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アメリカの悲劇4 [20世紀アメリカ文学]

 「アメリカの悲劇 下巻」 シオドア・ドライザー作 大久保康雄訳 (新潮文庫)


 成り上がりの青年クライドが、上流階級の社交界に憧れたために破滅する物語です。
 最終「第三部」では、クライドの犯罪と逮捕、そして裁判の様子が描かれています。


アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

アメリカの悲劇〈上・下〉 (1978年) (新潮文庫)

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  • メディア: 文庫



 事件(事故?)のあと、クライドは愛するソンドラたちのキャンプに合流しました。
 仲間たちと遊興にふけりながらも、逮捕されるかもしれないと不安でいました。

 そのころ、早くもロバータの水死体は上がり、地元の人々の関心を集めていました。
 検死官のハイトは政治的な思惑もあって、地方検事のメイソンに事件を任せました。

 腕を振るうメイソンらに、クライドは知らず知らず追い詰められていき・・・
 逮捕されたクライドには、敏腕の弁護士であるベルナップとジェフソンが付き・・・

 裁判の行方は? クライドは罪を逃れることができるのか?
 愛の行方は? クライドとソンドラの関係はどうなるのか?

 逃避行の場面こそクライド中心に描かれますが、第三部で主役は交代したようです。
 主役は、地方検事のメイソンと、弁護士のベルナップとジェフソンとなります。

 クライドを逮捕して名声を得たメイソンは、彼を死刑にするために奮闘します。
 そのためには手段を選ばず、クライドを極悪非道の悪人に仕立て上げます。

 クライドを弁護するベルナップとジェフソンは、減刑するために奮闘します。
 そのためには手段を選ばず、まったく別のストーリーを作り上げます。

 メイソンもベルナップも政治的野心を持ちながら、クライドの事件を扱っています。
 敵対する二人は同じ穴のムジナです。自分が選挙で有利となることが第一なのです。

 彼らによって事実は歪められ、真実からどんどん離れて、独り歩きを始めるのです。
 クライドの気持ちはそこに置いていかれ、誰にも理解されることもありません。

 第24章はジェファソンの独壇場だし、第25章はメイソンの独壇場だし・・・
 主役であるはずの「クライド被告」は弱々しく、証言はぼやけていき・・・

 真実なんてどうでもよい。裁判で勝てばそれが真実となる。大事なのは勝つことだ。
 これこそ、訴訟社会の悲劇ではないのか? 「アメリカの悲劇」ではないのか?

 終盤に入ると、まるで「死刑囚最後の日」みたいな物語になります。
 死刑制度に対する批判が見られますが、「アメリカの悲劇」とは死刑制度のことか?

 そして、死刑囚となったクライドに最後に希望を与えたのは意外にも母親で・・・
 クライドが真実を告白した相手は、やはり伝道士のマックミラン氏で・・・

 伝道士の両親から始まった物語は、もう一人の伝道師によって円環が閉じられます。
 神を称え続けた両親に、この上なく大きな悲劇がもたらされたという皮肉な結末!

 さて、「アメリカの悲劇」は上下二巻1300ページですが、まったく飽きません。
 現在は残念ながら絶版ですが、訳はそのままでいいので、新版を出してほしいです。

 さいごに。(パソコンとスマホの間の大きな溝)

 私はパソコン派です。タブレットも、ほぼパソコンのSurfaceを使っています。
 娘の写真を撮ったらHDに保存するし、画像はUSBメモリでやり取りします。

 ところが、スマホ派の妻にUSBを渡してもどうにもならない。icloudに送れと言う。
 icloud? はあ? 結局、「ま、いいか」ということになってしまうのです。

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