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アウラ フエンテス短編集 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「アウラ・純な魂 他四編」 フエンテス作 木村榮一訳 (岩波文庫)


 怪奇幻想小説の傑作「アウラ」を含む、カルロス・フエンテスの短編全6編です。
 1995年に岩波文庫から出ました。木村訳は、比較的読みやすいです。


フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)

フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1995/07/17
  • メディア: 文庫



 冒頭の「チャック・モール」は、古代マヤの神像にまつわる不思議な物語です。
 ゴシック小説のように進みますが、途中からユーモア小説のような感じです。

 フィリベルトは、ある日骨董店で、雨の神チャック・モールの神像を買いました。
 その神像に命が芽生えて動き出し、しだいに人間生活に染まっていき・・・

 神像が蘇ったとき、いったい何が起こるか?
 古代マヤの尊い神は、人間社会に何をもたらすのか?

 という興味で読んでいましたが、途中からは、思わず笑ってしまう展開でした。
 最後の場面で、語り手がフィリベルトの家に行ったとき、出てきたのは?!

 最後を飾る「アウラ」は、フエンテスを代表するゴシック小説です。
 映画「雨月物語」や上田秋成の原作から、多くの影響を受けて作られたようです。 

 フェリーペ青年は、高額の報酬につられて、コンスエロ夫人の屋敷を訪ねました。
 60年前に亡くなったリョレンテ将軍の回想録をまとめるように、と依頼されました。

 ただし、住み込みという条件があり、フェリーペはそこから出ることができず・・・
 コンスエロ夫人には、緑色の服を着たアウラという美しい姪がいて・・・

 フェリーペは冥界に迷い込んだのではないか?
 コンスエロ夫人やアウラが行っていた秘儀には、どのような意味があるのか?

 コンスエロ夫人とアウラは、結局どういう関係だったのか?
 フェリーペとリョレンテ将軍は、いったいどういう関係にあったのか?

 物語には謎めいた言葉がちりばめられ、物語は謎めいた展開をします。
 結末もまた謎めいています。いろんな解釈ができて、非常に興味深い作品です。

 「アウラ」と並んでゴシック色が強い作品が、「女王人形」です。
 読み終わったときの、後味の悪さはピカイチですね。背筋が凍りつきます。

 子供の頃に読んだ本の中から、一枚のカードが出てきました。「アミラミアは
 友だちのことを忘れません。ここに書いてある場所へさがしに来てください」

 「僕」は思い出します。14歳の頃、7歳だった彼女といっしょに過ごした日々を。
 29歳になった今、カードに書かれた住所を頼りに、彼女を訪ねますが・・・

 出だしは、幼いころの恋がテーマなのかと思わせます。しかし、この後の展開は!
 彼女の屋敷で見た「女王人形」とは何か? 再訪したとき、「僕」は何を見たか?

 「純な魂」は、近親相姦的な兄妹愛による、悲劇的な物語です。
 最初は、4年ぶりに兄を迎えに行く妹を描いた、牧歌的な作品かと思いました。

 ところが読み進めていくうちに、まったく違う状況であることが分かってきます。
 結末まできて、悲劇の全貌が理解できます。これまたゴシック的な小説でした。

 この短編集は、「アウラ」「チャック・モール」「女王人形」「純な魂」など、
 ゴシック的な、とてもフエンテスらしい小説を収録した短編集となっています。

 しかし、その一方で、どこか中途半端な感じもします。
 というのも、「生命線」「最後の恋」など、長編の一部が含まれているからです。

 この二編に代わるゴシック小説は、無かったのでしょうか。
 この二編が、優れた短編であると認めつつも、やはり他の作品が欲しかったです。

 さいごに。(遠近両用で快調)

 しばらく前から、仕事で遠近両用メガネを使っています。とても便利です。
 いちいちメガネを外さなくても、資料を読むことができる点がすばらしい。

 私は、眼鏡市場で購入しています。遠近にしても追加料金なしというのが嬉しい。
 この店のイチオシは、なんと言っても「ゼログラ」です。掛け心地が抜群です。


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