銀河英雄伝説1 黎明篇 [日本の現代文学]
「銀河英雄伝説1 黎明篇」 田中芳樹 (創元SF文庫)
はるかな未来における、銀河帝国と自由惑星同盟軍との宇宙戦争を描いています。
1982年から1989年にかけて刊行された宇宙叙事詩で、文庫本で10巻にわたります。
はるかな未来、人類は地球を離れ、銀河のさまざまな地域に散らばっていきました。
皇帝が支配する銀河帝国と、共和主義者が住む自由惑星同盟が、対立していました。
宇宙歴796年、帝国軍は2万隻の宇宙艦隊を率いて、同盟軍との戦闘に赴きました。
全軍を統率するのは、二十歳の大将ラインハルト・フォン・ローエングラムです。
ラインハルトは帝国の軍人でありながら、帝国を倒すという野望を持っていました。
というのも、彼が10歳のとき、姉のアンネローゼが皇帝の後宮に取られたからです。
皇帝による姉への寵愛が増すごとに、ラインハルトは昇進し、出世していきました。
しかし彼は、姉を奪い取った皇帝と銀河帝国を、密かに憎んでいたのです。
帝国軍艦隊2万隻に対し、同盟軍は倍の4万隻を組織して、迎撃に向かいました。
数で圧倒する同盟軍は、帝国軍艦隊を三方から包囲し、必勝の態勢を整えました。
ところが、同盟軍に有利と見えるこの状況は、ラインハルトの思う壺だったのです。
「吾々は包囲の危機にあるのではない。敵を各個撃破するの好機にあるのだ。」
前例のない作戦を取る帝国軍によって、意表を突かれた同盟軍は劣勢に立ちました。
態勢を立て直すことができず、殲滅されるか降伏するかしかない状況に陥りました。
しかし、同盟軍の中でもひとりだけ、冷静に状況判断し、対応できる者がいました。
その男こそ、のちに「不敗の魔術師」と謳われる、ヤン・ウェンリー准将です。
ヤンは、平和を愛し歴史を学ぶ青年で、本来軍人になるつもりはありませんでした。
国防軍士官学校で歴史研究に打ち込むうちに、図らずも能力を開花させたのです。
さて、総司令官が負傷し、艦隊の指揮を引き継いだヤンは、ある奇策に出て・・・
この会戦で、同盟軍の損害は帝国軍の10倍以上でしたが、敵の侵入は防いだのです。
宇宙の統率者を狙うラインハルト。平和主義者で軍人を引退したがっているヤン。
まるで違うふたりが初めて戦闘を交えたのが、この「アスターテの会戦」です。
これ以後、ふたりは因縁の対決を繰り返しますが、そこが本書の読みどころです。
ふたりともとても個性的で、そしてとても魅力的に描かれています。
特に私は、ヤンに対して共感を覚えました。
とっとと隠居したいのに、その才能の声望ゆえに周りから利用されてしまう男・・・
イゼルローン要塞を、ほとんど流血なしで攻略してしまう手際の良さはすばらしい。
しかしそれ以上に、敵に対しても無駄な殺戮を行わない、その精神がすばらしい。
「こいつは戦闘と呼べるものではありませんな、閣下。一方的な虐殺です」
「・・・そう、そのとおりだな。帝国軍の悪いまねを吾々がすることはない。大佐、
彼らに降伏を勧告してみてくれ。それがいやなら逃げるように、追撃はしない、と」
(P200)
「逃げるように」とは、ある意味、相手を馬鹿にしているかもしれません。
しかし、敵の旗艦だけ撃ち、あとは逃げるに任せた点に、彼の人間性が表れています。
ところで、銀河英雄伝説のアニメは、私の大学時代にとても流行した記憶があります。
当時はさほど興味がなかったものの、今回、読書仲間に勧められて読んでみました。
驚いたことは、文章がうまいということです。しかも、名言が随所で飛び出します。
そして、戦闘場面はもちろん、政治的な描写もまた、読みどころがとても多いです。
たとえば、ヤンがイゼルローンを攻略したのは、有利に和睦を結ぶ願いからでした。
ところが、いざイゼルローンを取ってみると、政界では主戦論が幅を利かせました。
「莫大な流血、国家の破産、国民の窮乏。正義を実現させるのにそれらの犠牲が不可
欠であるとするなら、正義とは貪欲な神に似ている。つぎつぎといけにえを要求して
飽くことを知らない。」(P234)
「銀河英雄伝説」(創元SF文庫)は全10巻のシリーズです。どこまで読むべきか?
購入済みの第2巻「野望篇」までは読んで、その後は定年後の楽しみとしましょう。
さいごに。(飯山あかり、善戦!)
衆院東京15区補選は、連休中とはいえ、40%という信じがたい低投票率でした。
よって、組織票を持つ候補者に有利となり、立憲共産党の酒井氏が当選しました。
日本保守党の飯山あかり氏は、4位ながら24000票を取って乙武氏を上回りました。
初陣なので、善戦したと言っていいでしょう。今後の日本保守党の躍進を信じたい。
はるかな未来における、銀河帝国と自由惑星同盟軍との宇宙戦争を描いています。
1982年から1989年にかけて刊行された宇宙叙事詩で、文庫本で10巻にわたります。
はるかな未来、人類は地球を離れ、銀河のさまざまな地域に散らばっていきました。
皇帝が支配する銀河帝国と、共和主義者が住む自由惑星同盟が、対立していました。
宇宙歴796年、帝国軍は2万隻の宇宙艦隊を率いて、同盟軍との戦闘に赴きました。
全軍を統率するのは、二十歳の大将ラインハルト・フォン・ローエングラムです。
ラインハルトは帝国の軍人でありながら、帝国を倒すという野望を持っていました。
というのも、彼が10歳のとき、姉のアンネローゼが皇帝の後宮に取られたからです。
皇帝による姉への寵愛が増すごとに、ラインハルトは昇進し、出世していきました。
しかし彼は、姉を奪い取った皇帝と銀河帝国を、密かに憎んでいたのです。
帝国軍艦隊2万隻に対し、同盟軍は倍の4万隻を組織して、迎撃に向かいました。
数で圧倒する同盟軍は、帝国軍艦隊を三方から包囲し、必勝の態勢を整えました。
ところが、同盟軍に有利と見えるこの状況は、ラインハルトの思う壺だったのです。
「吾々は包囲の危機にあるのではない。敵を各個撃破するの好機にあるのだ。」
前例のない作戦を取る帝国軍によって、意表を突かれた同盟軍は劣勢に立ちました。
態勢を立て直すことができず、殲滅されるか降伏するかしかない状況に陥りました。
しかし、同盟軍の中でもひとりだけ、冷静に状況判断し、対応できる者がいました。
その男こそ、のちに「不敗の魔術師」と謳われる、ヤン・ウェンリー准将です。
ヤンは、平和を愛し歴史を学ぶ青年で、本来軍人になるつもりはありませんでした。
国防軍士官学校で歴史研究に打ち込むうちに、図らずも能力を開花させたのです。
さて、総司令官が負傷し、艦隊の指揮を引き継いだヤンは、ある奇策に出て・・・
この会戦で、同盟軍の損害は帝国軍の10倍以上でしたが、敵の侵入は防いだのです。
宇宙の統率者を狙うラインハルト。平和主義者で軍人を引退したがっているヤン。
まるで違うふたりが初めて戦闘を交えたのが、この「アスターテの会戦」です。
これ以後、ふたりは因縁の対決を繰り返しますが、そこが本書の読みどころです。
ふたりともとても個性的で、そしてとても魅力的に描かれています。
特に私は、ヤンに対して共感を覚えました。
とっとと隠居したいのに、その才能の声望ゆえに周りから利用されてしまう男・・・
イゼルローン要塞を、ほとんど流血なしで攻略してしまう手際の良さはすばらしい。
しかしそれ以上に、敵に対しても無駄な殺戮を行わない、その精神がすばらしい。
「こいつは戦闘と呼べるものではありませんな、閣下。一方的な虐殺です」
「・・・そう、そのとおりだな。帝国軍の悪いまねを吾々がすることはない。大佐、
彼らに降伏を勧告してみてくれ。それがいやなら逃げるように、追撃はしない、と」
(P200)
「逃げるように」とは、ある意味、相手を馬鹿にしているかもしれません。
しかし、敵の旗艦だけ撃ち、あとは逃げるに任せた点に、彼の人間性が表れています。
ところで、銀河英雄伝説のアニメは、私の大学時代にとても流行した記憶があります。
当時はさほど興味がなかったものの、今回、読書仲間に勧められて読んでみました。
驚いたことは、文章がうまいということです。しかも、名言が随所で飛び出します。
そして、戦闘場面はもちろん、政治的な描写もまた、読みどころがとても多いです。
たとえば、ヤンがイゼルローンを攻略したのは、有利に和睦を結ぶ願いからでした。
ところが、いざイゼルローンを取ってみると、政界では主戦論が幅を利かせました。
「莫大な流血、国家の破産、国民の窮乏。正義を実現させるのにそれらの犠牲が不可
欠であるとするなら、正義とは貪欲な神に似ている。つぎつぎといけにえを要求して
飽くことを知らない。」(P234)
「銀河英雄伝説」(創元SF文庫)は全10巻のシリーズです。どこまで読むべきか?
購入済みの第2巻「野望篇」までは読んで、その後は定年後の楽しみとしましょう。
さいごに。(飯山あかり、善戦!)
衆院東京15区補選は、連休中とはいえ、40%という信じがたい低投票率でした。
よって、組織票を持つ候補者に有利となり、立憲共産党の酒井氏が当選しました。
日本保守党の飯山あかり氏は、4位ながら24000票を取って乙武氏を上回りました。
初陣なので、善戦したと言っていいでしょう。今後の日本保守党の躍進を信じたい。