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ジャン・クリストフ 第2巻 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(一)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全10巻で刊行されました。岩波文庫(四分冊)の初訳はなんと1921年です。
 前回は全10巻中の第1巻「曙」を紹介しました。今回は第二巻「朝」を紹介します。


ジャン・クリストフ 1 (岩波文庫 赤 555-1)

ジャン・クリストフ 1 (岩波文庫 赤 555-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/06/16
  • メディア: 文庫



 大公の御前の演奏会から三年ほどが経ち、クリストフは11歳になりました。
 正式に宮廷音楽団のヴァイオリニストに任命され、自活する糧を得ました。

 やがて一家を援助していた祖父が亡くなり、続いて父が音楽団から追われました。 
 クリストフは14歳にして家長となり、両親と弟2人を支えるため懸命に働きました。

 あるときクリストフは船中で、豪商の子オットー・ディーネルと友達になりました。
 クリストフは、初めてできた友達に夢中になり、ほとんど恋をしているようでした。

 しかし、愛情のこもった手紙を弟から揶揄されて、二人にわだかまりが生じました。
 文通は終わり、オットーは大学に進み、ふたりの友情(愛情?)は終わりました。

 数か月後、枢密顧問官ケリッヒの未亡人が、娘ミンナとともに町に移り住みました。
 夫人の同情を得た彼は温かく迎えられ、ミンナにピアノを教えることになりました。

 クリストフが衝動的にミンナの手にキスしてから、お互いに愛を自覚し始めました。
 やがてその気持ちは熱烈なものになり、ケリッヒ夫人の知るところとなって・・・

 復活祭でワイマールへ旅出つ前、ミンナはクリストフに永遠の愛を誓ったが・・・
 なぜミンナは変わってしまったのか? 旅の間にいったい何があったのか?

 というように第二巻「朝」は、少年時代の男の友情と、男女の愛情を描いています。
 不器用で意地っ張りなクリストフ少年がかわいいです。初恋を応援したくなります。

 ミンナは少し薄情なようですが、お互いまだ子供なので、仕方がないことでしょう。
 ふたりとも恋というものを知ったばかりです。まだ人生これからですし・・・

 さて、クリストフがこの失恋を乗り越えるのは、意外にも父の死によってでした。
 溺死した父の遺体を見て、クリストフは悟りました。ここがとても印象的でした。

 「ミンナも、彼のほこりも、彼の恋愛も、ああ、いかにくだらないものであったか!
 この現実、唯一の現実、死、それに比べては、すべてはいかにつまらないものであっ
 たか! ついにはかなくなり果てるのならば、あんなに苦しみ、あんなに欲求し、あ
 んなにいらだったのも、なんの甲斐があったのだろう。」(P325)

 そしてこの直後、第二巻の末尾には、非常に興味深い場面があります。
 それは「おのれの神の声」を聞く場面で、上記の思いに対する答えとなっています。

 「死すべき汝は死へ行け! 苦しむべき汝は苦しみへ行け! 人は幸福ならんために
 生きてはいない。予が掟を履行せんがために生きているのだ。苦しめ。死ね。しかし
 汝のなるべきものになれ — 一個の人間に。」(P327) 

 どうせ死ぬのなら苦しむのはばからしい、というクリストフに、神は言っています。
 それでも苦しめ、苦しんでから死ね、と。そして自分らしい人生を生きよ、と。

 第一巻は幼年期を、第二巻は少年期を描いていました。
 次の第三巻「青年」では、いよいよ青年期に入ります。楽しみです。

 さいごに。(推しのユーチューバー)

 最近、「とよの山遊び」というユーチューブのチャンネルにはまっています。
 登山の様子を紹介していますが、映像がとても美しく、見ていて癒されます。

 私は最近、仕事でまとまった休みが取れず、もう10年ほど登山に行っていません。
 代わりに「とよさん」の山登りを見て、登山の爽快感を味わっています。



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