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アンチクリストの誕生 [20世紀ドイツ文学]

 「アンチクリストの誕生」 レオ・ペルッツ作 垂野創一郎訳 (ちくま文庫)


 20世紀初頭に人気を博したペルッツを代表する、8編の幻想的な中短編小説集です。
 ペルッツは、オーストリアで活躍したユダヤ系作家で、カフカと親交がありました。


アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)

アンチクリストの誕生 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 文庫



 冒頭の「主よ、われを憐れみたまえ」は、暗号解読にまつわる短編小説です。
 物語は二転三転し、結末における言葉は、とてもイミシンで、興味深い作品です。

 人生に絶望していたヴォローシンは、秘密警察に協力するよりも死を選びました。
 しかし死ぬ前に妻に会いに行くことを願い出て、ロストフへの旅を許されました。

 わずか5日間。そのわずか5日間で、ヴォローシンの考えが変わり・・・
 わずか4時間。そのわずか4時間で、ヴォローシンの人生は変わり・・・

 訳者あとがきにおけるこの短編の解説が、とても素晴らしかったです。
 改めて読み直したとき、ヴォローシンの物語が反転して・・・

 本書のタイトル「アンチクリストの誕生」は、作者の代表作ともなった中編です。
 結末で明かされる真実。アンチクリストとは、いったい誰だったのか?

 18世紀の中頃、クリスマス・イブに、靴直し職人の夫婦が男の子を授かりました。
 その夜、靴直しの男は不思議な夢を見ました。3人が赤ん坊の前でひれ伏し・・・

 聖書学に詳しい農夫は、男の夢を解いて言いました。「よくお聞き、靴屋さん。
 あんたが見た三人は、地獄の王たちだ。あんたはアンチクリストの夢を見たんだ」

 男は、アンチクリストである我が子から、世界を救済するために行動を起こし・・・
 しかし妻は、我が子を守るために、ある方法に訴えて・・・

 「月は笑う」も印象的な短編小説です。代々月に祟られてきた一族の物語です。
 その末裔のサラザン男爵は、月への恐怖を克服するため、望遠鏡を使ったが・・・

 「あれは何だ。月が空に現れて、笑っている。灯りのともる窓の奥を覘(のぞ)いて、
 狂ったように笑っている。どういうことだ。月が笑っている。」・・・

 この中短編集で、最も味わい深いのが、「霰弾亭」という中編です。
 最後まで曹長に何があったのか分からないところが、何とも言えない余韻を残します。

 フワステク曹長は、毎夜「霰弾亭」に通い、飲んでは喧嘩をして過ごしていました。
 ところが曹長は、ある美しい女性との過去の思い出から、逃れられないようなのです。

 「人は人と親しくはならない。覚えておけ、いいか。最上の友でさえ隣に立つにすぎな
 い。同じ景色の前でだ。それを友情と呼ぼうが愛とか結婚とか呼ぼうが、同じ額縁にむ
 りやり押し込むことでしかない。」(P183)

 曹長の前に不意に現れたのは、中尉とそして、曹長の写真に写っていた女で・・・
 「いいかお前、だしぬけに己の過去に出くわすほど恐ろしい災難はない。」・・・

 ほか、死ぬ直前に、自分の研究をやり遂げた男の話「夜のない日」や、降霊術を扱った
 「ボタンを押すだけで」など、この本には、不思議な話がいっぱい詰まっています。

 私はペルッツを、ボルヘスに影響を与えた作家だと聞いて、興味を持ちました。
 ちくま文庫からは、長編小説「どこに転がっていくの、林檎ちゃん」も出ています。


どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫)

どこに転がっていくの、林檎ちゃん (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/12/11
  • メディア: 文庫



 さいごに。(タル鶏天)

 久々に家族で丸亀製麺へ行きました。タル鶏天が2年ぶりに復活したためです。
 タル鶏天ぶっかけは、20周年うどん総選挙で、12万票を獲得して圧倒的に1位!

 現在、期間限定で復活しています。相変わらず、めっちゃおいしかったです。
 ぜひ、定番メニューに加えてほしいです。次は赤辛タル鶏天ぶっかけを食べたい。

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