万延元年のフットボール1 [日本の現代文学]
「万延元年のフットボール」 大江健三郎 (講談社文芸文庫)
万延元年に先祖が指揮した一揆の100年後、「僕」と弟が故郷で体験した物語です。
1967年刊。ノーベル文学賞の受賞時に、大江健三郎の代表作として挙げられました。
主人公「僕」こと根所蜜三郎は、27歳の既婚者で、子供を養護施設に預けています。
息子が脳に障害を持って生まれたことで蜜三郎は絶望し、妻は酒を飲み始めました。
蜜三郎の唯一の友人は、アメリカから帰国後、精神に異常をきたして自殺しました。
妻とはぎくしゃくし、唯一の友人は亡くなり、蜜三郎は人生に迷っているようです。
そして蜜三郎の弟の鷹四が、突然アメリカでの放浪生活を切り上げて帰国しました。
彼は、「スーパーマーケットの天皇」に、故郷の蔵屋敷を売ろうとしているのです。
蜜三郎は鷹四に誘われて、故郷に帰りました。鷹四を慕う星男と桃子も一緒でした。
根所家はその村の名家でしたが、すでに両親もS兄も妹も亡くなっています。
さて、100年前の万年元年、根所家の曾祖父が屋敷を建てた年に一揆がありました。
一揆を指揮したのが曾祖父の弟で、彼のことは伝説として様々に語られています。
曾祖父の弟のことを、蜜三郎は、曾祖父の手を借りて東京に逃げたと考えています。
鷹四は、一揆を収めようとした曾祖父よって殺された、悲劇の英雄と考えています。
鷹四は、村の若者たちを集めて、フットボールチームを作り、練習に励みました。
それは、100年前に曾祖父の弟が、一揆のために若者組を鍛えたときのようで・・・
現在、半分ほど読みました。「大江ってこんなに面白かったか?」と驚いています。
舞台の窪地の村は、100年前から時間が止まったようで、独特の世界を作っています。
「某民たちの指揮者たる弟は、いまや万年元年の曽祖父の弟と一体化して、倉屋敷に
ひそむ僕と母親と家霊たちを盛んに挑発している。」(P175)
「偏在する『時』。素裸で駆けている鷹四は、曾祖父の弟であり、僕の弟だ。百年間
のすべての瞬間がこの一瞬間にびっしり重なっている。」(P241)
蜜三郎と鷹四が、100年前の曾祖父とその弟に重なります。
曾祖父の弟が一揆を起こしたように、鷹四も青年たちと何かやらかしそうです。
ところで、この物語に独特の雰囲気をもたらしているのが、土俗学的な要素です。
実際に、民俗学の大家である折口信夫の名前や、その仮説なども出てきます。
たとえばこの村では、お盆の時に「御霊(ごりょう)」なるモノが現れます。
それは、他界である森から来て、現世である谷間の村で邪悪をなすモノです。
中でも村で最も敬意を払われている「御霊」が、万年元年の曽祖父の弟なのです。
村人はそれを慰めるために念仏踊りをする、等の説明は折口の論によっています。
また、現在根所家の屋敷を守るのが、6年前から謎の病で大女となったジンです。
彼女は、村の災いを引き受けていると考えられ、村人たちから神聖視されています。
そして、ジンが居着く根所家は、村の魂の根がある所として特別の地位にあります。
その蔵屋敷を、守り抜こうとするジンと、売り払ってしまった蜜三郎と鷹四・・・
いろんなことが複雑に絡み合い、後半のクライマックスに向かって走り出しました。
この村に何が起こるのか? 鷹四は何をやらかすのか? 今後の展開が楽しみです。
さいごに。(我が家がオリックスファンになった理由)
WBC以後、うちのママさんはすっかりオリックスのファンになりました。
特に、宮城大弥(ひろや)投手を推していて、登板すると喜んで中継を見ています。
私も娘も、ママさんがご機嫌でいてくれるのが一番なので、一緒に応援しています。
宮城には登板してほしいし、勝ち投手になってほしい。ママさんのご機嫌のために。
万延元年に先祖が指揮した一揆の100年後、「僕」と弟が故郷で体験した物語です。
1967年刊。ノーベル文学賞の受賞時に、大江健三郎の代表作として挙げられました。
主人公「僕」こと根所蜜三郎は、27歳の既婚者で、子供を養護施設に預けています。
息子が脳に障害を持って生まれたことで蜜三郎は絶望し、妻は酒を飲み始めました。
蜜三郎の唯一の友人は、アメリカから帰国後、精神に異常をきたして自殺しました。
妻とはぎくしゃくし、唯一の友人は亡くなり、蜜三郎は人生に迷っているようです。
そして蜜三郎の弟の鷹四が、突然アメリカでの放浪生活を切り上げて帰国しました。
彼は、「スーパーマーケットの天皇」に、故郷の蔵屋敷を売ろうとしているのです。
蜜三郎は鷹四に誘われて、故郷に帰りました。鷹四を慕う星男と桃子も一緒でした。
根所家はその村の名家でしたが、すでに両親もS兄も妹も亡くなっています。
さて、100年前の万年元年、根所家の曾祖父が屋敷を建てた年に一揆がありました。
一揆を指揮したのが曾祖父の弟で、彼のことは伝説として様々に語られています。
曾祖父の弟のことを、蜜三郎は、曾祖父の手を借りて東京に逃げたと考えています。
鷹四は、一揆を収めようとした曾祖父よって殺された、悲劇の英雄と考えています。
鷹四は、村の若者たちを集めて、フットボールチームを作り、練習に励みました。
それは、100年前に曾祖父の弟が、一揆のために若者組を鍛えたときのようで・・・
現在、半分ほど読みました。「大江ってこんなに面白かったか?」と驚いています。
舞台の窪地の村は、100年前から時間が止まったようで、独特の世界を作っています。
「某民たちの指揮者たる弟は、いまや万年元年の曽祖父の弟と一体化して、倉屋敷に
ひそむ僕と母親と家霊たちを盛んに挑発している。」(P175)
「偏在する『時』。素裸で駆けている鷹四は、曾祖父の弟であり、僕の弟だ。百年間
のすべての瞬間がこの一瞬間にびっしり重なっている。」(P241)
蜜三郎と鷹四が、100年前の曾祖父とその弟に重なります。
曾祖父の弟が一揆を起こしたように、鷹四も青年たちと何かやらかしそうです。
ところで、この物語に独特の雰囲気をもたらしているのが、土俗学的な要素です。
実際に、民俗学の大家である折口信夫の名前や、その仮説なども出てきます。
たとえばこの村では、お盆の時に「御霊(ごりょう)」なるモノが現れます。
それは、他界である森から来て、現世である谷間の村で邪悪をなすモノです。
中でも村で最も敬意を払われている「御霊」が、万年元年の曽祖父の弟なのです。
村人はそれを慰めるために念仏踊りをする、等の説明は折口の論によっています。
また、現在根所家の屋敷を守るのが、6年前から謎の病で大女となったジンです。
彼女は、村の災いを引き受けていると考えられ、村人たちから神聖視されています。
そして、ジンが居着く根所家は、村の魂の根がある所として特別の地位にあります。
その蔵屋敷を、守り抜こうとするジンと、売り払ってしまった蜜三郎と鷹四・・・
いろんなことが複雑に絡み合い、後半のクライマックスに向かって走り出しました。
この村に何が起こるのか? 鷹四は何をやらかすのか? 今後の展開が楽しみです。
さいごに。(我が家がオリックスファンになった理由)
WBC以後、うちのママさんはすっかりオリックスのファンになりました。
特に、宮城大弥(ひろや)投手を推していて、登板すると喜んで中継を見ています。
私も娘も、ママさんがご機嫌でいてくれるのが一番なので、一緒に応援しています。
宮城には登板してほしいし、勝ち投手になってほしい。ママさんのご機嫌のために。
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