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楡家の人びと3 [日本の現代文学]

 「楡家の人びと 第三部」 北杜夫 (新潮文庫)


 楡家の人びとが三代にわたって、明治・大正・昭和の激動期を生きてゆく物語です。
 作者の家族がモデルになっています。第三部では世界大戦下の楡家が描かれています。


楡家の人びと 第三部 (新潮文庫)

楡家の人びと 第三部 (新潮文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫



 焼失した楡病院は、院代の勝俣が運営する松原病院を中心に、立ち直っていきます。
 しかし、病院再建がようやく一息ついたころ、太平洋戦争が勃発しました。

 二代目院長徹吉の長男峻一は、医者の見習い途中で徴兵され、仏印へ送られました。
 職員は兵隊にとられ、病院経営は困難になり、周二や藍子は工員として働きました。 

 そして東京空襲によって、松原の楡病院はとうとう焼失してしまい・・・
 基一郎が一代で築き、勝俣や徹吉たちが必死で再建した病院も壊滅し・・・ 

 第三部は、太平洋戦争の場面が多い。特に戦地における俊一の状況が印象的でした。
 もしかしたら北杜夫は、この小説で、戦争の場面を最も描きたかったのではないか。

 三代にわたって生き延びてきた病院が、戦争という不毛な行為によって失われる!
 作者はそんな戦争の、悲惨さ、虚しさ、愚かさを、最も伝えたかったのではないか。

 ところが、この困難な状況の中、ひょうひょうと自分のペースを守る男がいました。
 基一郎の長男、欧州です。ずっと無用の男だった彼が、ここではキラリと光ります。

 「滅多にないほど落第を繰り返し人並みはずれて悠々と送ってきたその人生が、彼に
 この時代には稀有となっていたもの、即ち常識を、残し保有させていたのである。楡
 家の一族のなかで、彼は敗戦思想を抱くことのできた唯一の人物であった。」(P276)

 と、味わい深く描かれている欧州は、生まれて初めて思い切った行動に出て・・・
 こういう予想外の行動に出る人物がいるから、人生は面白い。

 さて、「楡家の人びと」が、三島由紀夫によって激賞されたことは有名です。
 「この小説の出現によって、日本文学は真の市民的な作品をはじめて持ち・・・」

 確かに、登場人物のひとりひとりは、基一郎を除いて平凡な人ばかりです。
 そして、普通の市民をリアルに描いたところに、この小説の価値と魅力があります。

 しかし、そこに物足りなさを感じる人もいるはずです。例えば、私がそうでした。
 登場人物に魅力がないわけではないのだけど、物語の展開が淡々としていて・・・

 昨年夢中で読んだ「風と共に去りぬ」と比べた時、面白さの差は歴然としています。
 突出した人物による、ドラマティックな物語を読みたい人には、期待外れでしょう。

 (もっとはっきり言うと、「楡家の人びと」のストーリーは、つまらなかったです。
  もちろん「風と共に去りぬ」と単純に比較することはできないことは承知ですが。)

 「楡家の人びと」が北杜夫の代表作であることを認めた上で、私からひとこと。
 やっぱり、北杜夫と言ったら、「どくとるマンボウ航海記」ですよ!


どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1965/03/02
  • メディア: 文庫



 さいごに。(新年すぐに学力調査)

 中学生の娘は、新年始まってすぐに、学力調査テストがあります。
 このテストのために、娘は年末年始、毎日過去問を少しずつやっていました。

 中学生って、けっこう忙しいんですね。常に勉強に追いかけられているみたいで。
 もともとビビリな性格のためか、私の中学時代より、たくさん勉強をしています。

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