ジャン・クリストフ 第4巻 [20世紀フランス文学]
「ジャン・クリストフ(二)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)
天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。
原作は全十巻で刊行。岩波文庫(二)には、その第四巻と第五巻が収められています。
今回は、そのうち第四巻「反抗」を紹介します。クリストフは二十歳になりました。
自分を取り戻したクリストフは音楽の道に邁進し、次期の第一楽長と目されました。
しかし、クリストフの目指す音楽はあまりに新しくて、仲間の理解が得られません。
しかもクリストフは妥協できない性格で、相容れないものは容赦なく否定しました。
新聞に激しい持論を展開したため、周囲から反感を持たれ、多くの敵を作りました。
それでも、クリストフの後ろに大公爵がいる間は、誰もが彼に遠慮をしていました。
ところが、社会主義新聞に寄稿して宮廷から追われると、人々による復讐が・・・
第四巻のタイトルは「反抗」ですが、むしろ「転落」とした方がいいかもしれません。
後ろ盾を失った自分が、いかに孤独で無力であるかを、彼は初めて思い知りました。
音楽教師となって不本意な日々を過ごし、ようやくできた友人との仲も裂かれます。
叔父ゴットフリートは亡くなり、母は自分を理解してくれず、人生に行き詰ります。
そういう苦しい時期だからこそ、75歳のシュルツ老人らとの交流が印象的でした。
クリストフが来ると聞いて喜び、慌てて仲間を呼び集める老人は子供のようです。
うっかりクリストフとすれ違って大いに悔しがったり、偶然会えて感激したり・・・
そして彼は、田舎の平凡な男の歌に、自分の思想が現れていることに驚嘆するのです。
このわずか一日の交流が、この時期のクリストフの唯一の良い思い出だったでしょう。
私自身、この場面が読んでいて一番楽しかったです。
さて、この巻でゴットフリートが死んでしまいますが、その最期の場面は泣けます。
いかにもゴットフリートらしいエピソードが、心をほっこりさせてくれます。
ところで、ひとつ気になることがあります。それは、アントアネットのことです。
はからずも自分のせいで誤解されて、家庭教師を辞めさせられたフランス女性です。
「二人は二つの彷徨える世界のように、無限の空間の中で一瞬間をそばで過ごした。
そしておそらく永遠に、無限の世界の中にたがいに遠ざかってしまった。」(P158)
ところが、クリストフは、また必ず会えると予感しています。
これだけで終わらない気がします。次の第五巻では、舞台がパリに移りますし。
さいごに。(pure soul)
突然、その曲の良さに気づいて、涙が出そうになるほど感動することがあります。
先日、またそういうことが起こりました。グレイの「pure soul」です。
これは、人生の岐路に立つ時、自分を支えてくれた親の愛を思い出す、という歌です。
しみじみと胸に染みる名曲です。これは、おひとりさまカラオケで歌わなければ!
天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。
原作は全十巻で刊行。岩波文庫(二)には、その第四巻と第五巻が収められています。
今回は、そのうち第四巻「反抗」を紹介します。クリストフは二十歳になりました。
自分を取り戻したクリストフは音楽の道に邁進し、次期の第一楽長と目されました。
しかし、クリストフの目指す音楽はあまりに新しくて、仲間の理解が得られません。
しかもクリストフは妥協できない性格で、相容れないものは容赦なく否定しました。
新聞に激しい持論を展開したため、周囲から反感を持たれ、多くの敵を作りました。
それでも、クリストフの後ろに大公爵がいる間は、誰もが彼に遠慮をしていました。
ところが、社会主義新聞に寄稿して宮廷から追われると、人々による復讐が・・・
第四巻のタイトルは「反抗」ですが、むしろ「転落」とした方がいいかもしれません。
後ろ盾を失った自分が、いかに孤独で無力であるかを、彼は初めて思い知りました。
音楽教師となって不本意な日々を過ごし、ようやくできた友人との仲も裂かれます。
叔父ゴットフリートは亡くなり、母は自分を理解してくれず、人生に行き詰ります。
そういう苦しい時期だからこそ、75歳のシュルツ老人らとの交流が印象的でした。
クリストフが来ると聞いて喜び、慌てて仲間を呼び集める老人は子供のようです。
うっかりクリストフとすれ違って大いに悔しがったり、偶然会えて感激したり・・・
そして彼は、田舎の平凡な男の歌に、自分の思想が現れていることに驚嘆するのです。
このわずか一日の交流が、この時期のクリストフの唯一の良い思い出だったでしょう。
私自身、この場面が読んでいて一番楽しかったです。
さて、この巻でゴットフリートが死んでしまいますが、その最期の場面は泣けます。
いかにもゴットフリートらしいエピソードが、心をほっこりさせてくれます。
ところで、ひとつ気になることがあります。それは、アントアネットのことです。
はからずも自分のせいで誤解されて、家庭教師を辞めさせられたフランス女性です。
「二人は二つの彷徨える世界のように、無限の空間の中で一瞬間をそばで過ごした。
そしておそらく永遠に、無限の世界の中にたがいに遠ざかってしまった。」(P158)
ところが、クリストフは、また必ず会えると予感しています。
これだけで終わらない気がします。次の第五巻では、舞台がパリに移りますし。
さいごに。(pure soul)
突然、その曲の良さに気づいて、涙が出そうになるほど感動することがあります。
先日、またそういうことが起こりました。グレイの「pure soul」です。
これは、人生の岐路に立つ時、自分を支えてくれた親の愛を思い出す、という歌です。
しみじみと胸に染みる名曲です。これは、おひとりさまカラオケで歌わなければ!
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