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万延元年のフットボール1 [日本の現代文学]

 「万延元年のフットボール」 大江健三郎 (講談社文芸文庫)


 万延元年に先祖が指揮した一揆の100年後、「僕」と弟が故郷で体験した物語です。
 1967年刊。ノーベル文学賞の受賞時に、大江健三郎の代表作として挙げられました。


万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1988/04/04
  • メディア: 文庫



 主人公「僕」こと根所蜜三郎は、27歳の既婚者で、子供を養護施設に預けています。
 息子が脳に障害を持って生まれたことで蜜三郎は絶望し、妻は酒を飲み始めました。

 蜜三郎の唯一の友人は、アメリカから帰国後、精神に異常をきたして自殺しました。
 妻とはぎくしゃくし、唯一の友人は亡くなり、蜜三郎は人生に迷っているようです。

 そして蜜三郎の弟の鷹四が、突然アメリカでの放浪生活を切り上げて帰国しました。
 彼は、「スーパーマーケットの天皇」に、故郷の蔵屋敷を売ろうとしているのです。

 蜜三郎は鷹四に誘われて、故郷に帰りました。鷹四を慕う星男と桃子も一緒でした。
 根所家はその村の名家でしたが、すでに両親もS兄も妹も亡くなっています。

 さて、100年前の万年元年、根所家の曾祖父が屋敷を建てた年に一揆がありました。
 一揆を指揮したのが曾祖父の弟で、彼のことは伝説として様々に語られています。

 曾祖父の弟のことを、蜜三郎は、曾祖父の手を借りて東京に逃げたと考えています。
 鷹四は、一揆を収めようとした曾祖父よって殺された、悲劇の英雄と考えています。

 鷹四は、村の若者たちを集めて、フットボールチームを作り、練習に励みました。
 それは、100年前に曾祖父の弟が、一揆のために若者組を鍛えたときのようで・・・

 現在、半分ほど読みました。「大江ってこんなに面白かったか?」と驚いています。
 舞台の窪地の村は、100年前から時間が止まったようで、独特の世界を作っています。

 「某民たちの指揮者たる弟は、いまや万年元年の曽祖父の弟と一体化して、倉屋敷に
 ひそむ僕と母親と家霊たちを盛んに挑発している。」(P175)

 「偏在する『時』。素裸で駆けている鷹四は、曾祖父の弟であり、僕の弟だ。百年間
 のすべての瞬間がこの一瞬間にびっしり重なっている。」(P241)

 蜜三郎と鷹四が、100年前の曾祖父とその弟に重なります。
 曾祖父の弟が一揆を起こしたように、鷹四も青年たちと何かやらかしそうです。

 ところで、この物語に独特の雰囲気をもたらしているのが、土俗学的な要素です。
 実際に、民俗学の大家である折口信夫の名前や、その仮説なども出てきます。

 たとえばこの村では、お盆の時に「御霊(ごりょう)」なるモノが現れます。
 それは、他界である森から来て、現世である谷間の村で邪悪をなすモノです。

 中でも村で最も敬意を払われている「御霊」が、万年元年の曽祖父の弟なのです。
 村人はそれを慰めるために念仏踊りをする、等の説明は折口の論によっています。

 また、現在根所家の屋敷を守るのが、6年前から謎の病で大女となったジンです。
 彼女は、村の災いを引き受けていると考えられ、村人たちから神聖視されています。

 そして、ジンが居着く根所家は、村の魂の根がある所として特別の地位にあります。
 その蔵屋敷を、守り抜こうとするジンと、売り払ってしまった蜜三郎と鷹四・・・

 いろんなことが複雑に絡み合い、後半のクライマックスに向かって走り出しました。
 この村に何が起こるのか? 鷹四は何をやらかすのか? 今後の展開が楽しみです。

 さいごに。(我が家がオリックスファンになった理由)

 WBC以後、うちのママさんはすっかりオリックスのファンになりました。
 特に、宮城大弥(ひろや)投手を推していて、登板すると喜んで中継を見ています。

 私も娘も、ママさんがご機嫌でいてくれるのが一番なので、一緒に応援しています。
 宮城には登板してほしいし、勝ち投手になってほしい。ママさんのご機嫌のために。

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