ノーサンガー・アビー [19世紀イギリス文学]
「ノーサンガー・アビー」ジェイン・オースティン作 中野康司訳(ちくま文庫)
社交界で知り合った兄妹に、ノーサンガー・アビーに招待された少女の物語です。
作者の死後1818年に「説得」と合本で刊行されましたが、実質的には処女作です。
17歳のキャサリンは大地主のアレン夫妻に、一緒にバースに行こうと誘われました。
バースで社交界デビューを果たし、25歳のヘンリー・ティルニーと知り合いました。
キャサリンはダンスの後でヘンリーとおしゃべりし、すっかり彼を気に入りました。
また、ヘンリーの妹とも知り合い、彼らが立派な家柄の出であることも知りました。
キャサリンは、年上のイザベラと、その兄で気取り屋のジョンとも知り合いました。
ジョンには好意を寄せられますが、彼の虚言癖によりたびたび振り回されるのです。
ティルニー家はバースを去るとき、キャサリンを彼らの屋敷に招待してくれました。
その屋敷こそが「ノーサンガー・アビー」(元修道院の屋敷をアビーと言います)。
ゴシック小説ファンのキャサリンは、アビーと聞いただけでワクワクし始めました。
多くの謎とスリルに満ちた古い修道院は、よくゴシック小説の舞台となるからです。
ノーサンガー・アビーの主人ティルニー将軍は、キャサリンを丁重に迎えました。
しかし、キャサリンはなぜか将軍に対して、不自然で冷たいものを感じました。
ミス・ティルニーが亡き母の部屋を案内しようとすると、将軍はきつく止めました。
なぜ母の部屋が立ち入り禁止なのか? キャサリンの妄想があふれ出しました。
「ティルニー夫人はまだ生きていて、なにかわけがあって、秘密の部屋に閉じ込めら
れていて、冷酷な夫から毎晩粗末な食事を与えられているのだ。」(P284)
翌日、ミス・ティルニーとその部屋に行くと、将軍がいて大声で怒鳴り・・・
しかし、もっとも不可解なのは、キャサリンが理由もなく追い出されたことで・・・
という具合に、この作品はなんとなくミステリー小説ふうなのです。
「あとがき」によると、ホラー小説の読みすぎを揶揄しているのだそうです。
キャサリンはゴシックのファン。その愛読書はラドクリフの「ユードルフォの謎」。
彼女が「世界一すてきな本」という「ユードルフォの謎」を、読んでみたいです。
「子供のころのキャサリン・モーランドを知っている人は、彼女が小説のヒロインに
なるように生まれついたなんて絶対に思わないだろう。」(P8)
という冒頭で分かる通り、主人公キャサリンは、どこにでもいる平凡な女の子です。
平凡な少女をヒロインにした点で、当時の小説のヒロイン像に異を唱えています。
オースティンは、当時流行の小説やホラー小説のパロディを書きたかったのですね。
一方、次のような記述からは、小説を書くプライドのようなものが感じ取れます。
「つまり小説とは、偉大な知性が示された作品であり、人間性に関する完璧な知識と、
さまざまな人間性に関する適切な描写と、はつらつとした機知とユーモアが、選び抜
かれた言葉によって世に伝えられた作品なのである。」(P47)
しかし、処女作であるこの作品には、まだどこか習作っぽい雰囲気がありました。
オースティンは、何を書きたいのか充分に的が絞れていないように思えました。
たとえば「ノーサンガー・アビー」という語が登場するのは、やっとP209からです。
この辺りを境に前後半が分かれ、そこに大きな断絶があるように感じられました。
さて、すでにオースティンの作品は四つ紹介しました。
あと二作品「分別と多感」「マンスフィールド・パーク」も今年中に読みたいです。
さいごに。(「砂の惑星」を見てしまった)
先日から咳が出始めて、昨日の午後急に熱が出たので、医者で診てもらいました。
検査の結果、コロナでもインフルでもなくひと安心。念のため仕事は休みました。
処方してもらった風邪薬が効いたのか、一日ですんなり回復しました。
貴重なお休みの日、Uネクストで「DUNE砂の惑星」を見ました。良かったです!
社交界で知り合った兄妹に、ノーサンガー・アビーに招待された少女の物語です。
作者の死後1818年に「説得」と合本で刊行されましたが、実質的には処女作です。
17歳のキャサリンは大地主のアレン夫妻に、一緒にバースに行こうと誘われました。
バースで社交界デビューを果たし、25歳のヘンリー・ティルニーと知り合いました。
キャサリンはダンスの後でヘンリーとおしゃべりし、すっかり彼を気に入りました。
また、ヘンリーの妹とも知り合い、彼らが立派な家柄の出であることも知りました。
キャサリンは、年上のイザベラと、その兄で気取り屋のジョンとも知り合いました。
ジョンには好意を寄せられますが、彼の虚言癖によりたびたび振り回されるのです。
ティルニー家はバースを去るとき、キャサリンを彼らの屋敷に招待してくれました。
その屋敷こそが「ノーサンガー・アビー」(元修道院の屋敷をアビーと言います)。
ゴシック小説ファンのキャサリンは、アビーと聞いただけでワクワクし始めました。
多くの謎とスリルに満ちた古い修道院は、よくゴシック小説の舞台となるからです。
ノーサンガー・アビーの主人ティルニー将軍は、キャサリンを丁重に迎えました。
しかし、キャサリンはなぜか将軍に対して、不自然で冷たいものを感じました。
ミス・ティルニーが亡き母の部屋を案内しようとすると、将軍はきつく止めました。
なぜ母の部屋が立ち入り禁止なのか? キャサリンの妄想があふれ出しました。
「ティルニー夫人はまだ生きていて、なにかわけがあって、秘密の部屋に閉じ込めら
れていて、冷酷な夫から毎晩粗末な食事を与えられているのだ。」(P284)
翌日、ミス・ティルニーとその部屋に行くと、将軍がいて大声で怒鳴り・・・
しかし、もっとも不可解なのは、キャサリンが理由もなく追い出されたことで・・・
という具合に、この作品はなんとなくミステリー小説ふうなのです。
「あとがき」によると、ホラー小説の読みすぎを揶揄しているのだそうです。
キャサリンはゴシックのファン。その愛読書はラドクリフの「ユードルフォの謎」。
彼女が「世界一すてきな本」という「ユードルフォの謎」を、読んでみたいです。
「子供のころのキャサリン・モーランドを知っている人は、彼女が小説のヒロインに
なるように生まれついたなんて絶対に思わないだろう。」(P8)
という冒頭で分かる通り、主人公キャサリンは、どこにでもいる平凡な女の子です。
平凡な少女をヒロインにした点で、当時の小説のヒロイン像に異を唱えています。
オースティンは、当時流行の小説やホラー小説のパロディを書きたかったのですね。
一方、次のような記述からは、小説を書くプライドのようなものが感じ取れます。
「つまり小説とは、偉大な知性が示された作品であり、人間性に関する完璧な知識と、
さまざまな人間性に関する適切な描写と、はつらつとした機知とユーモアが、選び抜
かれた言葉によって世に伝えられた作品なのである。」(P47)
しかし、処女作であるこの作品には、まだどこか習作っぽい雰囲気がありました。
オースティンは、何を書きたいのか充分に的が絞れていないように思えました。
たとえば「ノーサンガー・アビー」という語が登場するのは、やっとP209からです。
この辺りを境に前後半が分かれ、そこに大きな断絶があるように感じられました。
さて、すでにオースティンの作品は四つ紹介しました。
あと二作品「分別と多感」「マンスフィールド・パーク」も今年中に読みたいです。
さいごに。(「砂の惑星」を見てしまった)
先日から咳が出始めて、昨日の午後急に熱が出たので、医者で診てもらいました。
検査の結果、コロナでもインフルでもなくひと安心。念のため仕事は休みました。
処方してもらった風邪薬が効いたのか、一日ですんなり回復しました。
貴重なお休みの日、Uネクストで「DUNE砂の惑星」を見ました。良かったです!
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