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平家物語1 [日本の古典文学]

 「平家物語(上)」 尾崎士郎訳 (岩波現代文庫)


 繁栄の極みにあった平家が没落し、合戦によって滅亡するまでを描いた物語です。
 作者は未詳です。琵琶法師によって語られたため、一般大衆にまで広まりました。


現代語訳 平家物語(上) (岩波現代文庫)

現代語訳 平家物語(上) (岩波現代文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 文庫



 岩波現代文庫「平家物語」は、昭和を代表する小説家尾崎士郎による名訳です。
 その上巻には、第1巻から第6巻まで、平家物語の前半が収められています。

 平家の支配、鹿ケ谷の陰謀、安徳天皇即位、以仁王の乱、頼朝挙兵、清盛の死。
 平家が栄華の極みから、清盛の死によって、没落を始めるまでを描いています。

 「平家物語」というと、源氏と平家の戦いの場面の印象がとても強いのですが、
 頼朝が挙兵するのは第5巻に入ってからであって、上巻では全くの脇役です。

 上巻における源氏の顔は源頼政です。源氏の最長老で、70歳を超えていました。
 二度にわたって鵺(ぬえ=妖怪)を撃ち落とした、若き日の活躍は伝説的です。

 頼政はどのように出世したのか? 老いてからどうして謀反をおこしたのか?
 頼政の人生は、なかなか興味深いです。そして哀愁を感じさせます。

 さて、上巻の主役はなんといっても清盛です。まさに、清盛あっての平家です。
 気性が激しく、傲慢でしたが、それだけの実力を持った人間でもありました。

 平家独裁政府を樹立するために、遷都までするところは、並みの人間ではない。
 批判は多いけど、清盛はとても革新的なことを考えていた人なのだと思います。

 だからこそ、彼は生前から、伝説で彩られていました。
 慈慧大僧正の生まれ変わりだとか、実は白河院の御落胤なのだとか。

 清盛はその強烈なキャラクターで、世の中全体をぐいぐい引っ張っていました。
 また、傍若無人な振る舞いによって、清盛の死後、平家は一気に衰退しました。

 平家を栄えさせたのも清盛であり、没落させたのも清盛であったのではないか?
 嫡男の重盛が生きていたら、平家はこんなにも早く亡びることはなかったはず。

 重盛も良い味を出しています。清盛にこんなことを言えるのは重盛だけです。
 「我が一門は、あまりに短時日の内に、この世の栄華富貴を極めすぎた・・・」

 重盛は、平家のバランスをとりながら、清盛の心のバランスもとっていました。
 だから重盛が死んだ後、清盛の行動はどこか病的になっていくのだと思います。

 ところで、平家物語の魅力の一つは、随所で語られるさまざまな人間模様です。
 たとえば、以仁王を逃がした長谷部信連(のぶつら)を、生け捕りにした場面。

 平家の侍たちは、その立派な態度を見て、敵である信連に感心してしまいます。
 「これこそ一騎当千の侍」とか言って、敵である信連を称賛したりして・・・

 さて、林望の現代語訳「謹訳 平家物語」が単行本で出ています。気になります。
 「謹訳 源氏物語」同様、文庫化されることを強く願っています。


謹訳 平家物語 一

謹訳 平家物語 一

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2015/05/01
  • メディア: 単行本



 さいごに。(クリスマスプレゼントはいらない?)

 なんと、娘は「今年のクリスマスのプレゼントはいらない」と言っています。
 感心するというより、怖い感じがします。また、なんとなく寂しいような気も。

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