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自由への道2 [20世紀フランス文学]

 「自由への道(二)」 J・P・サルトル作 海老坂武・澤田直訳 (岩波文庫)


 自由であることにこだわる哲学教師マチウを主人公とした、半自伝的長編小説です。
 第一部「分別ざかり」と第二部「猶予」は、大戦直後の1945年に刊行されました。

 本書は四部構成です。岩波文庫では、六冊に分けて収録しています。
 今回はその二冊目です。第一部「分別ざかり」の後半部について紹介します。


自由への道〈2〉 (岩波文庫)

自由への道〈2〉 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/09/16
  • メディア: 文庫



 ダニエルは夜、マチウの恋人マルセルの家にやって、彼女に直接尋ねました。
 自分はあなたを助けられるが、あなたは本当は子どもが欲しいのではないのか、と。

 彼の心のこもった言葉に、マルセルは思わず「子がほしい」と本音をもらしました。
 ふたりの間には、愛よりも強い何かがあり、ひとつになったように感じていました。

 その頃マチウは、ローラが踊っている店で、イヴィックとボリスと飲んでいました。
 マチウに金ができるあてはなく、自分がまったく自由でないことを痛感しました。

 「おれの自由なんて、ただの神話だ。(中略)おれの人生は機械みたいに正確にその
 下で作られている。つまらぬものだ、何者でもありたくないという、つねに今の自分
 とは別でありたいという、高慢で陰気な夢。」(P169)

 ところがマチウは突然「自由」をかいま見るのです。「マルセルを捨てる」という。
 しかし、そうする勇気もなく、「マルセルと結婚するしかない」と考え始めて・・・

 マチウは金を作るために、つまり「自由」を守るために、どんな行動に出るのか?
 ダニエルは、「何もかも片のつく手」があると言うが、それはどんな手なのか?

 さて、二冊目に入って、マチウという男は、ますます愚かで滑稽に見えてきました。
 そして、マチウの「自由」は、実にあっけなく崩壊してしまいます。

 マルセルが妊娠したので、彼女から離れたくとも離れられません。
 イヴィックが落第したので、彼女と離れがたくとも離れなければなりません。

 マチウは高尚な生き方でもしているかのように、「自由、自由」と言っていました。
 だけど、女二人を身近に置くこの心地よい状態を、永遠に続けたいだけなのでは?

 そう、マチウの「自由」は、ただの幻想でした。最後にようやく彼は気づきました。
 そして自分を何度も下司野郎と呼びます。この場面のマチウは、ちょっとかわいい。

 ところで、ダニエルの行動には驚きました。終盤の展開はすばらしい。
 第一部「分別ざかり」は、これだけで優れた長編小説と言って良いと思いました。

 さいごに。(ごはん少なめのはずが)

 おなか回りの脂肪を落とすため、最近、夕飯のごはんの量を少なめにしています。
 ところが、そうすると少しもの足りないので、そのあとお菓子を食べてしまい・・・

 これじゃ意味ないじゃん、と妻にも娘にもツッコミを入れられています。
 確かに、お菓子を食べるぐらいなら、ごはんを多めにした方がいいかもしれません。

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