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銀河英雄伝説1 黎明篇 [日本の現代文学]

 「銀河英雄伝説1 黎明篇」 田中芳樹 (創元SF文庫)


 はるかな未来における、銀河帝国と自由惑星同盟軍との宇宙戦争を描いています。
 1982年から1989年にかけて刊行された宇宙叙事詩で、文庫本で10巻にわたります。


銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説 1 黎明編 (創元SF文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/02/21
  • メディア: 文庫



 はるかな未来、人類は地球を離れ、銀河のさまざまな地域に散らばっていきました。
 皇帝が支配する銀河帝国と、共和主義者が住む自由惑星同盟が、対立していました。

 宇宙歴796年、帝国軍は2万隻の宇宙艦隊を率いて、同盟軍との戦闘に赴きました。
 全軍を統率するのは、二十歳の大将ラインハルト・フォン・ローエングラムです。

 ラインハルトは帝国の軍人でありながら、帝国を倒すという野望を持っていました。
 というのも、彼が10歳のとき、姉のアンネローゼが皇帝の後宮に取られたからです。

 皇帝による姉への寵愛が増すごとに、ラインハルトは昇進し、出世していきました。
 しかし彼は、姉を奪い取った皇帝と銀河帝国を、密かに憎んでいたのです。

 帝国軍艦隊2万隻に対し、同盟軍は倍の4万隻を組織して、迎撃に向かいました。
 数で圧倒する同盟軍は、帝国軍艦隊を三方から包囲し、必勝の態勢を整えました。

 ところが、同盟軍に有利と見えるこの状況は、ラインハルトの思う壺だったのです。
 「吾々は包囲の危機にあるのではない。敵を各個撃破するの好機にあるのだ。」

 前例のない作戦を取る帝国軍によって、意表を突かれた同盟軍は劣勢に立ちました。
 態勢を立て直すことができず、殲滅されるか降伏するかしかない状況に陥りました。

 しかし、同盟軍の中でもひとりだけ、冷静に状況判断し、対応できる者がいました。
 その男こそ、のちに「不敗の魔術師」と謳われる、ヤン・ウェンリー准将です。

 ヤンは、平和を愛し歴史を学ぶ青年で、本来軍人になるつもりはありませんでした。
 国防軍士官学校で歴史研究に打ち込むうちに、図らずも能力を開花させたのです。

 さて、総司令官が負傷し、艦隊の指揮を引き継いだヤンは、ある奇策に出て・・・
 この会戦で、同盟軍の損害は帝国軍の10倍以上でしたが、敵の侵入は防いだのです。

 宇宙の統率者を狙うラインハルト。平和主義者で軍人を引退したがっているヤン。
 まるで違うふたりが初めて戦闘を交えたのが、この「アスターテの会戦」です。

 これ以後、ふたりは因縁の対決を繰り返しますが、そこが本書の読みどころです。
 ふたりともとても個性的で、そしてとても魅力的に描かれています。

 特に私は、ヤンに対して共感を覚えました。
 とっとと隠居したいのに、その才能の声望ゆえに周りから利用されてしまう男・・・

 イゼルローン要塞を、ほとんど流血なしで攻略してしまう手際の良さはすばらしい。
 しかしそれ以上に、敵に対しても無駄な殺戮を行わない、その精神がすばらしい。

 「こいつは戦闘と呼べるものではありませんな、閣下。一方的な虐殺です」
 「・・・そう、そのとおりだな。帝国軍の悪いまねを吾々がすることはない。大佐、
 彼らに降伏を勧告してみてくれ。それがいやなら逃げるように、追撃はしない、と」
 (P200)

 「逃げるように」とは、ある意味、相手を馬鹿にしているかもしれません。
 しかし、敵の旗艦だけ撃ち、あとは逃げるに任せた点に、彼の人間性が表れています。

 ところで、銀河英雄伝説のアニメは、私の大学時代にとても流行した記憶があります。
 当時はさほど興味がなかったものの、今回、読書仲間に勧められて読んでみました。

 驚いたことは、文章がうまいということです。しかも、名言が随所で飛び出します。
 そして、戦闘場面はもちろん、政治的な描写もまた、読みどころがとても多いです。

 たとえば、ヤンがイゼルローンを攻略したのは、有利に和睦を結ぶ願いからでした。
 ところが、いざイゼルローンを取ってみると、政界では主戦論が幅を利かせました。

 「莫大な流血、国家の破産、国民の窮乏。正義を実現させるのにそれらの犠牲が不可
 欠であるとするなら、正義とは貪欲な神に似ている。つぎつぎといけにえを要求して
 飽くことを知らない。」(P234)

 「銀河英雄伝説」(創元SF文庫)は全10巻のシリーズです。どこまで読むべきか?
 購入済みの第2巻「野望篇」までは読んで、その後は定年後の楽しみとしましょう。

 さいごに。(飯山あかり、善戦!)

 衆院東京15区補選は、連休中とはいえ、40%という信じがたい低投票率でした。
 よって、組織票を持つ候補者に有利となり、立憲共産党の酒井氏が当選しました。

 日本保守党の飯山あかり氏は、4位ながら24000票を取って乙武氏を上回りました。
 初陣なので、善戦したと言っていいでしょう。今後の日本保守党の躍進を信じたい。

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