すらすら読める方丈記 [日本の古典文学]
「すらすら読める方丈記」 鴨長明著 中野孝次訳 (講談社文庫)
出家遁世した長明が、体験してきた災厄と自身の思想を記した随筆文学です。
「徒然草」「枕草子」と並び、日本三大随筆のひとつです。鎌倉時代に成立。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。・・・」
冒頭のこの名文を、高校の国語の授業で学習した人は、きっと多いことでしょう。
私もその一人。しかし高校時代には、この作品の魅力が全く分かりませんでした。
そりゃ、そうですよ。若さ爆発の時代に、「無常観」を味わえって言ってもねえ。
ところが今、51歳になって読み返してみると、意外なほどに面白いのです。
年を重ねたためか、長明の放つちょっとした言葉に、しびれてしまうのです。
「世にしたがへば、身、くるし。したがはねば、狂せるに似たり。」
「事を知り、世を知れれば、願はず、走らず。
ただ、静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。」
「おほかた、世をのがれ、身を捨てしより、恨みもなく、恐れもなし。
命は天運にまかせて、惜まず、いとはず。身は浮雲になずらへて、頼まず」
そういえば高校時代に、「隠者になりたい」と言っていた友人がいました。
鴨長明のように、田舎に方丈の庵を結んで、自由に生きたいと言うのです。
10年ほど前に陸上部の集まりで再会した時、彼はIT企業で働いていました。
いわく「残業ばかりで自由な時間など無い」 思うようにいかないものです。
さて、本書は中野の訳と補足説明が、「方丈記」の魅力を増幅させています。
訳は分かりやすく「すらすら読め」て、補足説明には長明への愛があります。
特に、第三部と第四部の補足説明は、鴨長明の生涯を愛おし気に語っています。
長明のことがが好きで好きでたまらない人が、書いたんだなあと思いました。
実は私は最初、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスで読みました。
ところが、解説における言い回しに引っかかって、途中でやめてしまいました。
著者は随所で、長明をちくちく批判しています。たとえば、次のような言葉で。
「いかにも苛烈な政権抗争の圏外で、ぬるま湯に浸かって育った長明らしい。」
角川ソフィア文庫版は、図版が多く充実していますが、私には合わなかった。
気になって、アマゾンのレビューを見たら、同じような意見が多かったです。
なお、中野孝次による「すらすら読める」の姉妹編に、「徒然草」もあります。
中野がどのようなコメントをしているか、少し気になります。
また、中野孝次といえば、世捨て人の暮らしを論じた「清貧の思想」でしょう。
バブル崩壊後の1992年に出て、大きな反響を呼び起こしました。再読したい。
さいごに。(走れるようになりました)
昨年の秋に、左ひざの後十字靭帯を損傷し、ずっとリハビリを続けてきました。
ようやく違和感が無くなり、少しずつ走れるようになってきました。
100mは15秒、200mは30秒かかりましたが、走れるようになっただけで有難い。
本を読むことと走ることが、人生における私の大きな楽しみなので。
出家遁世した長明が、体験してきた災厄と自身の思想を記した随筆文学です。
「徒然草」「枕草子」と並び、日本三大随筆のひとつです。鎌倉時代に成立。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。・・・」
冒頭のこの名文を、高校の国語の授業で学習した人は、きっと多いことでしょう。
私もその一人。しかし高校時代には、この作品の魅力が全く分かりませんでした。
そりゃ、そうですよ。若さ爆発の時代に、「無常観」を味わえって言ってもねえ。
ところが今、51歳になって読み返してみると、意外なほどに面白いのです。
年を重ねたためか、長明の放つちょっとした言葉に、しびれてしまうのです。
「世にしたがへば、身、くるし。したがはねば、狂せるに似たり。」
「事を知り、世を知れれば、願はず、走らず。
ただ、静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。」
「おほかた、世をのがれ、身を捨てしより、恨みもなく、恐れもなし。
命は天運にまかせて、惜まず、いとはず。身は浮雲になずらへて、頼まず」
そういえば高校時代に、「隠者になりたい」と言っていた友人がいました。
鴨長明のように、田舎に方丈の庵を結んで、自由に生きたいと言うのです。
10年ほど前に陸上部の集まりで再会した時、彼はIT企業で働いていました。
いわく「残業ばかりで自由な時間など無い」 思うようにいかないものです。
さて、本書は中野の訳と補足説明が、「方丈記」の魅力を増幅させています。
訳は分かりやすく「すらすら読め」て、補足説明には長明への愛があります。
特に、第三部と第四部の補足説明は、鴨長明の生涯を愛おし気に語っています。
長明のことがが好きで好きでたまらない人が、書いたんだなあと思いました。
実は私は最初、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスで読みました。
ところが、解説における言い回しに引っかかって、途中でやめてしまいました。
著者は随所で、長明をちくちく批判しています。たとえば、次のような言葉で。
「いかにも苛烈な政権抗争の圏外で、ぬるま湯に浸かって育った長明らしい。」
角川ソフィア文庫版は、図版が多く充実していますが、私には合わなかった。
気になって、アマゾンのレビューを見たら、同じような意見が多かったです。
なお、中野孝次による「すらすら読める」の姉妹編に、「徒然草」もあります。
中野がどのようなコメントをしているか、少し気になります。
また、中野孝次といえば、世捨て人の暮らしを論じた「清貧の思想」でしょう。
バブル崩壊後の1992年に出て、大きな反響を呼び起こしました。再読したい。
さいごに。(走れるようになりました)
昨年の秋に、左ひざの後十字靭帯を損傷し、ずっとリハビリを続けてきました。
ようやく違和感が無くなり、少しずつ走れるようになってきました。
100mは15秒、200mは30秒かかりましたが、走れるようになっただけで有難い。
本を読むことと走ることが、人生における私の大きな楽しみなので。
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