「刺青」ほかフェティシズム小説集・犯罪小説集 [日本の近代文学]
「谷崎潤一郎フェティシズム小説集」 谷崎潤一郎 (集英社文庫)
1910年発表の短編「刺青」は、刺青師が自分の理想とする女に刺青を施す物語です。
永井荷風に激賞されて、のち50年間の活動の原点となった名作です。
腕利きの彫り物師の清吉は、理想の女に己の魂を彫り込むことを宿願としています。
ある日清吉は、十六か七の、美しい器量と魅惑的な足を持つ小娘に出会いました。
清吉は、この娘こそ男を肥やしとする妲己(だっき)のような女だと見抜きました。
清吉は娘を麻酔剤で眠らせ、その背に全生命をかけて女郎蜘蛛の刺青を施しました。
「おれはお前をほんとうの美しい女にするために、刺青の中へおれの魂をうち込んだ
のだ、もう今からは日本中に、お前に優る女はいない。(中略)男という男は、皆な
お前の肥料になるのだ。・・・」(P19)
娘が動き出すと、背中の女郎蜘蛛もまた生けるがごとく動き出し・・・
清吉は、刺青を施すことで、まっさきに娘の肥やしとなったのでした・・・
女郎蜘蛛のメスは、オスの2倍の体を持ち、表面の模様も美しいのだそうです。
この刺青を背負った娘が、今後いかに男を食い物にしていくか、考えると恐ろしい。
わずか14ページ足らずですが、とても印象に残る作品です。
耽美、魔性、足フェチ、マゾ・・・谷崎らしさがすべて盛り込まれています。
さて、谷崎の足フェチを、最も露骨に表現している作品が「富美子の足」でしょう。
61歳の隠居が17歳の富美子の足に執着するさまを、書生の「僕」が描いています。
隠居は妾の富美子を縁台に座らせ、自分は犬の真似をしてその足にじゃれつき・・・
病気でそれができなくなると、「僕」に犬役をやらせて自分はそれを鑑賞して・・・
「お富美や、後生だからお前の足で、私の額の上をしばらくの間踏んでいておくれ。
そうしてくれれば私はもうこのまま死んでも恨みはない。・・・」(P131)
もうひとつ「蘿洞(らどう)先生」もまた、愛すべきヘンタイ野郎を描いています。
新聞記者が、蘿洞先生の家で垣間見た光景は・・・フェチというよりマゾですが。
さて、集英社の谷崎潤一郎シリーズには、もうひとつ「犯罪小説集」があります。
4編収録されていますが、それぞれ違った面白さがありました。
「マゾヒズム小説集」は紹介済み→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2020-11-17
「柳湯の事件」は、湯屋でのぬらぬらした不気味な触覚が忘れられなくなります。
「僕は人を殺したかもしれません」と言って、入って来た青年が語ることは・・・
「白昼鬼語(はくちゅうきご)」は、最後まで結末が分からないミステリーです。
「お前に殺人の光景を見せてやる」と言う園村に連れられ、行ってみると・・・
すべてを吸い尽くす魔性の女と、崇拝する女に命まで捧げてしまおうとする男。
E・A・ポーのデカダンスと、谷崎のマゾが、絶妙に絡み合った作品でした。
しかし私には、谷崎の犯罪小説は、どうも中途半端な感じがしてしまいました。
谷崎の本領はやはり、マゾ小説やフェティ小説で発揮されているように思います。
さいごに。(ドキュメンタリーに昇格)
先日ツタヤに「超ムーの世界R」をレンタルしに行ったところ、今までの棚にない。
店員さんに聞いたところ、「ドキュメンタリー&バラエティ」の棚にありました!
これまでは「お笑い」コーナーにあったので、違和感がありました。
「超ムーの世界R」がドキュメンタリーであると認められて、ちょっと嬉しいです。
1910年発表の短編「刺青」は、刺青師が自分の理想とする女に刺青を施す物語です。
永井荷風に激賞されて、のち50年間の活動の原点となった名作です。
腕利きの彫り物師の清吉は、理想の女に己の魂を彫り込むことを宿願としています。
ある日清吉は、十六か七の、美しい器量と魅惑的な足を持つ小娘に出会いました。
清吉は、この娘こそ男を肥やしとする妲己(だっき)のような女だと見抜きました。
清吉は娘を麻酔剤で眠らせ、その背に全生命をかけて女郎蜘蛛の刺青を施しました。
「おれはお前をほんとうの美しい女にするために、刺青の中へおれの魂をうち込んだ
のだ、もう今からは日本中に、お前に優る女はいない。(中略)男という男は、皆な
お前の肥料になるのだ。・・・」(P19)
娘が動き出すと、背中の女郎蜘蛛もまた生けるがごとく動き出し・・・
清吉は、刺青を施すことで、まっさきに娘の肥やしとなったのでした・・・
女郎蜘蛛のメスは、オスの2倍の体を持ち、表面の模様も美しいのだそうです。
この刺青を背負った娘が、今後いかに男を食い物にしていくか、考えると恐ろしい。
わずか14ページ足らずですが、とても印象に残る作品です。
耽美、魔性、足フェチ、マゾ・・・谷崎らしさがすべて盛り込まれています。
さて、谷崎の足フェチを、最も露骨に表現している作品が「富美子の足」でしょう。
61歳の隠居が17歳の富美子の足に執着するさまを、書生の「僕」が描いています。
隠居は妾の富美子を縁台に座らせ、自分は犬の真似をしてその足にじゃれつき・・・
病気でそれができなくなると、「僕」に犬役をやらせて自分はそれを鑑賞して・・・
「お富美や、後生だからお前の足で、私の額の上をしばらくの間踏んでいておくれ。
そうしてくれれば私はもうこのまま死んでも恨みはない。・・・」(P131)
もうひとつ「蘿洞(らどう)先生」もまた、愛すべきヘンタイ野郎を描いています。
新聞記者が、蘿洞先生の家で垣間見た光景は・・・フェチというよりマゾですが。
さて、集英社の谷崎潤一郎シリーズには、もうひとつ「犯罪小説集」があります。
4編収録されていますが、それぞれ違った面白さがありました。
「マゾヒズム小説集」は紹介済み→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2020-11-17
「柳湯の事件」は、湯屋でのぬらぬらした不気味な触覚が忘れられなくなります。
「僕は人を殺したかもしれません」と言って、入って来た青年が語ることは・・・
「白昼鬼語(はくちゅうきご)」は、最後まで結末が分からないミステリーです。
「お前に殺人の光景を見せてやる」と言う園村に連れられ、行ってみると・・・
すべてを吸い尽くす魔性の女と、崇拝する女に命まで捧げてしまおうとする男。
E・A・ポーのデカダンスと、谷崎のマゾが、絶妙に絡み合った作品でした。
しかし私には、谷崎の犯罪小説は、どうも中途半端な感じがしてしまいました。
谷崎の本領はやはり、マゾ小説やフェティ小説で発揮されているように思います。
さいごに。(ドキュメンタリーに昇格)
先日ツタヤに「超ムーの世界R」をレンタルしに行ったところ、今までの棚にない。
店員さんに聞いたところ、「ドキュメンタリー&バラエティ」の棚にありました!
これまでは「お笑い」コーナーにあったので、違和感がありました。
「超ムーの世界R」がドキュメンタリーであると認められて、ちょっと嬉しいです。
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