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ジャン・クリストフ10 [20世紀フランス文学]

 「ジャン・クリストフ(四)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行。岩波文庫(四)には、第九巻と第十巻が収められています。
 今回は、最終巻の第十巻「新しき日」を紹介します。


ジャン・クリストフ 4 (岩波文庫 赤 555-4)

ジャン・クリストフ 4 (岩波文庫 赤 555-4)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/09/16
  • メディア: 文庫



 クリストフは、隠棲していた10年ほどの間に、すっかり年をとってしまいました。
 同時にその間、クリストフの初期の作品群が認められ、大家として名を成しました。

 あるときクリストフはスイスで、未亡人となったグラチアと、偶然再会しました。
 ふたりはローマで落ち合い、お互いに愛情を抱きながら、交流を深めていきました。

 それ以上の関係を求めるクリストフに対して、グラチアは友達でいようと言います。
 「共同の日常生活では、もっとも純血なものもついには汚れてしまいますから」と。

 クリストフはパリの音楽会に呼ばれましたが、グラチアから離れがたい思いでした。
 しかしグラチアからフランス行きを勧められて、悲しい気持ちでパリに赴きました。

 クリストフはパリで成功したものの、浮薄な民衆にうんざりし、自身は孤独でした。
 それでも、グラチアに芸術活動を続けるよう諭されて、その決心を固めました。

 クリストフは、本屋で何気なく手に取った詩集に、心を打たれ引きつけられました。
 というのも、彼はその詩集の中から、オリヴィエの声を聞き取ったからなのです。

 その詩人の家を探して訪れてみると、そこにいたのは、かつて知っていた・・・
 詩人は言いました。「あの人だとおわかりになったのですね。」・・・

 この、詩の中の言葉からオリヴィエの声を聞き取った場面は、本当に美しいです。
 ある意味、これはオリヴィエとの再会です。彼は、ある意味死んではいないのです。

 詩人は、オリヴィエが自分よりもクリストフの方を多く愛していた、と言いました。
 そのあとのクリストフが彼に言った言葉が、すばらしいです。

 「ほんとうに愛する者は、より多くとかより少なくとかいうことを知るものではな
 い。自分の愛する人たちすべてに自分の全部を与えるものだ。」(P345)

 さて、このあとクリストフを訪れた14歳の美しい少年は誰だったのか?
 子供を伴ってパリを訪れたグラチア。クリストフと彼女との愛はいかに?

 これで「ジャン・クリストフ」が終わりました。岩波文庫全4巻、計2000ページ。
 活字が小さくて、ページにびっしりと埋まっているので、やや読みにくかったです。

 豊島訳の初訳は1921年。古いので分かりにくくて、私は時速50ページほどでした。
 古典新訳文庫あたりで、新訳を出してもらえないだろうか・・・

 さいごに。(ご冗談でしょう)

 チャットGPTで「ジャン・クリストフ」のあらすじを聞いてみました。
 ところが、「知りません」と答えるのです。そんなバカな!

 さらに聞くと、「ジャン・クリストフという名の船乗りがいて・・・」とのこと。
 さすがチャットGPT。知らないことでもあたかも知っているように答える。

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