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ミドルマーチ2 [19世紀イギリス文学]

 「ミドルマーチ2」 ジョージ・エリオット作 廣野由美子訳 (古典新訳文庫)


 架空の町ミドルマーチに住む2人の男女を軸に、様々な人間模様を描いた作品です。
 1871年刊行です。古典新訳文庫で全4巻です。今回はその第2巻を紹介します。


ミドルマーチ2 (光文社古典新訳文庫 Aエ 1-3)

ミドルマーチ2 (光文社古典新訳文庫 Aエ 1-3)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: 文庫



 市長の長男フレッド・ヴィンシーは、職に就かず毎日をだらだらと過ごしています。
 金持ちのフェザストーンの相続人と目されているため、甘やかされているのです。

 フレッドは、フェザストーンの看護をしているメアリー・ガースに求愛しています。
 メアリーもフレッドに好意を持っていますが、彼が職についてないので応じません。

 フレッドは、仲間から借りた160ポンドを返すため、メアリーの父に借金しました。
 しかし、彼の見込みが甘かったせいで、その金を返すことができなくなったのです。

 ガース家は困り果て、フレッドも良心を痛めますが、どうすることもできません。
 そのころフェザストーンが死の床に就き、フレッドへの相続の期待が高まりました。

 と同時に、フェザストーンの親類たちが、何かおこぼれをもらおうと集まりました。
 そんな人々の卑しさを、何も期待していないメアリーは、冷徹に観察していました。

 「彼女はすでに、人生とはまさに喜劇だと思う境地に至っていた。そのなかで自分は、
 卑劣な役や不誠実な役は演じまいと、誇り高く、というよりも広い心で構えていた。
 (中略)みんなばかげた妄想に取りつかれていた。自分も例外なく道化師帽をかぶっ
 た愚か者であるのに、それには気づかず、他人の愚かさは見え透いていて、自分だけ
 は見透かされないと思っているのだ。」(P191)

 そんなメアリーだったからこそ、フェザストーンの最後の頼みに応じられず・・・
 それによって、さまざまなどんでん返しがあり・・・そしてフレッドは・・・

 と、フレッドとメアリーの恋愛は、遺産問題と絡まって、実に面白い展開をします。
 フレッドにとって不本意な展開ですが、最終的にはプラスになるような気がします。

 さて、ここで興味深いのが、フレッドのメアリに対する愛情です。
 メアリーは美人でもなく金持ちでもありませんが、心が豊かでまっとうな女性です。

 そんなメアリーを愛したところに、フレッドというのらくら青年の美点があります。
 彼は、軽薄でばかげた青年に見えますが、本当は純な心を持っているのではないか?

 ところで、メアリーの母親もしっかりしていて、見栄えはメアリーより良いのです。
 それはめったにないことです。そのことを、次のように絶妙な表現で伝えています。

 「母親を見て、娘の方もこんなふうになってほしいと思われるようならば、それは持
 参金にも匹敵する財産だ。しかし実際には、母親は『娘も間もなく、私みたいになっ
 てしまうのですよ』と予言する背後霊のような役割を果たしている場合の方が、ずっ
 と多いようだ。」(P38)

 この第2巻では、リドゲイトとロザモンドの関係もいっきに進みました。
 噂を恐れたリドゲイトは、ロザモンドと距離をとりますが、そのことがかえって・・・

 また、ドロシアとラディスローも、微妙な仕方で接近していきます。
 ふたりともまだ自分の本当の気持ちに気づいていないようですが・・・

 「ミドルマーチ」はここでようやく中間点です。
 第3巻はどんな展開をするでしょうか。目が離せません。

 さいごに。(幻想的な青いラン)

 先週訪れた花博で、青いランを見ました。とても幻想的な美しさでした。
 また、さりげなく植えてある花たちにも、疲れた心を癒されました。

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