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貧しき人々 [19世紀ロシア文学]

 「貧しき人々」 ドストエフスキー作 安岡治子訳 (光文社古典新訳文庫)


 中年の小役人と極貧の少女が、心を寄り添って生きる姿を描いた、書簡体小説です。
 批評家ベリンスキーに激賞され、一躍有名となった、ドストのデビュー作です。


貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫



 中年のマカールと少女ワルワーラは、窓から互いの姿が見える近所に住んでいます。
 二人はとても貧しい暮らしをしながら、頻繁に手紙を交わして、慰め合っています。

 ワルワーラの父の没落と死。学生ポクロフスキーとワルワーラの恋と死別・・・
 マカールの友人ゴルシーコフの不幸な死。マカールに突然訪れた悲しい別れ・・・

 悲しみと死に彩られた二人の半生は、往復されることで、不幸が増幅されていきます。
 ワーレンカは言います。「不幸は伝染する病いです」と。どんどん不幸は広がります。

 さて、読んでいて違和感を覚えるのは、マカールのワーレンカに対する愛情です。
 これは父が娘に示す慈愛でしょうか? いえいえ、醜い中年の単なる少女趣味ですよ。

 自分の大好きなワルワーラへ、なけなしの金をはたいて、プレゼントを買ってしまう。
 相手はかえって心を痛めるが、そんなことおかまいなし。つまり、ひとりよがりです。

 「あなたときたら、私の人生を通してのみ生きようとなさっている。」(P203)
 というワルワーラの指摘も、もっともなことだと思います。

 また随所から、少女ワルワーラに溺れるマカールの、悲痛な叫びが聞こえてきます。
 「私のもとから離れて行ったりしないでください。私の愛しい人!」(P263)

 よくも恥ずかしげもなく言えたことよ。マカ―ル自身が、最もアブナイ奴なのかも。
 しかし、そんな見苦しい中年男のなりふり構わぬ姿を、かわいく感じてしまいました。

 マカ―ㇽの不幸は、年甲斐もなく、ワルワーラを心底愛してしまった点にあります。
 その姿は、悲しいというよりどこか滑稽で、滑稽な分、さらに痛々しい。

 ところで、手紙に描かれるエピソードのうち、印象に残るものがいくつかありました。
 特に、貧乏学生ポクロフスキーの父の、我が子に対する愛を描いた部分はすごいです。

 老ポクロフスキーは我が子の誕生日に、ワルワーラと一緒にあるプレゼントを・・・
 我が子の棺を追う父親ときたら・・・こんな悲痛な描写はなかなかありません・・・

 「貧しき人々」をもって、ドストエフスキーの主要な作品は、全て読み終わりました。
 実は、本を購入しておきながら、もったいなくて、なかなか読めなかったのです。

 さいごに。(ライザップに行けってか?)

 このあいだ突然、妻が、「パパ、ライザップに行ったらどう?」と言いました。 
 実はその前日、彼女は友人たちと一緒に、新日本プロレスを見に行ったのです。

 レスラーは皆、体が引き締まっていたとのこと。なるほど、そういうことか。
 ライザップは無理だけど、「ゼロトレ」ぐらいは始めようかな。

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