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説得 [19世紀イギリス文学]

 「説得」 ジェイン・オースティン作 中野康司訳 (ちくま文庫)


 周りに「説得」されて婚約を解消したアンが、8年後に元恋人と再会する物語です。
 1818年に刊行された最後の長編小説です。「説きふせられて」の題でも出ています。


説得 (ちくま文庫 お 42-7)

説得 (ちくま文庫 お 42-7)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/11/10
  • メディア: 文庫



 ウォルター・エリオットは虚栄心の塊で、准男爵であることを鼻にかけています。
 13年前に妻が亡くなってからは、大きな屋敷で贅沢三昧の暮らしを続けてきました。

 エリオット家には3人の娘がいて、29歳の長女エリザベスが切り盛りをしています。
 27歳の次女アンがこの物語の主人公です。3女のメアリーはすでに結婚しています。

 さて、贅沢に慣れた一家は毎年借金を重ね、生活様式を変える必要に迫られました。
 エリオット家はこれまでの屋敷を他人に貸して、バースに引き込むことにしました。

 そして彼らの屋敷を借りることになったのは、海軍で活躍したクロフト提督でした。
 その妻には弟がいました。それがウェントワース大佐だと知ってアンは驚きました。

 ウェントワースは、以前アンが周りに説得されて婚約を解消した相手だったのです。
 当時23歳の彼はまだ財産がなくて、准男爵家には不釣り合いだと考えられたのです。

 しかし、この8年間にウェントワースは手柄を立て、相当な財産を築いていました。
 彼は今も、アンを許していないようでした。一方アンは今では、後悔していました。

 「あのときの自分と同じような状況に立たされた若い娘が、もしいま自分に助言を求
 めてきたら、アンは、あのような不確実な将来の幸福のために、あのような絶対確実
 な不幸を選ぶような助言は絶対に与えないだろう。」(P50)

 アンが妹メアリーの嫁いだマスグローヴ家にいるとき、ウェントワースが来て・・・
 ウェントワースはマスグローヴ家の娘たちと仲良くなり、屋敷に通うように・・・

 読んでいるうちに、しだいに穏やかで優しい気持ちになっていきます。
 それもみな、主人公アンの良識と思いやりによるものでしょう。

 アンには早く幸せになってほしい。早くウェントワースとよりを戻してほしい。
 しかし、ふたりの関係は遅々として進みません。展開が遅くてじれったくなります。

 やや退屈な中盤をなんとか持ちこたえさせているのが、怪しげな〇〇〇〇〇氏です。
 なぜ急に態度を改め交際を求めてきたのか? こういう悪党が物語を面白くします。

 第21章で氏の正体が明かされてから、物語はテンポが良くなりいっきにラストへ。
 かつて〇〇〇〇〇氏は、何を企んだのか? そして今彼は、何を企んでいるのか?

 そして、アンの控えめだがしっかりした態度が、幸せを呼び寄せます。
 ウェントワースとのほんのちょっとした会話が、ふたりの運命を変えるのです。

 「でも時が経てばいろいろ変わるでしょう」
 「いいえ、私はそんなに変わっていませんわ」
 「ずいぶん昔の話です! 八年半といえば一昔前です!」(P373)

 良い人と悪い人が明確に分けられているため、展開も文章も分かりやすかったです。
 アンが絶対幸せになって終わるはずだという確信が持てて、安心して読めました。

 ところで、時代が時代なので、物語のいたるところから階級差別を感じました。
 アンと従兄のエリオットとの次のような会話から、当時の英国の状況が分かります。

 「エリオットさん、私が考える良き交際相手とは、知性と教養にあふれた、話題の豊
 富な人たちですわ。それが私の言う良き交際相手ですわ」
 「いや、それは違いますね」とエリオット氏は穏やかに言った。「それは良き交際相
 手ではなくて、最高の交際相手です。良き交際相手に必要なのは、家柄と教育と礼儀
 作法だけです。」(P246)

 アンの言葉はそのままオースティンの言葉でしょう。作者の趣味の良さを感じます。
 次は、出版時に合本になっていた「ノーサンガー・アビー」を読んでみたいです。

 さいごに。(Uネクストでムーは・・・)

 Uネクストでは、「超ムーの世界R」の全186話がすべて見られます。すばらしい!
 しかし186話もあると逆に見る気が失せて、「退職後でいいか」と思ってしまいます。

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