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災厄の町1 [20世紀アメリカ文学]

 「災厄の町」 エラリイ・クイーン作 越前敏弥訳 (ハヤカワ文庫)


 ライツヴィルを訪れていたエラリイが、旧家で起きた毒殺事件の謎を解く物語です。
 エラリイ・クイーンの代表作として、常にトップに挙げられる作品のひとつです。


災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/05
  • メディア: 文庫



 エラリイ・クイーンは、ライツヴィルという田舎町が気に入って滞在していました。
 住居は名門のライト家から借りていました。ライト家には美しい3姉妹がいました。

 その次女ノーラは、3年前の結婚式直前、新郎のジムに失踪されてしまったのです。
 ところがジムが、なぜか突然帰ってきて、ふたりはにわかに結婚式を挙げました。

 あるとき毒物楽の本から、ジムの筆跡の手紙が三通滑り落ちて、ノーラは驚きます。
 そこには、自分が亡くなる日のことが、まるで予告のように書いてあったからです。

 やがてジムの姉ローズマリーが寄宿すると、夫婦間でもめることが多くなりました。
 そして例の手紙の予告通りに、ノーラは砒素を盛られて危うく殺されかけました。

 さらに、ノーラの飲むはずだった酒を、ローズマリーが飲んで死んでしまいました。
 毒を盛る機会があったのはジムだけで、彼には動機もあったため、逮捕されて・・・

 という具合に進みます。状況証拠はすべて、「犯人=ジム」と指し示しています。
 だからこそこの物語では、ジムは絶対に犯人ではないはずです。では真犯人は誰か?

 ところで、ジムの手紙がノーラ殺しを予告しているという点は、不自然ではないか?
 もし本当に殺す気があったら、そんな手紙をわざわざ書くわけがないではないか?

 それを読んだノーラが、身の危険を感じたという展開には、無理がありはしないか?
 しかもエラリイまでがその点を見逃していることに、私はとても引っかかりました。

 さて随所で、新聞報道に踊らされた人々の醜悪な行為が、批判的に描かれています。
 例えば、ジムを妻の毒殺者と信じた民衆が、「血に飢えた蛮人の群れ」となります。

 「町じゅうが敵なのよ。ジムに石を投げて、あたしたちを中傷しつづけている。この
 ライツヴィルがよ、カート! ライト家の者が創りあげたこの町が。」(P296)

 クイーンはまさに、このような状況を指して、「災厄の町」と呼んだようなのです。
 現代の「ネット・リンチ」に通じるものがあります。

 そして裁判中は、町じゅうがジムを死刑にしてやろうと一致団結しているようです。
 この間、真犯人はまったく示唆されません。本当に、真犯人は誰なのでしょうか?

 真実とは関係なく裁判が進んでいくさまは、「アメリカの悲劇」とよく似ています。
 「アメリカの悲劇」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-11
https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-14
https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-17
https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-20

 さいごに(メロンまるごと)

 休日、念願だった「メロンをまるごとひとつ食べる」という夢をかなえました。
 スーパーで1200円ぐらいの小さめのメロンを、独自ルートで500円で購入しました。

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 半分に切って、スプーンですくいながら食べました。
 この日の昼食はこのメロンだけ。とてもおいしくて、充実していました!

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