SSブログ

ジャン・クリストフ 第4巻 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(二)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行。岩波文庫(二)には、その第四巻と第五巻が収められています。
 今回は、そのうち第四巻「反抗」を紹介します。クリストフは二十歳になりました。


ジャン・クリストフ 2 (岩波文庫 赤 555-2)

ジャン・クリストフ 2 (岩波文庫 赤 555-2)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/07/16
  • メディア: 文庫



 自分を取り戻したクリストフは音楽の道に邁進し、次期の第一楽長と目されました。
 しかし、クリストフの目指す音楽はあまりに新しくて、仲間の理解が得られません。

 しかもクリストフは妥協できない性格で、相容れないものは容赦なく否定しました。
 新聞に激しい持論を展開したため、周囲から反感を持たれ、多くの敵を作りました。

 それでも、クリストフの後ろに大公爵がいる間は、誰もが彼に遠慮をしていました。
 ところが、社会主義新聞に寄稿して宮廷から追われると、人々による復讐が・・・

 第四巻のタイトルは「反抗」ですが、むしろ「転落」とした方がいいかもしれません。
 後ろ盾を失った自分が、いかに孤独で無力であるかを、彼は初めて思い知りました。

 音楽教師となって不本意な日々を過ごし、ようやくできた友人との仲も裂かれます。
 叔父ゴットフリートは亡くなり、母は自分を理解してくれず、人生に行き詰ります。

 そういう苦しい時期だからこそ、75歳のシュルツ老人らとの交流が印象的でした。
 クリストフが来ると聞いて喜び、慌てて仲間を呼び集める老人は子供のようです。

 うっかりクリストフとすれ違って大いに悔しがったり、偶然会えて感激したり・・・
 そして彼は、田舎の平凡な男の歌に、自分の思想が現れていることに驚嘆するのです。

 このわずか一日の交流が、この時期のクリストフの唯一の良い思い出だったでしょう。
 私自身、この場面が読んでいて一番楽しかったです。

 さて、この巻でゴットフリートが死んでしまいますが、その最期の場面は泣けます。
 いかにもゴットフリートらしいエピソードが、心をほっこりさせてくれます。

 ところで、ひとつ気になることがあります。それは、アントアネットのことです。
 はからずも自分のせいで誤解されて、家庭教師を辞めさせられたフランス女性です。

 「二人は二つの彷徨える世界のように、無限の空間の中で一瞬間をそばで過ごした。
 そしておそらく永遠に、無限の世界の中にたがいに遠ざかってしまった。」(P158)

 ところが、クリストフは、また必ず会えると予感しています。
 これだけで終わらない気がします。次の第五巻では、舞台がパリに移りますし。

 さいごに。(pure soul)

 突然、その曲の良さに気づいて、涙が出そうになるほど感動することがあります。
 先日、またそういうことが起こりました。グレイの「pure soul」です。

 これは、人生の岐路に立つ時、自分を支えてくれた親の愛を思い出す、という歌です。
 しみじみと胸に染みる名曲です。これは、おひとりさまカラオケで歌わなければ!



nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。