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災厄の町2 [20世紀アメリカ文学]

 「災厄の町」 エラリイ・クイーン作 越前敏弥訳 (ハヤカワ文庫)


 ライツヴィルを訪れていたエラリイが、旧家で起きた毒殺事件の謎を解く物語です。
 ハヤカワ文庫版は、2014年に新訳が出ました。とても読みやすかったです。


災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/05
  • メディア: 文庫



 黙秘を続けるジムを置き去りにして、裁判はどんどんジムに不利に進みます。
 いったいジムは何を隠しているのか? なぜ弁護士にさえ心を打ち明けないのか?

 ジムに代わって、毒殺されかけた妻のノーラが、身重にもかかわらず証言台に・・・
 夫を愛し、ひたすら擁護するノーラ。それなのに、かたくなに黙り続けるジム・・・

 そして、最後に証言台に立ったパットの、あっと驚く計略!
 さらに、ジムが最後の最後に取った、とんでもない行動!

 それにしても、真犯人がこの人だったとは! (この人、相当屈折していますよ。)
 また、ジムが沈黙していた理由がこういうわけだったとは!

 ところで、この物語はジムとノーラの物語でした。彼らは消滅する存在です。
 一方で、これはカートとパットの物語でもあります。彼らは再生する存在です。

 消滅と再生は、ライト家の墓所における光景で、象徴的に描かれていました。
 「災厄の町」の評価が高いのは、このような文学性にあるのだと思います。

 「木々があまりにも古いので、くたびれたから横になりたい、埋葬してもらい
 たいと言い出さないのが不思議に感じられるほどだが、木々はひたすら齢を重
 ね、垂れさがりつづけてきた。しかし春はちがった。ひそんでいた生命力によ
 って、硬く黒い肌から緑の髪が生え出し、死などおもしろいジョークだと言わ
 んばかりだった。」(P431)

 どろどろした人間関係を描きながら、最後はすがすがしい余韻があります。
 この作品のファンが多い理由が、とてもよく分かりました。

 さて、本書と似た傾向の作品で、思い出すのは「ウィチャリー家の女」です。
 ロス・マクの代表作ですが、こちらは読んでいてとことん暗くなりました。
 「ウィチャリー家の女」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-30

 さいごに。(五輪で陸上三昧)

 3000SCでは三浦が予選で日本新。決勝で7位入賞。
 走高跳では戸邉が決勝進出。走幅跳では橋岡が決勝で6位入賞。

 女子1500では田中が予選で日本新。10000では廣中が決勝で日本新。
 しかし何といっても楽しみなのは男子4×100です。これだけはライブで見たい!

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