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四畳半タイムマシンブルース [日本の現代文学]

 「四畳半タイムマシンブルース」 森見登美彦 (角川文庫)


 タイムマシンを使って壊れたリモコンを取り戻そうとするSF青春ドタバタ劇です。
 2020年刊行。上田誠の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」とのコラボ作品です。


四畳半タイムマシンブルース (角川文庫)

四畳半タイムマシンブルース (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/06/10
  • メディア: 文庫



 「ここに断言する。いまだかつて有意義な夏を過ごしたことがない、と。」(P5)
 8月12日の昼下がり、「私」と小津は四畳半の部屋の炎熱地獄に苦しんでいました。

 というのも昨日、部屋でドタバタするうちにクーラーのリモコンを壊したからです。
 昨日は明石さんが多くの仲間たちを集めて、ここでポンコツ映画を撮ったのでした。

 明石さんは「私」の憧れの女子学生で、五山送り火見物に誘いたいと思っています。
 しかし彼女は、すでに誰かと約束しているようなのです。でも、いったい誰と?

 さて、昨日の仲間たちが再び集まったところで、ヘンテコなものが見つかりました。
 それは、黒光りする古畳で、「ドラえもん」に出て来るタイムマシンのようでした。

 このマシンを使えば、昨日壊れたリモコンを取り戻せる、と考えた一行は・・・
 しかし、過去を改変してしまった場合、全宇宙が消滅する危険性に気付き・・・

 「全宇宙消滅の危機に直面した我々の取るべき道はただひとつであった。タイムマシ
 ンに乗って『昨日』へ行き、クーラーのリモコンがきちんと壊れるように辻褄を合わ
 せた上で、小津たちをすみやかに連れ戻すことである。」(P111)

 小津という男のキャラクターと、昨日と今日の辻褄合わせが、この小説の命です。
 小津がやたら人の足を引っ張るのに、最後はパズルのピースがピタッと合うのです。

 特に、「私」と明石さんの場面がサイコーです。いかにして五山送り火に誘うのか?
 明石さんのキャラがいいですね。そして、結末もすばらしいです。

 この小説では、森見節も健在でした。たとえば、相島氏の次の言葉は印象的でした。
 作者の一番言いたいことも、この中にあるのではないか?

 「たとえばこんな四畳半アパートの一室にひとりで籠もっているとしよう。こんなと
 ころにどんな可能性がある? ここには恋も冒険もない。なーんにもない。昨日は今
 日と同じで、今日は明日と同じ。まるで味のしないハンペンのような毎日ですよ。そ
 れで生きていると言えますか?」(P168)

 この小説の原案は上田誠となっています。2001年に初演された戯曲なのだそうです。
 竹書房文庫から出ていましたが現在は品切れです。手に入ったら読んでみたいです。


サマータイムマシン・ブルース (竹書房文庫)

サマータイムマシン・ブルース (竹書房文庫)

  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2005/08/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(体育つらい?)

 寒い日が続きます。この時期の体育は長距離走なので、娘は憂鬱そうです。
 「そんなの、遊んでるようなものだろ!」と言ったら、娘に怒られました。

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