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卵の緒 [日本の現代文学]

 「卵の緒」 瀬尾まいこ (新潮文庫)


 血のつながらない母と息子(小学5年)を描き、親子とは何かを追求した物語です。
 2002年に出た、瀬尾まいこのデビュー作です。「7's blood」も収録されています。


卵の緒 (新潮文庫)

卵の緒 (新潮文庫)

  • 作者: まいこ, 瀬尾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/06/28
  • メディア: 文庫



 母と二人で暮らしている小学5年生の鈴江育生は、自分を捨て子だと思っています。
 あるとき「へその緒」を見せてと言うと、母は「卵の殻」を見せてくれたのです。

 母は言います。自分は育生を卵で産んだのだ、だから卵の殻を置いているのだと。
 そして、本当の親子の証だと言って、思いっきり強く育生を抱きしめるのでした。

 「母さんは、誰よりも育生が好き。それはそれはすごい勢いで、あなたを愛してるの。
 今までもこれからもずっと変わらずによ。ねえ、他に何がいる?」(P21)

 やがて母が再婚して名字が朝井に変わり、子供ができたとき母が話したことは・・・
 女子大生時代の母が、どんなふうに恋愛して、どんなふうに結婚したのか?・・・

 血のつながらない親子を描いている点で、「そして、バトンは渡された」と同じです。
 → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-12

 しかし、この物語の魅力はなんと言っても、エネルギッシュで愛情深い母でしょう。
 へその緒なんてスーパーで100円ぐらいで売っている、と言い切ってしまえる母!

 この母が育生に一度だけ語る、「母と育生の物語」も、非常に味わいがありました。
 ただし、なぜ父親が死んでしまったのか(自殺?)、もう少し知りたかったです。

 さて、この文庫にはもう一作「7's blood」も収録されています。
 こちらは半分血が違う異母姉弟の物語です。いずれも心がほっこりする物語です。

 高校3年の七子は母と二人暮らしです。その家に小学5年の七生がやってきました。
 七生は父の愛人の子で、母が事件を起こしたため、一緒に暮らすことになりました。

 七生が来て5日目に、七子の母が倒れて入院し、姉弟2人の生活が始まりました。
 七生はとても素直で明るい子でしたが、なぜか七子にはかわいいと思えなくて・・・

 しだいにふたりの気持ちが接近し、かけがえのない存在になっていくところが良い。
 そして七子は、母が七生を引き取った理由に気付く! やがて訪れる切ない別れ!

 瀬尾まいこには、「あと少し、もう少し」という陸上小説もあります。
 中学生の駅伝大会を描いています。箱根駅伝を見ていたら、読みたくなりました。


あと少し、もう少し (新潮文庫)

あと少し、もう少し (新潮文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/28
  • メディア: 文庫



 さいごに。(今年は補足の年)

 以前は絶版で読めなかった本で、最近読めるようになったものがいくつかあります。
 たとえば、「ノートルダム・ド・パリ」「ミドルマーチ」「牡猫ムルの人生観」・・・

 ほか、「死せる魂」「アンクル・トム」「ジェルミナール」「告白」(ルソー)・・・
 今年は国にこだわらず、これらの作品を読んでいきます。もちろん、プルーストも。

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