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真珠夫人 [日本の近代文学]

 「真珠夫人」 菊池寛 (文春文庫)


 男を弄ぶ瑠璃子の奔放な生活と、それと裏腹な純情を描いた、菊池初の通俗小説です。
 1920年に新聞連載されて話題となり、菊池寛をいっきに人気作家に押し上げました。


真珠夫人 (文春文庫)

真珠夫人 (文春文庫)

  • 作者: 菊池 寛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/08/02
  • メディア: 文庫



 ある日渥美の乗ったタクシーが事故を起こし、同乗していた学生が亡くなりました。
 学生は渥美に「時計をるりこに返してくれ」と言い残し、自分のノートを託しました。

 死んだ学生は青木男爵の長男でした。渥美は行きがかり上、葬儀に出席しました。
 そこで、荘田瑠璃子という、妖艶でとても美しい未亡人を知り、その屋敷を訪ねます。

 ノートには何が書かれているのか? 青木と瑠璃子の関係は?
 ミステリー小説のように進むので、すぐに小説の世界に入り込めました。

 瑠璃子はなぜ男を弄ぶようになったのか? 彼女はどのような半生を歩んで来たか?
 瑠璃子の夫はどのように亡くなったのか? そもそもなぜ荘田と結婚したのか?

 「妾は女性としての恋を捨て、優しさを捨て慎ましやかさを捨てて、ただ復讐と膺懲
 のために、狂奔する化物のような人間になろうとしているのです。」(P200)

 悪魔だと思って倒した相手は、死ぬときには人間の姿をしていました。
 逆に瑠璃子自身が、意外にも悪魔に近い存在になっていたのです・・・

 「敵と戦うために、自分自身心に塗った毒は、いつの間にか、心のうち深く侵み入っ
 て消えなかった。」(P300)

 新聞連載当時、瑠璃子の生きざまに対して、多くの共感が寄せられたと言います。
 次のような言葉に表れているように、彼女はただの毒婦ではありません。

 「男性は女性を弄んでよいもの、女性は男性を弄んでは悪いもの、そんな間違った男
 性本位の道徳に、妾は一身を賭しても、反抗したいと思っていますの。」(P406)

 この作品もまた、ただの通俗小説ではありません。社会問題を取り上げています。
 瑠璃子を介して、男性本位の社会を痛烈に批判しています。

 さて、「真珠夫人」の前半は、瑠璃子がいかにして毒婦になったかを描いていました。
 そして後半、妖女となった瑠璃子が、運命の皮肉によってどうなるか・・・

 さいごに。(天気の子)

 娘が、部活の友だちと「天気の子」を見に行って、その内容を教えてくれました。
 驚いたことに、「君の名は」に続いて、オカルト雑誌「ムー」が登場したそうです。

 主人公が最初に従事した仕事が、なんと「ムー」の原稿執筆だったと言います。
 新海誠監督は、「ムー」の愛読者だったと言う。親近感が湧いてしまいました。

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コメント 1

サンフランシスコ人

『天気の子』......来月、サンフランシスコの映画館で上映..

http://www.roxie.com/ai1ec_event/27864/?instance_id=38476
by サンフランシスコ人 (2019-12-24 07:54) 

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