万延元年のフットボール2 [日本の現代文学]
「万延元年のフットボール」 大江健三郎 (講談社文芸文庫)
万延元年に先祖が指揮した一揆の100年後、「僕」と弟が故郷で体験した物語です。
1967年刊。ノーベル文学賞の受賞時に、大江健三郎の代表作として挙げられました。
正月の前から雪が降り始めて、窪地の村は外界との交通が閉ざされました。
元旦の午後、スーパーマーケットから歓声が聞こえました。略奪が始まったのです。
スーパーマーケットの支配人は、フットボールチームの若者たちに軟禁されました。
指揮していたのは弟の鷹四ですが、蜜三郎にはすでに鷹四の没落が見えていました。
鷹四は言います。百年前の先祖たちの一揆を、この村に呼び戻して再現したい、と。
蜜三郎は思いました。鷹四は、一緒に暮らしていた妹が自殺してから変わった、と。
略奪が続く中で、鷹四が蜜三郎の妻と関係を持つようになったことが分かりました。
ところが、鷹四はある事件を起こし、フットボールチームから見捨てられて・・・
「鷹、おまえは気狂いの人殺しだ」
「おれははじめて蜜に、正当に理解されたという気がするよ」(P381)
鷹四が事件を起こしたことを信じない蜜三郎。鷹四は本当にそんなことをしたのか?
鷹四は自ら進んで犠牲になるつもりではないのか? 100年前の曽祖父の弟のように。
鷹四は、曽祖父の弟の生まれ変わりとなり、自分も「御霊」になりたかったのか?
最後に鷹四が告白した「本当のこと」とは? 鷹四と妹のあいだにどんな秘密が?
終盤の怒涛の展開! 驚きの連続です。手に持った本が、なかなか置けません。
失礼ながら今回も言ってしまいます。「大江の作品って、こんなに面白かったか?」
ところで、舞台となる閉ざされた村で、唯一異質な存在がスーパーマーケットです。
この村を支配しているのが、「スーパーマーケットの天皇」と呼ばれる朝鮮人です。
ほとんど謎の存在だった「天皇」は、暴動が終わった時点で初めて顔を出しました。
そのとき、根所家の守り神の大女ジンは、やせ細って死にそうになっていました。
新支配者の登場と、旧支配者の退場が、とても象徴的に描かれていてうまいです。
また、「天皇」によって図らずも、100年前の謎が解明されるという展開も面白い。
そして、100年を超えた根所蜜三郎たちの時代は終わり、新しい時代が始まります。
と同時に、蜜三郎と妻の関係は・・・これは夫婦の再生の物語でもあったのか!
本書「万延元年のフットボール」は、もっと読まれてもいい作品だと思いました。
難点はタイトルが分かりにくい点。誰だってサッカーの話だと思いますよね。
難点の二つ目は、講談社文芸文庫で2000円オーバーという価格。少しお高いです。
絶版にしないのは有難いのですが、せめて1200円くらいにならないでしょうか。
大江健三郎は、若いころ一時期ハマりました。手元に本は残っていません。
常に適正価格を貫く新潮文庫の作品を、何冊か買い直してもう一度読みたいです。
さいごに。(いまだに続く父の支配?)
私が小学生の頃、ジャイアンツファンの父が、いつも野球の中継を見ていました。
だから私は、いやでも野球のルールや観戦の仕方を覚えてしまいました。
観戦中の妻の横で、差し出がましくならない程度に教えてあげると、喜んでくれます。
ただし、巨人だけが正義である、という父の価値観からはなかなか脱却できず・・・
万延元年に先祖が指揮した一揆の100年後、「僕」と弟が故郷で体験した物語です。
1967年刊。ノーベル文学賞の受賞時に、大江健三郎の代表作として挙げられました。
正月の前から雪が降り始めて、窪地の村は外界との交通が閉ざされました。
元旦の午後、スーパーマーケットから歓声が聞こえました。略奪が始まったのです。
スーパーマーケットの支配人は、フットボールチームの若者たちに軟禁されました。
指揮していたのは弟の鷹四ですが、蜜三郎にはすでに鷹四の没落が見えていました。
鷹四は言います。百年前の先祖たちの一揆を、この村に呼び戻して再現したい、と。
蜜三郎は思いました。鷹四は、一緒に暮らしていた妹が自殺してから変わった、と。
略奪が続く中で、鷹四が蜜三郎の妻と関係を持つようになったことが分かりました。
ところが、鷹四はある事件を起こし、フットボールチームから見捨てられて・・・
「鷹、おまえは気狂いの人殺しだ」
「おれははじめて蜜に、正当に理解されたという気がするよ」(P381)
鷹四が事件を起こしたことを信じない蜜三郎。鷹四は本当にそんなことをしたのか?
鷹四は自ら進んで犠牲になるつもりではないのか? 100年前の曽祖父の弟のように。
鷹四は、曽祖父の弟の生まれ変わりとなり、自分も「御霊」になりたかったのか?
最後に鷹四が告白した「本当のこと」とは? 鷹四と妹のあいだにどんな秘密が?
終盤の怒涛の展開! 驚きの連続です。手に持った本が、なかなか置けません。
失礼ながら今回も言ってしまいます。「大江の作品って、こんなに面白かったか?」
ところで、舞台となる閉ざされた村で、唯一異質な存在がスーパーマーケットです。
この村を支配しているのが、「スーパーマーケットの天皇」と呼ばれる朝鮮人です。
ほとんど謎の存在だった「天皇」は、暴動が終わった時点で初めて顔を出しました。
そのとき、根所家の守り神の大女ジンは、やせ細って死にそうになっていました。
新支配者の登場と、旧支配者の退場が、とても象徴的に描かれていてうまいです。
また、「天皇」によって図らずも、100年前の謎が解明されるという展開も面白い。
そして、100年を超えた根所蜜三郎たちの時代は終わり、新しい時代が始まります。
と同時に、蜜三郎と妻の関係は・・・これは夫婦の再生の物語でもあったのか!
本書「万延元年のフットボール」は、もっと読まれてもいい作品だと思いました。
難点はタイトルが分かりにくい点。誰だってサッカーの話だと思いますよね。
難点の二つ目は、講談社文芸文庫で2000円オーバーという価格。少しお高いです。
絶版にしないのは有難いのですが、せめて1200円くらいにならないでしょうか。
大江健三郎は、若いころ一時期ハマりました。手元に本は残っていません。
常に適正価格を貫く新潮文庫の作品を、何冊か買い直してもう一度読みたいです。
さいごに。(いまだに続く父の支配?)
私が小学生の頃、ジャイアンツファンの父が、いつも野球の中継を見ていました。
だから私は、いやでも野球のルールや観戦の仕方を覚えてしまいました。
観戦中の妻の横で、差し出がましくならない程度に教えてあげると、喜んでくれます。
ただし、巨人だけが正義である、という父の価値観からはなかなか脱却できず・・・
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