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ジャン・クリストフ9 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(四)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行。岩波文庫(四)には、第九巻と第十巻が収められています。
 今回は、第九巻「燃ゆる荊」です。物語の舞台がパリからスイスに移ります。


ジャン・クリストフ 4 (岩波文庫 赤 555-4)

ジャン・クリストフ 4 (岩波文庫 赤 555-4)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/09/16
  • メディア: 文庫



 オリヴィエはある日、顔見知りの一家が、貧困のあまり心中したことを知りました。
 オリヴィエは社会問題に関心を抱き始め、労働者階級と付き合うようになりました。

 4月に、オリヴィエは流行性感冒で寝込み、クリストフに弱気な言葉を吐きました。
 「僕は、君のこれから送る生涯を、少しも見ないで終わってしまうだろう」と。

 5月1日のメーデーの日、クリストフはオリヴィエと一緒に街を散歩しました。
 熱情のはけ口を探す群衆と、警官や兵士たちの間に、不穏な空気が流れていました。

 騒動の中、子供を助けようとしたオリヴィエに、どこからか剣先が向かって・・・
 クリストフもまた巻き込まれ、警官と争ううちに相手を刺してしまい・・・

 という具合に、またもクリストフの運命は、意図せずして大きく転換していきます。
 クリストフはスイスへ・・・その宿でオリヴィエの到着を待つシーンは名場面です。

 「突然、扉を開ける音が聞こえた。なんとも言えぬある感情のために、彼は初め振り
 向かなかった。一つの手が肩にのせられるのを感じた。そこで振り向いてみると、オ
 リヴィエが微笑んで立っていた。彼は別に驚かなかった。そして言った。
 『ああ、とうとう来たね!』
  その幻影は消えた・・・。」(P117)

 その後クリストフは、知り合いの医者エーリッヒ・ブラウンの世話になりました。
 あるときクリストフが作った歌曲を、ブラウンの妻のアンナが情熱的に歌いました。

 アンナはどんな行動に出るのか? クリストフとアンナはどんな約束をするのか?
 第9巻も目が離せません。まさかスイスで、こんな展開が待っていようとは!

 しかし、それ以上に衝撃的だったのは、「復活」の場面でした。
 「復活を待つ」と言う狂人に驚愕し、森を歩くうちにクリストフは変容しました。

 「クリストフはそこから出て、砕かれ、焼かれ、十年も老けていた—しかし救われ
 ていた。彼はクリストフを打ち捨てて、神の中に移り住んだのだった。」(P254)

 ここは理解しがたい場面ですが、それゆえに魅力的です。
 天才は、ときにこういう超越的な神秘体験をするものです。

 さて、次はいよいよ最終巻の第十巻です。
 ここまで少しずつ少しずつ読んできました。名残惜しい気がします。

 さいごに。(電動アシスト)

 先日、娘に電動アシストの自転車を借りたら、あまりにも快適なので驚きました。
 わが家へ向かう上り坂を、一度も自転車を降りずに、登りきることができました。

 ちなみに、うちの最長老である私の自転車は、娘の中学時代のお古です。
 娘には、高校入学と同時に、娘に言われるがまま、電動アシストを買いました。

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