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ジャン・クリストフ 第3巻 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(一)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行されました。岩波文庫(四分冊)の初訳はなんと1921年です。
 今回紹介する第三巻「青年」までが、岩波文庫の1冊目に収められています。


ジャン・クリストフ 1 (岩波文庫 赤 555-1)

ジャン・クリストフ 1 (岩波文庫 赤 555-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/06/16
  • メディア: 文庫



 父メルキオルが死に、弟たちが家を出て、クリストフと母は小さな家に変えました。
 家主のオイレル家の人々は、16歳で母を養うクリストフに同情を寄せていました。

 オイレル家では、娘のローザとクリストフが、お似合いの夫婦になると考えました。
 しかしクリストフは、同じ間借り人のシングルマザーのザビーネに興味を持ちました。

 ザビーネは怠惰でだらしないくせに、美しいがために多くの人に愛されていました。
 クリストフとザビーネの交流は、オイレル家の人々から顰蹙を買うようになりました。

 あるときザビーネに招待されて、彼女の兄の家に行き、隣の部屋に泊まりました。
 クリストフは、扉ひとつを開ける決心がつかず、何事もなく帰って来たのでした。

 その後、クリストフの演奏旅行中に、ザビーネはあっけなく死んでしまいました。
 クリストフなかなか現実を受け入れられず、いつまでも立ち直れませんでした。

 ところが、たまたま知り合ったアーダという娘と、その夜のうちに関係を持ち・・・
 クリストフはアーダに夢中になりますが、アーダからひどい裏切りにあって・・・

 第三巻「青年」は、ティーンエイジャー時代のクリストフを描いています。
 主にクリストフの恋がテーマとなっているため、読んでいてとても面白いです。

 家主の娘ローザ、子持ちの未亡人ザビーネ、軽薄なアーダと、3人の女が登場します。
 中でも印象に残るのはザビーネです。彼女の死の場面は、ドラマティックでした。

 クリストフが旅行に出る前、ザビーネは珍しく「行かないでください」と言いました。
 このときザビーネは、何か悪い予感がしていたのかもしれません。

 数日後の夜中、クリストフは悪夢で目覚めると、悲しい楽想が頭につきまといました。
 ちょうどそのとき、ザビーネはインフルエンザで死んでしまっていたのです。

 クリストフは初めて愛する者の死を体験し、その悲しみから抜け出せませんでした。
 そして、扉一枚だけを隔てて夜を過ごしたあの農家を眺め、悲しみに浸るのでした。

 ザビーネの思いがけない死は、クリストフの人生における最初の大きな挫折です。
 その直後、クリストフはもうひとつの大きな挫折を経験します。アーダの裏切りです。

 アーダが意外な男と関係を持っていたことを知り、クリストフは酒におぼれて・・・
 転落し始めたクリストフを救い上げるのが、またしても叔父のゴットフリートです。

 この場面がすばらしい。ゴットフリートはたった一言でクリストフを目覚めさせます。
 「今晩は、●●●●●さん。」・・・相変わらず彼の言葉は、クリストフの心に沁みます。

 「できることをしなければいけない・・・我が成し得る程度を。」(P539)
 「英雄というのは、自分にできることをする人だ。」(P538)

 このようにゴットフリートは、神の救いか神の天啓のように、突然物語に登場します。
 そういえば、気になる箇所がありました。クリストフがある夜、幻覚を見る場面です。

 「電光の閃きに、彼は見てとった、闇夜の底に、彼は見てとった―—おのれこそその
 神であった。その神は彼自身のうちにあった。神は室の天井を破り、家の壁を破って
 いた。存在の制限を破壊していた。空を、宇宙を、虚無を、満たしていた。」(P385)

 これは、いったい何なのでしょうか。神の天啓でしょうか。
 クリストフは突然、宇宙との一体感を得たように思えます。
 
 さて、「ジャン・クリストフ」の第一巻から第三巻までを読み終わりました。
 ここまでが、岩波文庫版の(一)です。次回からようやく(二)に入ります。

 さいごに。(影響されやすいヤツ!)

 なかなか登山に行けないうちに、私の登山シューズは経年劣化してしまいました。
 しかし、とよさんの映像を見て、今年こそは登山に行くぞ、と今から思っています。

 夏に必ず4連休をとって、池之平と仙人池を巡りたいです。
 とよさんが使っているのと同じ360度カメラを買って、映像を持って帰りたいです。



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