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ウィチャリー家の女 [20世紀アメリカ文学]

 「ウィチャリー家の女」 ロス・マクドナルド作 小笠原豊樹訳 (ハヤカワ文庫)


 行方不明の少女の捜索をする私立探偵の行動を通し、家庭の闇を描き出した物語です。
 作者はハメットやチャンドラーの後継者。日本ではロスマクとして親しまれています。


ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)

ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/04/01
  • メディア: 文庫



 私立探偵リュウ・アーチャーは、あるとき富豪のウィチャリーから依頼を受けました。
 それは、2か月前から行方不明となっている娘フィービを探し出すことでした。

 わずかな手がかりをもとに聞き込みをして、しだいに人間関係が分かってきます。
 フィービーの恋人のボビー、悪徳不動産屋のメリマン、その仲間のスタンリー。

 そしてどうやらフィービーの母キャサリンが、全てのカギを握っているようなのです。
 彼女に関わるなと言うウィチャリーの言葉を無視し、彼女を見つけて話しますが・・・

 フィービーはどこにいるのか? なぜフィービーは失踪したのか?
 そして、第二第三の殺人が起きます。その裏には、いったいどんな事情があるのか?

 前半は淡々と聞き込みが行われます。スペンサーのような粋なセリフはありません。
 10章までは、まるで退屈な新聞記事を読んでいるようで、私は眠たくなりました。

 ようやく物語が面白くなり出すのが、11章のミセス・スミスに出会った場面からです。
 この辺りから急に物語のテンポが上がって、私はいっきにのめり込みました。

 そして、24章のボビーの証言で話は一転します。私は慌てて11章を読み直しました。
 11章を読み直すという行為は、この小説を読んだ人の「あるある」なのだそうです。

 24章のボビーの話は全体のカギになる部分ですが、私は最初よく分からなかったです。
 死んだ人を生きていると言ったり、生きているはずの人を殺したと言ったり・・・

 このあとも、絡まった糸がほぐれると、また絡まって、なかなか終わりが見えません。
 しかもさらに話は二転三転していきます。終盤の展開は、目がまったく離せません。

 それにしても、この物語でえぐり出された真実は!
 ウィチャリー家の抱える闇の深さに、暗澹たる気持ちになります。

 ところで、最後の方になるとアーチャーは、ようやく気の利いたセリフを吐きます。
 地味ですが、なかなかの名セリフです。

 「この女のひと、いくつ?」/「三十九か、四十です」
 「命とりになった病気は・・・?」/「人生です」(P494)

 「人生というのは、いつまでもつづく勉強だよ。卒業もできないし、学位もとれない。
 だから、せいぜい努力して、退学にならないようにすることだ」(P442)

 さて、絶版ばかりのロスマクですが、傑作「さむけ」はハヤカワ文庫から発売中です。
 また、アーチャーシリーズの第一作「動く標的」は、創元推理文庫から発売中です。


さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/09/01
  • メディア: 文庫



動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)

動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/22
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘をおんぶしたら)

 久々に娘をおんぶしてみたら、あまりにも重たくてびっくりしました。
 体重を聞くと、46キロだと言う。いつのまにかそんなに大きくなっていたのか。

 以前は娘をおんぶして二階まで上がったものでした。
 今ではとてもできません。娘が重くなった以上に、私の体力が衰えてしまって。

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