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八十日間世界一周 [19世紀フランス文学]

 「八十日間世界一周(上)」 ヴェルヌ作 高野優訳 (光文社古典新訳文庫)


 フォッグ氏が全財産と名誉を賭けて、八十日間での世界一周に挑む物語です。
 1872年にフランスのヴェルヌによって発表された、冒険小説の古典です。

 現在、光文社古典新訳文庫、岩波文庫等で、読むことができます。

 最も読みやすかったのは、古典新訳文庫版です。すらすらと読めます。
 原版の挿し絵も入っていて、当時の雰囲気をよく伝えてくれます。
 (表紙絵は相変わらずちょっと「おバカ」ですが…)

 岩波版にも同じ挿し絵が入っていますが、古典新訳版より細かくて見にくいです。
 同小説は、創元SF文庫や角川文庫でも出ていますが、挿し絵が入っていません。


八十日間世界一周〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

八十日間世界一周〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ジュール・ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/05/20
  • メディア: 文庫



八十日間世界一周〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

八十日間世界一周〈下〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ジュール ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/05/12
  • メディア: 文庫



八十日間世界一周 (岩波文庫)

八十日間世界一周 (岩波文庫)

  • 作者: ジュール ヴェルヌ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/04
  • メディア: 文庫



 ところで、八十日という期限が、旅行を無意味なものにしています。
 どこへ行っても、観光はほとんどしません。
 ただ、乗り物を乗り継ぐだけなのです。

 莫大な金額を費やして、せかせかと、世界をひと周りしただけです。
 この無意味さに、現代文明に対する批判が含まれているように思えます。

 ところが、八十日という期限が、小説を面白くもしているのです。
 この期限が守れない時は、フォッグ氏は全財産を失ってしまうのです。
 次から次に起こる難問に、ずっとハラハラさせられました。

 しかし、フォッグス氏は、いつも冷静そのものです。
 何事が起こっても、顔色ひとつ変えません。
 彼については、次のように書かれています。

 「いや、フォッグス氏は人間ではない。
  現代科学が生みだした精密機械であった」(上P135)

 しかし、実際はとても味わい深い人物です。
 貧しい人にはお金を恵み、危機に陥った美女がいれば救出に向かいます。
 また、決して召使や仲間を見捨てません。

 それから、すごい発想力です。
 どんな困難にも、驚くような解決法を見つけます。

 乗船予定の船が、目の前で出ていった時、フォッグ氏はどうしたか!
 海上で、船の燃料が無くなった時、フォッグ氏はどうしたか!

 読み進むに従い、フォッグ氏の魅力のとりことなっていきます。
 この小説の魅力の多くは、フォッグ氏という主人公の魅力によるものでしょう。

 ところで、精密機械のようなフォッグ氏が、一つだけ計算ミスをしました。
 それは… ああ、結末の大どんでん返し、うますぎです。

 それから、この無意味と思われる旅から、フォッグ氏が得たものがありました。
 それは… ああ、本当にこの結末、うますぎです。

 さて、作者ジュール・ヴェルヌは、空想科学小説の父と言われた人です。
 イギリスのウェルズと混同しやすいですが、ヴェルヌはフランス人です。

 文庫の紹介文によると、ヴェルヌは十二歳の時に密航を試みて捕まりました。
 その時、「これからは空想のなかだけで旅をする」と言ったとか。
 実際に「海底二万里」「地底探検」など、空想の中で驚異的な旅をしています。

 余談ですが、この小説は、明治初期に河島忠之助によって訳されました。
 日本最初の、翻訳フランス小説として、知られています。

 さいごに。

 娘が、スプーンを持って来て、「ほら、見て、さかさまだよ」と言うので、
 スプーンをのぞいてみたら、確かに顔が上下逆さまに映っていました。

 驚きました。
 私が気付かなかったことを、娘は自分で発見していたのです。

 私が驚いたので、娘は得意になって、もうひとつ教えてくれました。
 それは、スプーンの裏側では、さかさまに映らないということです。
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