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ジャン・クリストフ6 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(三)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行。岩波文庫(三)には、第六巻から第八巻が収められています。
 ここから物語の後半です。今回は、第六巻「アントアネット」を紹介します。


ジャン・クリストフ 3 (岩波文庫 赤 555-3)

ジャン・クリストフ 3 (岩波文庫 赤 555-3)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/08/18
  • メディア: 文庫



 姉のアントアネットと5歳下の弟オリヴィエは、有名な銀行家の家に生まれました。
 彼らジャンナン家は裕福で、ふたりは何不自由のない子供時代を過ごしました。

 ところが父が、怪しげな投機で失敗して破産し、拳銃自殺をしてしまったのです。
 ジャンナン家は一気に没落し、寡婦と孤児たちは逃げるようにパリに出てきました。

 しかしジャンナン夫人は、パリで豊かに暮らす姉にも、受け入れられませんでした。
 そして夫人は失意のうちに頓死し、アントアネットとオリヴィエが残されて・・・ 

 第六巻「アントアネット」は、タイトル通り、アントアネットが主人公です。
 クリストフはほとんど出てきません。登場するのはやっと100ページになってから。

 またこの巻は、140ページほどしかありません。それでいてとても味わい深いです。
 アントアネットが、オリヴィエのために懸命に生きていく姿が、実に切ないです。

 そして、薄幸のアントアネットとクリストフの人生が、ほんの一瞬だけ交差します。
 その出会いは運命と言うべきでしょう。しかし、幸せだったのか、不幸だったのか?

 また、アントアネットの列車と、クリストフの列車が、偶然すれ違う場面ときたら!
 ロマン・ロランは、この場面をドラマティックに印象的に描いています。

 「すべては過ぎ去る、言葉や接吻や恋しい肉体の抱擁などの種々の思い出は。しかし
 ながら、数多(あまた)の一時の形象の間で、一度触れ合ってたがいに認める魂と魂
 の接触は、けっして消え失せるものではない。」(P102)

 「魂と魂の接触」です。私はふたりの魂が、再び出会うという展開を予想しました。
 ところが、パリの街でようやくお互いを認めたのに・・・こういう宿命だったとは!

 そして、クリストフはアントアネットと再会する代わりに、誰と出会ったのか?
 しかし、これはある意味、アントアネットとの間接的な再会ではないのか?

 物語は後半に入りましたが、まったくだれません。
 私にとって第六巻は、涙なしに読めない巻でした。

 ほかにも、多くの印象的な場面がありました。たとえば、父の自殺の前夜の場面、
 アントアネットが脅迫者を退ける場面、オリヴィエが姉の手紙を発見する場面・・・

 第七巻では、クリストフとオリヴィエの共同生活が始まります。次も楽しみです。
 ただし、年度初めはいつもそうですが、なかなか本を読む時間が取れなくて・・・

 さいごに。(やけくそカラオケ)

 土曜日は休日出勤して、仕事をある程度終わらせました。
 土曜日に仕事を持ち帰らなかったので、日曜日は久々の完全な休みとなりました。

 カラオケに行って、まるでこの忙しさに復讐するかのように歌いました。
 「自由になりたくないかーい? 熱くなりたくないかーい?・・・」(尾崎豊)

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