判を盛り込んでいます。
特に「ロビンソン・・」の描写は写実的で、近代小説の祖とされています。
そして、次の世代には、人間存在を探求する真に近代的な小説が始まりました。
印刷業者のリチャードソンと、新聞編集長のフィールディングです。
1740年、リチャードソンは書簡小説「パミラ」で小間使の心理を描きました。
1749年、フィールディングは傑作「トム・ジョウンズ」(③)を出版しました。
小説は、分かりやすい散文で面白い物を書こう、という思いから始まりました。
そしてイギリスの小説は、大衆へ広がり、やがて大陸へも広がっていきました。
さて、フランスの小説は 、このようなイギリスの小説の流れを受け継ぎました。
1715年にルイ14世が亡くなり、イギリス文化が流入しやすくなりました。
マリヴォーは、「スペクテイター」を真似た新聞を、いちはやく出しました。
アベ・プレヴォーは、放浪したイギリスの文化を、フランスに紹介しました。
そして、イギリスの自由な社会が紹介され、フランスの社会が批判されました。
が、マリヴォーとプレヴォーは、むしろ文学史の方で大きな足跡を残しました。
1730年、マリヴォーは「愛と偶然の戯れ」(④)で劇作家の地位を確立しました。
1731年、アベ・プレヴォーは官能的な「マノン・レスコー」(⑤)を出版しました。
このころ、フランスのジャーナリズムは、啓蒙思想家によって発展しました。
特にヴォルテールやモンテスキューの果たした役割を、忘れてはいけません。
後期啓蒙思想家のルソーやディドロ作品は、絶対王政の批判を含んでいました。
そしてそれは、やがて革命につながっていきます。
革命の5年前、1784年、ボーマルシャの「フィガロの結婚」(⑥)が出ました。
市民階級の活力を示され、革命へ向かう社会の雰囲気が伝わってきます。
さて啓蒙思想は、フランスでは市民階級に受け入れられました。
ドイツでは、市民階級が発達していなかったため、宮廷で受け入れられます。
ここが面白い。フランスでは市民が啓蒙思想を支持し、宮廷を批判しました。
しかし、ドイツでは宮廷が啓蒙思想を支持し、市民がそれを批判したのです。
ドイツの宮廷では、ヴォルテールが招かれたりします。
また、レッシングが活躍し、演劇で大衆を啓蒙しようとしたりします。
そういう上からの押し付けに反発したのが、若きゲーテやシラーの世代です。
1774年、25歳のゲーテの出した「若きウェルテルの悩み」(⑦)は最重要作品。
ウェルテルは、自己の死によって社会の虚飾を暴いてみせました。
これは世界中で熱狂され、フランス革命やナポレオンにも影響を与えました。
ゲーテ自身は、のちにヴァイマル公国の大臣になり、保守的になりました。
そして、ゲーテはシラーと親交を結び、ともに切磋琢磨し始めました。
1796年の、ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」(⑧)も傑作です。
1798年の、シラーの「ヴァレンシュタイン」(⑨)もまた傑作です。
さて、西洋から遠く離れた中国でも、18世紀の中盤に傑作が現れていました。
曹雪芹の「紅楼夢」(⑩)です。この作品もまた、18世紀文学で欠かせません。
と、ざっと振り返ってみたのですが、少し長くなってしまいました。
自分の頭の中にあるイメージであることを、再度おことわりしておきます。
さいごに。(3位でした)
家族応援団の前で初めて走ったマスターズ陸上。結果は3位でした。
力不足だと感じましたが、けがもなく完走できて良かったです。
前回のリストを、国別・年代順に並べ替えました。
(前回 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-2)
① 「ロビンソン・クルーソー」デフォー【英】
② 「ガリヴァ旅行記」スウィフト【英】
③ 「トム・ジョウンズ」フィールディング【英】(品切れ)
④ 「愛と偶然の戯れ」マリヴォー【仏】(品切れ)
⑤ 「マノン・レスコー」アヴェ・プレヴォー【仏】
⑥ 「フィガロの結婚」ボーマルシェ【仏】(品切れ)
⑦ 「若きウェルテルの悩み」ゲーテ【独】
⑧ 「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」ゲーテ【独】(品切れ)
⑨ 「ヴァレンシュタイン」シラー【独】(品切れ)
⑩ 「紅楼夢」曹雪芹【中】(単行本)
18世紀は、近代小説がイギリスで誕生し、大陸へ広まった時代です。
今回は、18世紀文学のイメージを、私なりにまとめてみました。
イギリスは前世紀、1642年に清教徒革命、1688年に名誉革命と、二つの
市民革命を経験した結果、市民階級が大きな勢力を持つようになりました。
やがて議会政治が確立し、市民が政治を論じるようになり、出版が自由化され、
新聞や雑誌など、ジャーナリズムがまたたくまに発展していきました。
18世紀初めには「タトラー」「スペクテイター」等の新聞が発行されました。
ジャーナリストの中には、新聞に自作の文学作品を載せる者も出てきました。
その内容の多くは、市民階級に好まれる現実的な(近代的な)物語でした。
近代小説は、このようにジャーナリズムの発展にともなって誕生しました。
さて、イギリス近代小説の最初期は、似た者同士のこの2人から始まります。
それは、デフォーとスウィフト。二人はもともと政治パンフレット作者でした。
1719年、デフォーは「ロビンソン・クルーソー」(①)を出版しました。
1726年、スウィフトは「ガリヴァ旅行記」(②)を出版しました。
どちらも空想的な冒険を語りながら、その中に社会批判を盛り込んでいます。
特に「ロビンソン・・」の描写は写実的で、近代小説の祖とされています。
そして、次の世代には、人間存在を探求する真に近代的な小説が始まりました。
印刷業者のリチャードソンと、新聞編集長のフィールディングです。
1740年、リチャードソンは書簡小説「パミラ」で小間使の心理を描きました。
1749年、フィールディングは傑作「トム・ジョウンズ」(③)を出版しました。
小説は、分かりやすい散文で面白い物を書こう、という思いから始まりました。
そしてイギリスの小説は、大衆へ広がり、やがて大陸へも広がっていきました。
さて、フランスの小説は 、このようなイギリスの小説の流れを受け継ぎました。
1715年にルイ14世が亡くなり、イギリス文化が流入しやすくなりました。
マリヴォーは、「スペクテイター」を真似た新聞を、いちはやく出しました。
アベ・プレヴォーは、放浪したイギリスの文化を、フランスに紹介しました。
そして、イギリスの自由な社会が紹介され、フランスの社会が批判されました。
が、マリヴォーとプレヴォーは、むしろ文学史の方で大きな足跡を残しました。
1730年、マリヴォーは「愛と偶然の戯れ」(④)で劇作家の地位を確立しました。
1731年、アベ・プレヴォーは官能的な「マノン・レスコー」(⑤)を出版しました。
このころ、フランスのジャーナリズムは、啓蒙思想家によって発展しました。
特にヴォルテールやモンテスキューの果たした役割を、忘れてはいけません。
後期啓蒙思想家のルソーやディドロ作品は、絶対王政の批判を含んでいました。
そしてそれは、やがて革命につながっていきます。
革命の5年前、1784年、ボーマルシャの「フィガロの結婚」(⑥)が出ました。
市民階級の活力を示され、革命へ向かう社会の雰囲気が伝わってきます。
さて啓蒙思想は、フランスでは市民階級に受け入れられました。
ドイツでは、市民階級が発達していなかったため、宮廷で受け入れられます。
ここが面白い。フランスでは市民が啓蒙思想を支持し、宮廷を批判しました。
しかし、ドイツでは宮廷が啓蒙思想を支持し、市民がそれを批判したのです。
ドイツの宮廷では、ヴォルテールが招かれたりします。
また、レッシングが活躍し、演劇で大衆を啓蒙しようとしたりします。
そういう上からの押し付けに反発したのが、若きゲーテやシラーの世代です。
1774年、25歳のゲーテの出した「若きウェルテルの悩み」(⑦)は最重要作品。
ウェルテルは、自己の死によって社会の虚飾を暴いてみせました。
これは世界中で熱狂され、フランス革命やナポレオンにも影響を与えました。
ゲーテ自身は、のちにヴァイマル公国の大臣になり、保守的になりました。
そして、ゲーテはシラーと親交を結び、ともに切磋琢磨し始めました。
1796年の、ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」(⑧)も傑作です。
1798年の、シラーの「ヴァレンシュタイン」(⑨)もまた傑作です。
さて、西洋から遠く離れた中国でも、18世紀の中盤に傑作が現れていました。
曹雪芹の「紅楼夢」(⑩)です。この作品もまた、18世紀文学で欠かせません。
と、ざっと振り返ってみたのですが、少し長くなってしまいました。
自分の頭の中にあるイメージであることを、再度おことわりしておきます。
さいごに。(3位でした)
家族応援団の前で初めて走ったマスターズ陸上。結果は3位でした。
力不足だと感じましたが、けがもなく完走できて良かったです。
こんにちは。harugaです。
「18世紀文学のベスト10」② ←これは凄い!纏め方が分かりやすい。
イギリス、フランス、ドイツ、歴史的背景も気にせず、ただ読んでる居る私にとって、この纏め方は分かりやすい。
また、追記してくださいね。
by haruga (2015-11-06 10:49)
harugaさん、熱心に読んでくださってありがとうございます。
とても励みになっています。
by ike-pyon (2015-11-06 20:42)