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世界文学の流れをざっくりとつかむ15 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

2 中世イギリス叙事詩(「ベーオウルフ」とアーサー王伝説)

 古代の末期、ローマ帝国は勢力を失い、各地から兵を引き上げました。409年にローマ人がイギリスから撤退すると、デンマークやドイツ北部からアングロ・サクソン人が侵入しました。そのとき彼らは「ベーオウルフ」の伝承を持ち込みました。それは、王家に仕える詩人たちが、ハーブを奏でながら長い時間をかけて口承してきたものでした。

 アングロ・サクソン人は、イギリスに残っていたケルト人を征服して、七王国時代を築きました。そして、8世紀から9世紀に、彼らの言語である古英語で、「ベーオウルフ」を書き残しました。これは、アングロ・サクソン文学の代表作であるばかりではなく、全ヨーロッパの最古の古典でもあります。

 「ベーオウルフ」の前半は、若き英雄ベーオウルフによる怪物グレンデルの退治が描かれ、後半は、老いたベーオウルフによる火竜退治とベーオウルフの死が描かれています。舞台はデンマークであり、民族名に北欧的な性格が認められるため、この話の元型が北欧にあったことが分かります。

 さて、「ベーオウルフ」は、アングロ・サクソン人がイギリスに持ち込んだ物語でした。一方、彼らによって追われたケルト人は、ケルト神話やケルトの叙事詩を大陸へ持ち出しました。その代表的なものが、アーサー王伝説です。

 アーサー王は、ケルト人の間で語り継がれてきた伝説の王で、アングロ・サクソン人を撃退した英雄です。その生涯は、12世紀の「ブリタニア王列史」に記されました。アーサー王伝説は、イギリスから離れたのち、大陸の様々な伝承を吸収していきました。その結果、アーサー王を中心とした伝承のほか、聖杯伝説・円卓の騎士伝説などのキリスト教的な要素が加わり、大きく変容しました。15世紀にトマス・マロリーによって逆輸入されたときは、膨大な物語群となっていました。

 次回は、フランスにおける叙事詩を見ていきたいと思います。

 さいごに。(歴史を変えたラグビー)

 今年の秋は、世界陸上、男女のバレーボールなど、スポーツ観戦が盛りだくさん。
 しかし、なんといってもスゴイのは、日本のラグビーでしょう。

 昨夜のゲームでスコットランドに勝利し、全勝で決勝トーナメントに進みました。
 決勝トーナメントではどんな試合を見せてくれるか。とても楽しみです。

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