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ノーサンガー・アビー [19世紀イギリス文学]

 「ノーサンガー・アビー」ジェイン・オースティン作 中野康司訳(ちくま文庫)


 社交界で知り合った兄妹に、ノーサンガー・アビーに招待された少女の物語です。
 作者の死後1818年に「説得」と合本で刊行されましたが、実質的には処女作です。


ノーサンガー・アビー (ちくま文庫 お 42-8)

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫 お 42-8)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/09/09
  • メディア: 文庫



 17歳のキャサリンは大地主のアレン夫妻に、一緒にバースに行こうと誘われました。
 バースで社交界デビューを果たし、25歳のヘンリー・ティルニーと知り合いました。

 キャサリンはダンスの後でヘンリーとおしゃべりし、すっかり彼を気に入りました。
 また、ヘンリーの妹とも知り合い、彼らが立派な家柄の出であることも知りました。

 キャサリンは、年上のイザベラと、その兄で気取り屋のジョンとも知り合いました。
 ジョンには好意を寄せられますが、彼の虚言癖によりたびたび振り回されるのです。

 ティルニー家はバースを去るとき、キャサリンを彼らの屋敷に招待してくれました。
 その屋敷こそが「ノーサンガー・アビー」(元修道院の屋敷をアビーと言います)。

 ゴシック小説ファンのキャサリンは、アビーと聞いただけでワクワクし始めました。
 多くの謎とスリルに満ちた古い修道院は、よくゴシック小説の舞台となるからです。

 ノーサンガー・アビーの主人ティルニー将軍は、キャサリンを丁重に迎えました。
 しかし、キャサリンはなぜか将軍に対して、不自然で冷たいものを感じました。

 ミス・ティルニーが亡き母の部屋を案内しようとすると、将軍はきつく止めました。
 なぜ母の部屋が立ち入り禁止なのか? キャサリンの妄想があふれ出しました。

 「ティルニー夫人はまだ生きていて、なにかわけがあって、秘密の部屋に閉じ込めら
 れていて、冷酷な夫から毎晩粗末な食事を与えられているのだ。」(P284)

 翌日、ミス・ティルニーとその部屋に行くと、将軍がいて大声で怒鳴り・・・
 しかし、もっとも不可解なのは、キャサリンが理由もなく追い出されたことで・・・

 という具合に、この作品はなんとなくミステリー小説ふうなのです。
 「あとがき」によると、ホラー小説の読みすぎを揶揄しているのだそうです。

 キャサリンはゴシックのファン。その愛読書はラドクリフの「ユードルフォの謎」。
 彼女が「世界一すてきな本」という「ユードルフォの謎」を、読んでみたいです。


ユドルフォ城の怪奇 上

ユドルフォ城の怪奇 上

  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2021/09/02
  • メディア: 単行本



 「子供のころのキャサリン・モーランドを知っている人は、彼女が小説のヒロインに
 なるように生まれついたなんて絶対に思わないだろう。」(P8)

 という冒頭で分かる通り、主人公キャサリンは、どこにでもいる平凡な女の子です。
 平凡な少女をヒロインにした点で、当時の小説のヒロイン像に異を唱えています。

 オースティンは、当時流行の小説やホラー小説のパロディを書きたかったのですね。
 一方、次のような記述からは、小説を書くプライドのようなものが感じ取れます。

 「つまり小説とは、偉大な知性が示された作品であり、人間性に関する完璧な知識と、
 さまざまな人間性に関する適切な描写と、はつらつとした機知とユーモアが、選び抜
 かれた言葉によって世に伝えられた作品なのである。」(P47)

 しかし、処女作であるこの作品には、まだどこか習作っぽい雰囲気がありました。
 オースティンは、何を書きたいのか充分に的が絞れていないように思えました。

 たとえば「ノーサンガー・アビー」という語が登場するのは、やっとP209からです。
 この辺りを境に前後半が分かれ、そこに大きな断絶があるように感じられました。

 さて、すでにオースティンの作品は四つ紹介しました。
 あと二作品「分別と多感」「マンスフィールド・パーク」も今年中に読みたいです。


分別と多感 (ちくま文庫 お 42-6)

分別と多感 (ちくま文庫 お 42-6)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/02/01
  • メディア: 文庫



マンスフィールド・パーク (ちくま文庫 お 42-9)

マンスフィールド・パーク (ちくま文庫 お 42-9)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/11/12
  • メディア: 文庫



 さいごに。(「砂の惑星」を見てしまった)

 先日から咳が出始めて、昨日の午後急に熱が出たので、医者で診てもらいました。
 検査の結果、コロナでもインフルでもなくひと安心。念のため仕事は休みました。

 処方してもらった風邪薬が効いたのか、一日ですんなり回復しました。
 貴重なお休みの日、Uネクストで「DUNE砂の惑星」を見ました。良かったです!


DUNE/デューン 砂の惑星 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
  • 発売日: 2022/10/07
  • メディア: DVD



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