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羊と鋼の森 [日本の現代文学]

 「羊と鋼の森」 宮下奈都 (文春文庫)


 ピアノ調律師になりたての青年が、様々な体験を通して成長する姿を描いた物語です。
 2015年の直木賞候補になり、2016年に本屋大賞に輝きました。2018年に映画公開。


羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

  • 作者: 宮下 奈都
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/02/09
  • メディア: 文庫



 外村(とむら)青年は17歳の時、天才調律師の板鳥(いたどり)と出会いました。
 その調律に引き込まれた外村は、「弟子にしていただけませんか」と直訴しました。

 専門学校で2年間学んだあと、板鳥のいる江藤楽器で調律師として働き始めました。
 7年先輩の柳に仕事を教えてもらいながら、ピアノの世界にどっぷりと浸かります。

 「ピアノが、どこかに溶けている美しいものを取り出して耳に届く形にできる奇跡だ
 としたら、僕はよろこんでそのしもべになろう。」(P26)・・・

 この物語を書いた宮下奈都は、本当にピアノが好きな人だと思います。
 随所にピアノへの愛あふれる文章が、散りばめられています。

 「ピアノは一台ずつ顔のある個々の独立した楽器だけど、大本のところでつながって
 いる。(中略)この世界にはありとあらゆるところに音楽が溶けていて個々のピアノ
 がそれを形にする。」(P28)

 主人公の外村の、ピアノに対する純粋さとひたむきさが、とても印象に残りました。
 外村が必死に調律するときの姿勢から、大切なことを教えられたように感じました。

 外村は、目立つ才能を持っているわけではないが、何か特別なものを持っています。
 だからこそ外村は、ピアノの音の中に森を見たり、森の匂いを嗅いだりするのです。

 また、外村を取り巻く人々が良い。近くで支える柳、暖かく見守る板鳥・・・ 
 そして、なんといっても女子高生の双子ちゃん。彼らの数年後が気になります。

 さて、板鳥が「目指す音」について語る場面で、原民喜の文章を引用しています。
 この文章がなかなかいい。原民喜の作品を読んでみたくなりました。

 「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようであるながら、きびし
 く深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」

 さいごに。(100均の湯たんぽ)

 寒くなりました。娘と妻は、夜には電気あんかを使っています。
 私は湯たんぽ派。5年ほど前に100均で買った湯たんぽを、今だに使っています。

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